第2次予備校 説明会
師匠(理事長)との出会い
我々が予備校の突然の閉鎖から1ヶ月あまり。世間は、卒業シーズン。入学が決まって笑い、浪人が決まって泣く。そんなイメージを垣間見える桜が散りばめる景色でした。
今回見学に行く予備校Aは、我々がいた小規模の所、希望者を募ったBとは違って、首都圏に校舎をどんどん増設している所でした。まさに発展途上の兆し有りです。私のいるF男子校は、県境に近い所から通う人が多いので、Aに行くクラスメイトは0でした。
文教都市として栄える駅構え。有名大学があるので、学生が多いです。実はここ私の生まれた地区でした。ただ、こちら側ではなくターミナル駅との間にある所でしたので、小さい頃は遊びに行ったことは記憶がありません。
校舎は、大学と同じくあちこちに散らばっている様子でした。本部がある事務局に女友達のY達と向かいます。
Y「大きい所だね。ここらしいよ。行こっ!」
Yの親「あら、学費が高そうな学校だねえ。」
(これは、色んな人が集まりそうだな。)
ドラゴンボールで言う天下一武道会や幽遊白書で言う暗黒武術会のような気分になってきました。
現在は、さらに事業拡大して近県にも校舎があるようです。当時は、理事長が直接案内してくれる時代であり、パンフレットの元に学校説明をしてくれました。
理事長「はじめまして。当法人のオーナーです。」
「まず、こちらを知ったきっかけを教えてください。」
私以外にも、同席していた人達がいました。後に仲良くなる有名進学校のI君がいました。彼は、親御さんが官僚でありお兄さんは東大生のようです。
私「実は、通っていた予備校が経営破綻になりまして、3月末に閉校が決まりました。」
母親「それで、御宅様と似ている学習システムと聞いた事で、興味を持ちました。」
(うーん、何か面接みたいだな・・・)
理事長「なるほど。どちらの所でしたか。」
母親「○○というところです。ご存知ですか。」
苦虫を潰すような表情で、一呼吸を置いています。
理事長「あー、あそこね。塾長さん知ってますよ。」
「そういえば、こないだもあそこから見学に来られた人いました。浪人生の方ですよ。」
細かい話こそしませんでしたけど、大人の事情を納得してくれたそうです。そこで、私とYに話を進めてきました。
理事長「うちは、入塾テストはありませんが、クラス分けテストは致します。」
「一応、前に通っていたレベルなど考慮して決めますが、多分うちの方が難しいですよ。」
「あちらでは、発展クラスとお聞きしましたが、カリキュラム的に0クラスか基礎クラスから始めたほうがよろしいかと。」
※ここは、ゼロクラスという英語科のみ4クラス制。中学レベルから始める人向けのようです。基礎クラスになるのも難しい所と説明をしています。
Y「あたし、英検2級持っていますけど、ゼロか基礎なんでしょうか。」
理事長は、笑いながら説明をしだしました。
理事長「いや、英検2級は凄い資格だと思いますけど、推薦入試とかセンターレベルだと思いますので、まずは受けていただく事が大事かなと・・・。」
Yは、今どきの女子高生ですが、中高一貫校で私よりも偏差値も資格のレベルも断然上でした。けれども、低いクラスに行くのは納得いかないようです。
ここで初めてI君が口を開きます。
I君「理事長先生、僕はある程度名のしれた学校ですが、基礎からお願いします。というのは、全く出来ないので。」
理事長「おや、君はあの学校でしたね。まぁ、今進学校行っていても、ばらつきがあるから当然でしょう。」
ウンウンと頷きながら聞いています。
理事長は、さらにパンフレットを開いて大学合格者について説明しました。顔出しと名前が有り。今では考えられないような個人情報満載なのです笑けれども、よく読み込むと理事長が基礎や基本をいかに大事にするのが、よくわかりました。
私とYはあるフレーズに目に付きました。
・60代の定年退職後に大学受験。
・偏差値35からの医学部。
・進学校の落ちこぼれが早慶に。
大学合格者の実績は、大手の予備校だとあるあるなんですが、東大とか国立医学部に受かっている人ってそもそも通っている高校がトップクラスだったりします。よって、基礎や基本が出来ているので、応用や演習を1年ひたすらやることで、合格する浪人生が多いのです。
けれども、3つのフレーズのように希少価値のある体験談は驚きの嵐でした。
いきなりの入塾テスト
それ以外にも、たくさんの生徒さんについて理事長さんが一人、一人細かく話してくださいました。
(この人、何でこんなに詳しいんだろうな。)
一段落すると、理事長は最後に身の上話をしてきました。
理事長「実はね、普段は常勤と非常勤の先生にお任せしているんですけど、私も小論文や国語など教える時あるんですよ。」
「だからこそ、彼らの近くにいたのでその体験談を皆さんにお話いたしたわけです。」
「元々大手の予備校で教員してたもんですから、現場に近くいると若返るんですよ。」
後日、まさかこの方に色々と教わるとは思いもしませんでしたが、確かにこの話を聞いて親も私も興味を持ったわけです。
すると、ドアにノックがコンコン。事務の女性が入ってきました。
「智聖さん、Yさん、Iさん、入塾テストの用意をしております。」
「後日でもよろしいですが、今日受けられてはいかがでしょうか。」
どうやら、体験入学する前に入塾テストを受けてみて、そのままレベルに合うクラスから開始するようでした。私もYも、特にこの後用が無いので、国語と英語をそのまま別室で受けることになりました。
理事長「0点でもいいから、まず答案を書くことから始めてみてくださいね。」
(おいおい、そんなに難しいんかい!)
