映画『ゴールデンカムイ』感想(ネタバレ有)

めっっっちゃくちゃ面白いアニメの第一話(90分拡大版)が始まった!!!!


そうそうこの面白さに惹かれて読み始めたんだよな。北海道の何処かに隠された金塊というロマン。二百三高地での激戦。重たい過去を背負った最強の退役兵。サバイバル能力に長けたアイヌの少女。次々と登場するインパクトしかない強敵たち。初めて金カムを読んだ時の興奮が蘇る。
この辺りの金カムのうまみを一気に畳み掛けてダレずに詰め込めたのがすごいなーと思う。サシが入りまくった肉を食べた時と同じ。逆にいえば壮大なイントロで終わったな…とも思った。舞台設定と主要キャラの紹介がメインで、本筋らしい本筋は杉元とアシㇼパが出会いと離別を経てお互いを相棒とする覚悟を持つ…くらいだった。ラストの人気キャラ登場ラッシュを見るに、制作陣は続編製作も込みで考えてそうだからまあこれはこれでいいのか。

アクション含めた画面がとにかく見やすい

ハイローの監督の人らしい(?)からなのかな。アクションになると、スローモーションと効果音が多用されて「見せ場やでぇ〜〜〜〜!!!!」となる。俳優が見得を切る場面や動きが複雑化する場面(馬橇とか)もめっちゃ分かりやすいな〜と思った。私が漫画でアクションを読むのが苦手だからなのか、野田サトルの漫画がそうなのかわからないが、コマで動きを追ってると「こいつら今どこにいてどういう体制で何してる!?」となることが多い為、俯瞰したカットも挟まれていて見やすい仕上がりだった。あと、キャラが登場すると所属(?)と名前が「ドゥーーーーーン」という効果音と共に出るのが面白い。原作読んでても名前と顔があやふやな人間にはとても有難かった。まあまあしつこかったけど。

山崎賢人、信頼されすぎ

当たり前だけど、1人の俳優が背負うには多過ぎる数の漫画実写化を背負わされてきただけあって、アクションも引きの芝居も笑いも可愛さも全部ちゃんと安定感があってすごい。山崎賢人の目尻の釣り上がりって、杉元の為だったんだね。

(´(ェ)`)熊怖すぎ

第七師団に追われた杉元が、機転を利かせて熊の巣穴に潜り込むシーンが画面外での恐怖を上手いこと描写してて面白かった。巣穴から外へカメラを向けている状態で、熊と第七師団兵士との死闘がチラチラと見える。襲われた兵士の叫びだけが聞こえて、巣穴に一度潜り込んだ兵士も熊に引きずり出される。皮がめくれた兵士が拳銃を弾切れになるまで熊に打ち込んで膝をつきながら絶命する。PG-12だからゴア描写は控え目だったんだけど、ここはグロを直接映さずに恐怖を煽られる表現だった。ただし、死んだ熊はデケー着ぐるみだった。フカフカしてて温かそう。

土方歳三

土方が土方だった。
和泉守兼定を銀行に強奪しに来るところなんて、囚われの姫を助け出しに来た王子かと思った。馬が前脚をあげるシーンは、もっと原作寄りで正面から観たかったかも。あれ絶対にナポレオンのオマージュだよな。

玉木宏

玉木宏ったら玉木宏。やたらと馬に乗って颯爽と登場する鶴見中尉@玉木宏がとても美しかった。原作でそんなに馬乗ってたか??絶対に兵士どもをぞろぞろ従えて出てくるのも良い。「鶴見中尉が美しい」というのは原作としても“必要な要素”だと思っていて、というのも、鶴見中尉の標榜する帝国主義(で合ってるよな?)は、戦争で傷ついた人間たちの感傷を慰めるものであるので、それを掲げる鶴見中尉は人々を魅了するほど強く美しくないといけない。それを玉木宏が見事に演じていた。燃え盛る小樽の第七師団拠点を背にした鶴見中尉、美しかったですねえ。あの演説シーンもぜひ見たい。

尾形と谷垣、かわいそう

単純に尺の都合で見せ場が少なかった。白石の方が活躍してた。谷垣ニシパなんて登場してすぐに足が変な方向に折れ曲がって終わった。コタンにも辿り着いてない。悲しい。尾形も杉元にボコられて川に落ちて顔パンパンだった。かわいそうに。でも二百三高地でちょっぴり映っててニコシ…となった。

月島がデカい

背が高いのにちゃんと月島だった。工藤阿須加ってこんなに陰気な顔してた??馬橇の上で杉元を殴り続けるところ、杉元側から映すことで月島の無表情がしっかり見えたのでよかった。

二百三高地の塹壕戦

ミリオタではないので詳しいことはわからんがよかった。NHK「映像の世紀」で見たやつだ〜!塹壕戦を長いこと経験すると聴覚がおかしくなるらしいのだが、キーーーンという音が鳴って周囲の音が消えていく場面があってなるほど~と思った。(あったよね?)

アシㇼパさんについて

そういえば原作冒頭は、「アチャ=のっぺらぼう」が不明だったんだということに気づく。アシㇼパがアチャから教わったことを一つずつ大切に杉元に教えてあげることで、アシㇼパがどれだけアチャを尊敬しているか改めてわかった。アシㇼパは入れ墨も入れないし織物も得意ではないけど、アチャから教わったことがアイヌとしてのアイデンティティーになっているんだよな。それ故に、「ゲリラで戦えるように娘を仕込んだ」とか宣ったウイルクにゲンナリする気持ちもある。子に期待すな。技術を教えたとしても、それを何に役立てるかはアシㇼパさんが決めるだろうが。あと、これは圧倒的に私が民族的多数派にいるから言えることですが、アイヌ(及び北方の少数民族)を「我々が今は出会うこともできない遠い人々」として描いているという意見(批判?)は免れないと思う。これは私が歴史と文化に対して無知なだけとも言える。でもやはり、金カムを読むと、アイヌ(及び北方の少数民族)を「卓越したサバイバル能力と独自の信仰を持つ民族」みたいな捉え方が全面に押し出されてしまうことの危機感はあると思う。それが全てではないのにね。

総評…めちゃくちゃ濃い“第一話”って感じだったので続編があったら観たい。もう一回観てもいいかも。

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