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ゴッドハンドの三十人
ゴッドハンドの方々、こちらでーす。
と、旗を持った添乗員が読んでいるので、ゴッドハンドの各々はそちらへ向かう。
事務局で作りました、という名札とキャップを身に着けているので、ひとめでわかる。
少々やりすぎては?と私は思ったが、これぐらいしないとゴッドハンドであることを忘れて町に混ざってしまう。
そうなったらとてもやっかいなので、と聞いてくれない。
ゴッドハンドであろうが、なかろうが、関係ないのではないか。
黄色のキャップが30個そろうと圧巻である、としか思えない。
それはまるで、黄色の指であり、それが30、つまり6本の手であった。
彼らは一人一人がゴッドハンドであることに間違いないが、集合し、指として働くことでさらなる高みへむかっている。
1本の黄色い手が、走ってきた犬をつかむ。
犬が最初、何事かと恐れおののいていたが、すぐにそれがゴッドハンドであると気づく、間もなく犬はその手の中で、母なる安らぎを感じ、警戒心を解いて、目を閉じる。
先ほどまでの喧騒はどこにいったのか、犬を包み込んだ手が、犬をまぜはじめ、じきに団子になった犬の存在に人々が気づく頃には、ときすでに遅し、ゴッドハンド世に放たれる。