結果論から言うと、国語の現代文はできましたが古文や漢文は、ちんぷんかんぷん。英語も文法や発音の部分は出来たけど、所謂長文読解や構文の問題は全然出来ませんでした。
隣でI君が苦戦しています。
「やべえ、全然わかんない。」
(彼ほどの人でも、わからないんなら安心だな。)
Yは、英語はすぐ終わったようですが、国語が全然出来なかったようです。
Y「マジムリ。あれ前いた所でやってないよね?」
その後、説明会をした部屋に戻って事務方の人がクラス分けと採点結果を教えてくれました。
「智聖さん、現代文60点、古文と漢文は30点。」
「英語は、35点でした。」
母親「あんた、相変わらず英語できないわねぇ。」
この時は、反論できませんでした。
Yは、自信があったようで
「Yさん、現代文30点、古文と漢文40点。」
「英語は、70点でした。」
Y「え、国語そんな低いの?けど、英語まあまあだから許す♪」
妙などや顔でした。
「Iさん、現代文20点、古文と漢文30点。」
「英語は、60点でした。」
I「あー、良かった。国語だけなら0でもなんでもいいですよ。」
ホッとした横顔を今でも覚えています。
烏合の衆の語らい
理事長「では、智聖さんだけは、現代文は発展クラス。英語はゼロクラスです。」
「YさんとIさんは、現代文は基礎クラス。古文と漢文は、3人共基礎クラス、英語は、お二人のみ発展クラスです。」
今思うとデコボコな感じがよく出ていて、大変懐かしい思い出です。
体験入学する手続きを受けて春休み中に春期講習を無料でそれぞれ1回受けることになりました。
理事長「では、これでお開きとなります。是非ご入校お待ちしておりますよ。」
I君は、一人できていたので挨拶をしてそのまま帰りましたが、我々は近くにある喫茶店で決起集会ならぬ、反省会となりました。
母親「あんた、ホントに英語弱いねえ。Yちゃんなんか発展クラスじゃない。教えてもらいなよ。」
Yの母親「けど、智聖くん、現代文発展クラスじゃないですか。向き不向きあるんですよきっと。」
ママ友特有の謙遜しつつも、子供を比較してしまう瞬間です。
頼んだコーヒーや紅茶が来ました。美味しい匂いが漂います。一口含んで会話を始めました。
私「けれども、前の予備校で習ってない問題もあったし、なんとも言えないわ。」
Y「あたしも思った。浪人生向けのテストじゃないのあれ。」
私とY「ねっ!」
不思議な光景です。1年前は、挨拶すらしなかった関係が意気投合して、同調している場面は滑稽だったのを覚えています。
重なるのは、有名な場面で言うと、政治家の小沢一郎さんがかつて自民党幹事長の頃です。故海部俊樹総理と横並びに衆議院選挙の様子を見ていた所です。当選を聞くと同じようにお茶を飲むのです。シンクロとはまさにこのこと。
Yの母親「そういえば、あの時いたIって男の子、あの制服知ってるわよ。Zってところでしょう。」
「あそこ、高校は募集していないからうちの子と同じで中学受験で入ったのかしらね。」
そう、お受験している親は誰もが知っている所です。かつていたGとJ君のいる有名大学付属よりも上の学校でした。
母親「あたしもそうなんですけど、進学校行くと遊んじゃうのよ。だから、基礎から教えてもらいたいんだなって。」
「一人で来ていて偉いなあって思ったわ。アレきっといいところのお坊ちゃんよ。」
Yもうちの母親は、バブル世代よりも上である新人類です。お父さんは、団塊世代なのは同じでしたが、どちらも教育熱心のお家でした。
私とYは、偏差値やブランドよりも遊びたい、自己実現の1つとして大学に行きたいタイプなので、I君の話を聞いていても、上の空。
Y「ねえ、彼女出来た?」
(おい、親の前で聞くなよ笑)
油断をしているとなんとやら、相変わらずKYな事を言ってきます。
私「いや、遊ぶ子いるけど、まだまだだね。」
Y「いつもまだまだじゃない。それじゃ逃げられちゃうぞ♪」
ニヤニヤしながら見てきます。まさに、高みの見物かのように見下しているかもしれません。
母親「あんた、Yちゃんに彼女になってもらいなさいよ。」
「ねぇ、お母さん?」
Yの母親「いやぁ、ホント思いますよぉ。デートするのがいつもチャラそう男の人なので、お父さん心配してるんですよ。」
「ねぇ、そろそろ真面目な人とデートしてみたら?」
Y「辞めてよぉ。智聖はありえないからぁ。」
「私、顔がタイプじゃないと無理だから。」
ホント、思ったことをズバズバ言う人です。多分、付き合えてもストレート過ぎる子なので、喧嘩になるのが関の山でしたねえ笑
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