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金木犀香る次の季節

「雪だ!」
「やった!ソリ持って校庭の坂集合!」
放課後の帰り道で、小学生

「昨日の夜から結構降ったんだね」
「今日の朝練は雪かきかな、さっぶ」
早朝登校時バスの中で、中学生

「寒いね」
「寒いね、もお!下り坂なのに凍って滑る」
帰り道駅に向かう下り坂で、高校生

私の出身地は毎年雪が降り、道も凍る。小学校では校庭に水を張り自然の寒さでスケートリンクを作る。もちろん田舎、人の噂はすぐ広まるし、救急車が来れば翌日には誰がどうして運ばれたかなんかも私の耳に入ってくる。最近徒歩15分で行けるコンビニがやっとできた、それまでは車で15分。どこを見ても山、山、山。葉っぱ1枚1枚の色も、枯れている木もはっきり見える。秋と冬はとても綺麗だけど、花粉症の私にとって夏は過酷、小さい頃は毎朝鼻血が目覚ましだったし今でも夏になると風の音だけで目や鼻がむず痒くなる。

飛んだ田舎だけど、地元で迎える冬が好きだ。
寒さなんて感じなかったからスキーウェアの中に雪が入るのも気にせずはしゃぎまわってた幼少期。
部活に没頭し寒さで鼻と耳がちぎれそうになるのを堪えながらグラウンドを駆け回ってた中学生。
友達と遅くまで受験勉強しながらお菓子を爆食い、ちょっとばかりのダイエットといいながらウインドブレーカーを着込み白い息を弾ませ近くの湖畔を走った高校生。
そしてお風呂に浸かる時足や手の先がお湯の温かさで痛み、懐かしささえ感じる現在。

クリスマス近くなってカップルばかりのイルミネーションへ友達と行き、寂しくなる。寒いねってポケットに手を突っ込んで焚き火を囲みながら甘酒を飲む。雪が降っている日に真っ暗なはずの空を見上げると一面に雪が白く浮かび上がっているのを綺麗だね、どのくらいつもるかな?って見上げる。寒さのせいか、ちょっぴり切ない気持ちになるのに好き。
寒い道買い物へ行きコタツに入りながら家族や友達と鍋を囲み酒をしこたま飲む。気持ち悪くなって、酒なんて一生飲まないと後悔するのを繰り返す。気持ちは悪いけどそれも好き。

何より好きなのが、冬はちょっとだけ優しくなれるから。人の優しさに気づけるから。いつもは気づかないことに気づけるから。例えば仕事帰り、疲れて歩いていると通りかかったイタリアンレストランからミートソースのいい香りがした時。歩みを弛めて深呼吸を3回。ここぞとばかりに肺をミートソースの香りで満たし、食べた訳ではないのにいい気分になって家に帰る。
そんなちょっとの事に気づけて優しくなれる冬が好きだ。そして思い出の詰まった田舎の冬が好きだ。

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