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どこにもいる/どこにもいない
どこにもいて、どこにもいないものなーんだ?
目に見えないが、確かに存在するように、それは僕に語りかけてきた。
禅問答のような、答えのない問いだった。
けれど、確かに聞こえて、その存在自体が答えなのではないかと感じていた。
僕は目を閉じて、耳をすます。
ここは居酒屋で、飲み会に参加していて、10人ぐらいの小さなグループの、あまり知らない人たちと僕は酒を飲んでいた。
時々大きな笑いが起こって、誰かが泣いていて、話題は次から次へと移り変わっていった。
僕はその話題に、うなずきつつ、ほとんど自分のことを話さないまま、ただ酒を飲み続けていた。
そうこうしているうちに、誰かと誰かが仲良くなり、(その飲み会は男女の出会いの場と言うような飲み会であった) 1人また1人とその場から姿を消した。
僕はその中にいて、乗り切れず、ただ早くこの場が終われば良いと思っていた。
決して楽しくないわけではない。けれどそこに合わせるような資質が僕にはなかったのだ。
料理はおいしいし、酒もほどよく脳をしびれさせる。
けれど、僕は、そこにいた誰とも話さず、存在しないかのように振る舞う。
僕は空気である。
僕は石ころである。
僕はその辺に転がっているサイコロである。
孤独を感じるのは、結局こんな時だ。