いつだってマイペース
初戦で苦杯をなめたことで、長男が変に緊張したらどうしようかと思っていたが、そんな心配は無用だったようだ。
私がいない間にいそいそとキッチンに入り込んで唐辛子パウダーを調達、よくわからないものと混ぜ、試験管に入れたあとでメラミンスポンジで栓をして(こぼれない様に)、目につかない所に置いていた。
ばっちりバレたのは、キッチンから隠し場所までの道中に、ドロッとした赤いものが点々と落ちていたからである。この脇の甘さが試験本番でも出るのだろう。
「今こんなことやってる場合じゃないでしょ。君、追いかける立場でしょ。さすがに残り一か月切って、みんな死に物狂いでやってる時にさ。」
こういう事は言わないほうが良いのだろうが、ついつい出てしまった。ついでに隠してあった唐辛子入り試験管も没収した。全部終わったら好きなだけやって良いからと伝えて。
性格なんだろう
試験本番が近づくと、子供が血相を変えてやり始めたとか、今まで遊んでばかりだったのに突如火が付いたといった話も聞くが、長男には特段そのような目立った変化はなかったように思う。
それこそ親のほうが長男の算数の結果に切羽詰まっても、長男は難しい問題は難しいし、楽しい問題は楽しいしという感じであった。
過去問も、解けずに悔しがる様子は私が見ていた限りではなかった。「難しいわ~」とちょっと笑いながら、「もう一回ちょっと考えてくるわ。それでもわからなかったら答え見る。」という感じで、寧ろ難しい問題に対しては「〇〇中受ける人ってこういうの解けるんだからすごいよね。」という感じである。
そんな長男であるが、長男も解いてみて解けないわけではなかった。手元にあった問題集には関西の男子校の算数の問題もいくつか取り上げられていて、こんな会話をした記憶がある。
私 :〇中(難しい漢字)の問題解けるんだね。受けたら受かってた可能性ある?(笑)
長男:おかあさん!時間だよ、時間!時間があれば解けるの。
逆に言うと、指定された時間内に解くことこそが難しいのだと言っていた。それもあってなのか、家庭学習では初見で解く際には1ページ〇分と決めて、時間内に解けなかった場合は空欄のまま私に丸付けを依頼してきていた。
初回はそこに留まらない、ただし後で時間をかけて解いてみるというスタイルだった。そして長男はこの学校の算数が解ける人に対しては畏怖の念を抱いていたように思う。
長男にとって算数が解きやすいかどうかは、問題の難易度もさることながら、時間に余裕があるかどうかも極めて大きく影響したと思われる。本人もその自覚があり、その点でも本命校の算数は取り組みやすいと言っていた。改めて不思議な縁のようなものを感じてしまう。
自分のペースで焦らずに解かせてもらえるならそれに越したことはない。実力が高ければどのような状況でも対応できてしまうのだろうが、全教科でそのような状態で臨める人は少ないだろう。
そんな中、弱点科目でも楽しいと感じ、いつまでもマイペースで進んでいけるというのは合否さえ気にしなくて良いなら最高だと思う。