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青の図鑑

その図鑑には、世界中の青が集まっていた。

青は、それぞれの棲家から、トコトコとやってきてその図鑑に収まっていった。
ずいぶん遠くから来たものもいる。
傷だらけの脛を自慢げに見せるものもいる。
皆一様に安心した顔で図鑑に収まっていく。
彼らは一族を代表してきたのだから、収まるまでは死ねない、と使命感を持っているのだ。

中には青ではないようなものもいる。
けれど、周りから青と囃し立てられて、その気になってやってきたのだ。
図鑑としては別に構わない。
少々ずれていても、それは青として受け入れてくれる度量の広さがある。

だから、信号機の青は最初、いや無理だということは百も承知で、でも親戚のおじさんから、もしかしたら対象に入っているかもしれないし、一旦受付だけ行ってみてくれないか、わしの夢なんじゃ、と言われてきたのだ。

どうみても青ではない、と一部のものは思ったが、図鑑は受け入れた。
その時の信号機の青の喜びようたら。

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