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カタツムリ・ガール

彼女はいつも、家にこもっている。

彼女は、家で自分の好きなことをして過ごしている。

彼女は、彼女の家に僕を招いてくれ、彼女の好きなことを、一緒にしてくれる。

具体的には、彼女の手料理を、僕に振る舞ってくれる。

彼女が外に出るのは、彼女が作る料理の材料を買いに行く時だけ。

彼女はショッピングなど、外にあるものに対する興味はあまりない。

彼女が力を入れるのは、料理に対してだけだ。

その、こだわり抜いた彼女の料理を、どうして僕なんかに振る舞ってくれるのか。

よく考えると不思議なことである。

彼女は、僕の幼なじみで、昔からよく知っている。

家族同士で仲が良く、彼女が家にこもっていない時期も、家族ぐるみで一緒に食事に出たり、公園で遊ぶなんてこともしたことがある。

その後諸々の理由で、僕ら家族は仲が悪くなり、(あまりこの事については語りたくないため、その事情などは省略する)、けれど、僕と彼女はその家族に巻き込まれずに、以前の通り仲が良く、家にこもった彼女の手料理を今も食べることができる。

彼女が家にこもっているのは、家族のことに大きな影響を受けているが、それは彼女の問題であり、僕には関係ない。

僕だって彼女と、外に出てデートなどしてみたいと思っているが、彼女を外に連れ出す事は、かたつむりの殻からその本体を削り出すようなもので、不可能である。

初めから諦めている。

彼女の手の込んだ料理をむしゃむしゃと食べながら、その彼女の消えそうな顔を、時々盗み見ては、これからどうなるんだろう、と考えている。

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