寓話のレッスン
好きだから苦しいのか、苦しいから好きなのか。
実際微妙なところである。
好きになれば、餅を口の中に突っ込まれ、もごもごと咀嚼するものの、餅はそう簡単には噛みきれず、やがて喉の手前に引っ付いて、取れなくなる。
慌ててやってきたお婆さんに、爺さんや大丈夫か、と背中を叩かれてかろうじてはきだす。
しかしすでに多くの酸素を失った後、意識は戻らず寝たままである。
あれからどれぐらい経ったのだろうか。
まだ爺さんは眠っている。
生きているのか、死んでいるのか、正直わからないけれど、医者はチューブで栄養を送るのをやめない。
こうすれば半永久的に生きることができる。
だから大丈夫、何もかも任せて安心していなさい。
眠っていればいい、何も心配することはない。
ある夏のことであった。
すでに関心を失った人々が年に一度、そばにやってくる日。
最初にやってきたのはうさぎさんだった。
うさぎさんは爺さんの頬の涙を舐め、餌を求める。
爺さんは動かないんだよ、うさぎさん、と僕はつぶやく。