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ライン随想録 エジプト旅行と体調

ライン随想録 1995年 井浦幸雄 スイス・バーゼル

九五年暮れのクリスマス休暇時に、欧州在住の日本人グループのために企画された八日間のエジプト旅行に参加した。
この旅行は非常に人気があり、募集すると間もなく満杯になることをかねてから聞いていたので、旅行社に早くから問い合わせて、すぐに申し込み、運良く一回の連絡で参加が可能となった。
カイロ、アブシンベル、ルクソール、 王家の谷、それにナイル川クルーズと内容も実に盛り沢山で、欧州、米国各地の他の旅行にくらべてエジプトの古い史跡に触れることができ、印象深い旅行となった。

いわゆる発展途上国の旅行は、若いころ、イラン、アフガニスタン、ザンビア、エチオピアなどにIMFから派遣されて行っていたので、私にとってはめずらしいものではなかったが、家内は米国、日本、欧州の各地には行っていたが、いわゆる途上国ははじめてであったので、見るものすべてがめずらしく、楽しんだようだった。
四千年の歴史をもつエジプトはどこへ行っても歴史の重みと深みに圧倒され、 ツアーに参加したロンドン、 アムステルダム、チューリッヒ、ウイーン在住日本人の仲間もみな感動したと口々に言っていた。

この旅行で二つのことが印象に残った。
一つは、ツアー参加約六十人のうち約四割の人がお腹をこわしたり、熱が出たりして、一時的にせよ見学に参加できなくなり、クルーズ船の船室で休まざるをえなかったことである。
もとより、重症の人はおらず、 旅行の最後には元気をとりもどして、無事それぞれの国に帰っていった。

しかし、他の日本人グループより多かったとはいえ、この体調を崩す人が続出するのはやや驚きであった。
わたしのところは家内が三八度の熱をだし、一日休んでいたが、すぐに回復し、また見学に参加したが、 家族五人のうち四人までがダウンしたり、夫婦そろって寝込んだりしたケースが続出した。

英国人の仲間にこの話をしたら、これは「エジプシャン・タミー〔エジプトでの腹痛〕」といって、有名なことであり、日本人だけでなく、先進国から行った人の多くが腹痛に見舞われたり、体調を崩すことがあるようであった。
この話はツアー参加者も前から開いており飲み水はミネラルウオーターだけにしたり、 生野菜は決して食べないなど、事前の注意を分にしていても起こることらしい。

面白かったのは、エジプト人のベテランツアーコンダクター、アプさんは、体調を崩す人がいても「どうぞ、お大事に」とはいうが、それほど気にしている様子でもなかったことである。
病人が出はじめるツアーの後半はナイル川クルーズと重なっており、船室で休んでいても船はあちこちに動いてくれるし、それに毎回のことでそれほど心配する必要はないと考えているにちがいなかった。

同じ船に乗り合わせた日本人添乗員の田中さんに問い合わせたところ、
「もう、エジプトに十年もいるが、ここはまず衛生観念のないところね。
疲れと、食べすぎもあるかも知れないけれど、やわな日本人に取りつく細菌があるにちがいない。」
とのことだった。
エジプト旅行にかぎらず、途上国への旅行は、計算上のリスクとして腹痛ていどは覚悟する必要があるかもしれない。
また、一度経験すれば、二度目からは免疫ができて、 同じような病状はでないのかもしれない。

もうひとつ印象に残ったことは、エジプト人の日本語ガイドのことである。
これまで、ヨーロッパで日本人グループと一緒に旅行したときは、ギリシャのアテネでも、トルコのイスタンブールでも日本人のガイドであった。
フランスのロアール川地域の古城めぐりでは、フランス人のガイドが流暢な日本語で説明してくれた。
日本に長期間滞在したことのある人で、「フランスでは子供が生まれるとすぐに新しい良質のワインを購入し、その子供が結婚するときに振る舞う熟成したワインを準備するのです」などと、地元の人ならではの面白い話をしてくれた。
エジプトでは、大きなグループであったのでふたりのガイドがついたが、いずれもカイロ大学日本語学科卒業のインテリであった。

終わりに

この記事は2017年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さった。
この記事は住職の息子によって今も公開されている。
しかし、井浦さんの「ライン随想録」は今やどこにも見当たらない。
それで、当時お世話になったことを思い出し、復刻することにした。
インターネット上にあるライン随想録へのリンクも追加しました。


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