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詩「手を放したら」

子供の頃から ずっと大事にしてきたもの

それは大事なものだと 大人の人が言っていた

言っていたような気がする

それはお守りのようなもの

それにすがると安心する


放さないよう握りしめ

放れないようしがみつき

何年も 何十年も


なのに最近耳にする

「それはもうなくても大丈夫だよ」

「手を放したら自由になれるよ」

そんなわけない

これのおかげで ここまでれたんだ

これのおかげで 平和に生きてこれたんだ

そんなわけない

そんなわけないのに

握りしめる手が痛い しがみつくことが辛い

体はもう放したがっている


この手を放したら わたしはどうなるのだろう

この手を放したら この先どうなるのだろう

怖くて 怖くて 握りしめる手が強くなる


そりゃそうだ

ずっとこれが当たり前だったんだから

痛いのも 辛いのも

当たり前すぎて気付けなかったんだから

怖くて当然


ふと 体の奥底から声が聞こえた気がした

「気づいてくれたんだね ありがとう」

「大丈夫 気付けたんだから

そのうち手を放せるときが来るよ」

「だから今はまだ そのままでいいよ」

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