感謝の気持ちがあったなら(と母は思った)(4)
本番
運動会は、結果からすると長男はやりきった。始まる間際まで、夫は半分冗談で出てこないんじゃないか説を唱えていたけれど、出てきた長男からはワクワク感こそないものの、嫌そうな態度も出ていなかった。
1種目は徒競走だった。長男は走りきった。走り終わった直後、既に走り終えて整列していた女子から「ドラ本気で走ったね~」と聞こえてきたことには驚いた。本番だけは頑張ったのだろう。
踊りについても問題なくやっていた。迷って変な所に飛んで出た瞬間もあったが、すぐ気付いて修正していた。隊形移動もはぐれること無くやっていた。長男の隣にはしっかり者で面倒見の良い子がいたことから、おそらくは意図的な配置で、長男はその子について動けば問題が起きないようになっていたと思う。隊形の変更やウェーブなど、その子が起点になってスタートする感じになっていた。
運動会が無事に終了し、担任の先生には一言お礼をお伝えして帰った。
先生 :やってましたね。
私 :どうにか。ありがとうございました。
夫 :次の秋の時は何をするんでしょうか?
先生 :演劇ですね。
夫 :木とか石とか台詞のないやつでお願いします(笑)
後日談
noteを書きながら、改めて長男がなぜ運動会の練習の時に本なんて持っていたのか訊いてみたいと思った。やはりあの状況で本を読んでも良いと考えたのだとしたら、人の気持ちが分からない子と考えるしかないかもしれないとまで思いつめていた。残り僅かの練習の機会を無駄にはできない上に、先生がせっかく教えてくれたその直後にありえないと思った。
すると長男は、「本は最初から持っていってたんじゃないんだよ。お母さんが怒ってるなと思ったから、踊りの後、隊形移動の前に教室に取りに行ったんだよ。」と言った。
この想定外の回答には絶句した。あの時長男を見失ったように思ったのは、教室に行っていたからだったのだ。しかも反抗するためにわざわざやったと言う。私が怒ったのは長男が本を持っている姿を目にしたからだと言うのに。
実は夫も後日、お母さんが何故怒ったか分かるか?お前が先生にあまりに失礼な態度になることをしたから本気で怒ったんだぞと話していた。長男はうんうんと言って聞いていた。
本当はこの時、聞くだけではなく理由の説明をしてくれていたらなと思うし、それをしないと相手の言うことを肯定していることになりかねず、また相手はそう受け取る可能性が高いことも認識できる方が良い気がしている。これらが抜けると将来同じようなことが繰り返された時、相手は以前にも注意したのにと余計に腹が立つことになる。
最近、親子関係においては長男に協力してほしいと思うことも増えている。でもそれは良くないのかもしれないとも思う。親子関係については長年の悪循環によるすれ違いが蓄積してしまっていて、時々途方に暮れてしまう。
(5)につづく