経済法の気軽な読み物(導入)
どうも、一般オタクです。
前回(1時間前ほど)、経済法選択のススメを書きましたが、じゃあ経済法ってなんやねんと興味を抱いていただいた方のために、本当にさっくりと経済法ってどんな法律なの?司法試験では何が聞かれるの?ということを書いていければと思います。
*ちなみに一般オタクたる私の書くnoteは、ただのオタクによる垂れ流しですので、司法試験問題の答案を書いてほしいということや、有料で答案を見てほしいなどのありがたいお願いが来ない限りは有料にするつもりはありません。というか予備合格者でもなければ、司法試験選択科目1位でもないのにたれ流すのどうなんだという指摘は刺さるので許してください。
また、ノリで消すことも有り得ます。黒歴史になるかもしれないからね!
経済法とは
経済法は、司法試験的には独占禁止法と一般指定(告示:不公正な取引方法)のみと言って差し支えありません。
*ちなみに司法試験六法には下請法と景表法という(不)愉快な仲間たちが記載されていますが、そんなものは司法試験受験生に関係しないと考えてよいでしょう。(弁護士で一般企業法務やられる方はそのうち高確率で出会う不愉快な仲間たちだと思います。)
また、以下では、独禁法のことを競争法と呼ぶ場合もありますが、これは国際的には、“Competition Law”と呼ばれることに由来します。
競争法と言えば、デビット・ガーバー著、白石忠志訳「競争法ガイド」、おすすめです。
さて、脱線しましたが、独禁法の話に戻りましょう。
基本的に法律が何をしたいのかは目的規定を見ればわかることが多いですね、そこで独禁法1条の目的規定を見てみましょう。
「この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」
何を言っているんだという話ですが、ざっくりいうと「競争制限的な行為を排除することで、競争を促し、消費者の利益及び国益を目指す」と整理できるでしょう。
また、独禁法の建付けを見てもらえばよいのですが、最初に問題となる行為の定義規定を置き(例えば2条6項)、その行為が禁止されていること(2条6項に対応するのは3条(後段))を規定し、その違反の効果(2条6項に対応する排除措置命令等は7条)を定めるという構造になっています。
司法試験では何が聞かれるの?
ずばり司法試験・予備試験で聞かれるのは、事業者ないし事業者ら、または事業者団体による行為が独禁法上問題となるか、および条文を絞った上で、その条文に問題の行為が該当するか?というものです。
それって他の科目と何も変わんないじゃん、というのはそうで、実務家登用試験ですから、実務で実際に問題になる行為に対してその該当性を判断させるというのは他の科目と変わりませんね。
たとえば私がこよなく愛している平成30年司法試験第二問は、Booking.comのようなA社が、以下の2つの案の行為をしたらどうなるかというものでした。(以下は問題文より抜粋)
第1案は,ホテルや旅館などA社と契約する宿泊施設は,A社のサイト上で提示する当該宿泊施 設の宿泊料金,朝食の有無,提供される部屋の数と等級,キャンセル条件等(以下「宿泊料金等」 という。)が,当該宿泊施設自身のサイト上で提示するもの,及び,新規参入事業者を含む他のO TAのサイト上で提示するものと同じか,より有利になる(例えば宿泊料金でいえば,A社のサイト上で提示される料金が他の全てのサイト上の料金と同じかそれより安くなる)ようにしなければ ならない旨の契約条項を導入するというものである。
第2案は,A社と契約する宿泊施設は,A社のサイト上で提示する当該宿泊施設の宿泊料金等が,当該宿泊施設自身のサイト上で提示するものと同じか,より有利になるようにしなければならない旨の契約条項を導入するというものである。
〔設 問〕 A社が検討している上記の両案について,独占禁止法第2条第9項第6号ニに基づく一般指定第12項に該当するかどうか,【資料】も参照しながら検討しなさい。 なお,解答に当たっては,複数のOTAの提供するサイトを横断的に検索して,これらのサイ ト上の情報を一覧できるサービスを提供するメタサーチサービス事業者や検索エンジンといわれる一般的な検索サービスを提供する事業者を考慮する必要はない。また,外国の宿泊施設やユー ザーについても考慮する必要はない
この設問はbooking.comの最恵国待遇条項がモチーフであると考えられますね。(https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1904/10/news084.html)
このプラットフォーム事業者と多面市場という話題は最高に面白いのですが、その話をすると到底軽い読み物ではなくなってしまうのでさておき、この条項は「拘束」に該当するのは問題文を読めば明らかでしょうから、本丸は、競争制限効果の発生の有無(「不当に」(一般指定12項)行われているか)及び発生するとしたらその発生のメカニズム(競争機序)でしょう。
いかんせん両面の市場であるが故の市場画定の難しさというものがありますが、求められるのは、「どのような市場で」「どのようなメカニズムで」他者が排除、ないし価格が維持されているかということの判断でしょう。
そこで、司法試験(ひいては独禁法の該当性を考える)においてしなけれならないことは、
①まずそれが独禁法上問題となる行為か
②それがいかなる範囲に影響を与えるか
③②で画定された範囲において、行為が独禁法上許容できない競争制限効果を発生させているか
を検討することです。
厳密に言えば、③の後に④正当化事由が存在するかということを考えます。
総括
やや話が飛び飛びになってしまったことや、まだ経済法をほとんど勉強していない方にとってはなにこれという感じですが、以下にまとめを書いておきます。
1.司法試験においては経済法=独禁法+一般指定
2.司法試験における経済法の出題は実際の行為の該当性を問題にしている。
3.検討順は、
①まずそれが独禁法上問題となる行為か
②それがいかなる範囲に影響を与えるか
③②で画定された範囲において、行為が独禁法上許容できない競争制限的な影響を発生させているか
(④③が認められる場合に正当化事由があるか)
次から経済法を勉強するために必要な市場画定について思うことをつらつらと書いていければと思います。