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誰に似たぁ?(3)

複雑系

長男はある面では動物園の檻に入った大型動物のようなのだ。檻にいる大型動物は、時に同じところを行ったり来たり、また明らかに人間に背を向けて座っていたりする。ストレスなんだろうなと思うと野生に戻してやりたくなる。

長男に学校の宿題をやりなさいと言ったり、学校でもある程度ちゃんとやりなさいと伝えていることについて内心はとても複雑だ。

一方で、動物園でコウモリを見た時には、これまた長男としか思えなかった。狭いガラス張りの部屋の中を縦横無尽に飛び回り、吊るされた籠に入った餌の果物に突っ込んで行っては床にまき散らしている。1秒間に1個はカットフルーツが落ちてくる塩梅だ。暗闇の中、床を見れば糞も大量に落ちている。同じ空間で生活できる気がしなかった。

コウモリを見ていると、普段から部屋が汚い長男、やめてくれと言ってもやめてくれない長男、どうしてそういうことをするのだ?と思わせる長男を連想させるのだった。

以下、コウモリを見ながら夫と交わした会話である。

私 :なんか、ドラ(長男)を思い出したわ。
夫 :ほんとだよ。血税ばっかり吸いよって。
私 :部屋片づけろとか、使ったものはしまえとか、やる前に聞いてくれてとか、何度言っても直らないよね。病院の先生は忘れ物なんかは仕組みを作ってくださいって言ってたけど、どうしたらいいんだろうね。
夫 :うちはげんこつが落ちてくる仕組みです。

長男は長男で大型動物のように感じて過ごしているのに、そこは理解されないどころか何で我慢できないのかと問題視されて辛いのだろう。そこにさらにコウモリ的な部分では度々注意されるという状態であるため、自尊心が下がり続けてしまう。親としてはそう思うと何とかして知的好奇心旺盛な部分だけは守ってやらねばと思うのだが。

最近だとややこしいのが、知的好奇心からくる行動なのかもしれないが、やっぱり迷惑だし、人のことも考えてよと言いたくなることがある点なのだ。どうしてもコウモリ的にこちらが感じてしまって耐えられなくなる。

強烈な好奇心で試したがるところなど、次の文章を読むとはっとする。「親の知らぬ間に、家のなかのさまざまな物が分解されていることもあります。仕組みがどうなっているのか、知りたくてたまらないのです。この好奇心がどれほど強烈かというと、それはちょうど、空腹で倒れそうな人が、目の前のクッキーをむさぼるように食べるのと似ています。」

長男は塾に行くようになってからPILOTのフリクションペン(4色ペン)を大量に使ってきたが、かれこれ数年使っていても、いまだに分解する。ペン先を引っこ抜いてみたり、インクを水と混ぜたり凍らしたり。それを常温に戻して観察したりしている。

長男の机の上には常に替え芯が転がっていて、何度も片付けるように言っているが出しっぱなしになる。見れば替え芯だけでノートを取っている。あの細い替え芯で書き続けるのは大変だろうと思うのだが、もうペンにセットするのが面倒くさくてそのまま使ってしまうようだ。

シャーペンやボールペンも分解した後に直すならよいのだが、無くしてしまって4色ペンの下半身カバーが無かったり、シャーペンの部品だけが落ちていたりする。インク漏れもあるから掃除も発生する。修正ペンは難儀した。ペンは常に新品を常備しておかなくてはいけない。

(4)につづく