【発達障害】こんなときどうしたらいいの?#20~文字をうまく書くことができない~
はじめに
発達障害を持つ子どもが文字を書くのに苦労することがあります。例えば、「ぬ」と「め」のような形が似ている文字を書き分けるのが難しく、両方の文字が混ざったような奇妙な形になってしまうことがあります。また、漢字の学習でも、「偏」は覚えていても、「つくり」をどうしても思い出せないことがよくあります。
さらに、文字をきれいに書くことが難しく、ノートのマス目に収めて書くことができなかったり、テストの解答欄にうまく文字を収められなかったりすることがあります。授業中に黒板の文字をノートに書き写すのも苦手で、書き写すうちに内容を忘れてしまうこともあります。しかし、意外なことに文字を読むことは問題なくできる子も多く、文章を理解する能力には問題がありません。
1.字をうまく書けない原因
これは、文字の形は頭の中に記憶されているものの、それを実際に書く際の手の動きに困難があるためです。また、ADHDの特徴を持つ子どもの場合、集中力や気持ちの乗り方によって字のきれいさが大きく変わります。例えば、宿題を集中して取り組むときには「日」という字を正確に書けるのに、授業中に急いでノートを取ると「目」と「曰」のように文字の形が乱れてしまうことがあります。
2.努力不足ではない
文字がうまく書けないのは、障害の特性によるものであり、本人の努力不足が原因ではありません。例えば、子どもが「さ」という文字を何度も書き直しても、形が整わないことがあります。そのため、文字の練習の回数を増やしたり、完璧に書けるまで書き直させたり、書き順や「はね」「とめ」の正確さを過剰に求めたりすることは、学習への意欲を削いでしまうため、好ましくありません。練習の量を増やすのではなく、例えば、細く伸ばした粘土を使って文字の形を立体的に覚えたり、大きな見本をなぞり書きすることで文字の形を理解するなど、どのようにして文字を覚えたり書いたりするか、その方法を工夫することが大切です。
3.効果的なサポート方法
視覚的・立体的アプローチ:ひらがなの線と線の重なりがわかりにくい場合は、細く伸ばした粘土を使って文字を視覚的・立体的にとらえる方法が有用です。これにより、文字の形を手で感じることができ、理解が深まります。
大きな見本と近い位置に配置: 新しく覚える漢字などの練習には、大きな見本を準備し、なるべく近い位置に置くことが効果的です。まずはなぞり書きを行い、字の形を理解しやすくします。なぞり書きは、クリアファイルに挟んで行うのもおすすめです。クリアファイル(透明な無地のもの)、水性ペン、古布を用意し、見本のページをクリアファイルで挟んでその上から文字を水性ペンでなぞります。滑りが良く、書き心地が良い上に、布で拭き取れば何度でも書き直せます。
特別なノートの使用: ノートも、一つのマスが四分割されているタイプを使うと書きやすくなります。マス目がはっきり分かれているため、文字の配置がしやすくなります。
板書の省略とプリントの活用: 授業中に黒板の文字を丁寧に書き写すことは、書くことが苦手な子どもにとって大変な作業です。それだけで精一杯になってしまう場合は、最初から板書をしなくてもよいように、資料となるプリントを用意してもらうことも良い方法です。
連絡帳の工夫: 連絡帳は、連絡事項が黒板に横書きで書かれている場合は横書きの連絡帳を、縦書きで書かれている場合は縦書きの連絡帳を選びましょう。書き写す方向を合わせるだけで、やりやすくなることがあります。
テスト対策: テストの際には、解答欄を大きめにしてもらうなど、子どもの特性に合わせて対応してもらうよう、先生とよく話し合っておくことが大切です。
最後に
発達障害を持つ子どもが文字を書くのに困難を感じるのは、特性によるものであり、本人の努力不足ではありません。親としては、無理に練習量を増やすのではなく、工夫を凝らした方法でサポートしてあげることが重要です。子どもの特性を理解し、適切な方法で支援することで、学習への意欲を保ちながら文字を書く力を伸ばしていきましょう。