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家がなくなるまで-3

こんにちは、こんばんは。
仮面ライダーが大好きな小学生の男の子とふたりで暮らすシングルマザーのわがぶたです。
今回も私たち親子が2023年の夏に帰る家を失った話の続きを綴っていきたいと思います。


8.13
前日にあいているはずのない穴が発見され、一睡もできませんでした。
夜中にキッチンの上からなにかが落ちてきた音がしたり、シンクを覗く度に赤ん坊Gが死んでいたり、家に居るあいだはずっとなにかに怯えていないといけなくなりました。

穴が見つかった途端、まるで家に生き物を招き入れているような状態に。
子どもはひとりでトイレにも行けず、私も真上の穴からなにが落ちてくるかわからずキッチンに立っているあいだは全身が震えていました。

1番安心できる場所の家が、最も居たくない場所になりました。

「こんなつもりで決心して、上京してきたわけじゃない」

とにかく早く穴をどうにかしてほしくて不動産屋に連絡をしたのですがお盆休暇中ということで担当者の方からは、8/17まで対応ができないと返事をされました。

この日から、リビングで明かりもテレビも点けたまま夜を明かすことになります。

なにか音が流れていないと気が狂いそうでした。
なんだかわからない生き物の動く音が聞こえ、シンクに虫が落ちてきている音がします。
音楽じゃなくテレビが良いと教えてくださったのは、8/16に来ていただいた害虫駆除業者さんでした。
映像でも人間が動いている様子があれば虫は警戒してリビングには来ないと教えてもらったのです。

この時に来ていただいた業者様には、害虫たちが外から出入りしている証拠や、他に外と繋がっている箇所がないかを探していただきました。
すると、他にも洗面台の下や換気扇フードの中に外から生き物が出入りできる十分な穴や隙間が見つかりました。
換気扇フードの中には生き物の糞や痕跡があり、そこから生き物が出入りしていることは明らかでした。


8.17
ようやく不動産会社の方が家に来てくれました。
穴が見つかってからこの日まで、子どもも私も十分な睡眠を取れた夜はありませんでした。
怯えながら寝る子どもより先に寝られるわけがないと思っていたのですが、私がそう気を張っていたから息子も過敏に反応してしまっていたのかもしれません。

今ならそう思えます。でも当時は目を瞑れば耳がするはずのない音を拾おうとしてしまい、私も相当に参ってしまっていました。

毎日のように赤ん坊Gと出会い、夜は更に大きな生き物の音がする。
1秒でも早くこの毎日から抜け出したい。
そう思い、不動産会社の方と大工さんが来てくれるというこの日を待ち望んでいたのです。

ですが不動産会社の方が突きつけてきたのは「日程調整が必要なので、今日は穴を塞げません」という無情な一言でした。

「いやいや、お盆明けたら対応すると仰ったから待てたんですよ?これ以上、こんな穴があいた部屋で生活はできません」

私も子どもも体力的に限界でした。
今日からは寝れる、やっと暗い部屋で睡眠が取れる。
なによりも安心して家で、『普通の生活』を送ることができる。
普通にご飯を食べて、
普通に宿題をして、
普通に仕事をして、
普通にお風呂に入り、
普通に寝る。
なにに怯えることもなく、過ごすことができる。
目指してきたふたりでの生活を、取り戻せる。
その想いが打ち砕かれた瞬間、私の糸が切れてしまいました。

いつ穴が塞がるかわからない。
明日、寝る場所はないかもしれない。
資金もいつ底をつくかわからない。
それでも『今日』、この家で過ごすことはできない。
そう判断しました。

この日から、私と子どものホテル生活が始まりました。


仕事が終わってすぐに駅前のホテルに片っ端から電話をかけました。
さすが夏休み、そうすぐには見つかりません。
翌日も仕事があるとなれば、朝にはこの家に帰ってこなくてはいけない。
(自宅以外で仕事をする場合は事前に会社へ届出が必要だったのです)
この時には宿泊代が自費でも仕方ないと思っていましたので、予算も限られています。
その中で、なんとか1室空いているホテルを見つけました。
電車での移動が必要ではありましたが、迷っている余裕はありませんでした。
すぐに今晩必要なものだけを持ち、子どもと家を出ました。

今でもこのときのことは鮮明に覚えています。
作っておいた夕飯も冷蔵庫に置いて、ゴミは全て処分して家を出たのです。
このとき私は「もうこの家で生活をすることはないんだな」と、ぼんやりとですが察していたのです。


お読みいただき、貴重なお時間をいただきありがとうございます!
ご反応、とても励みになっております。
心からの感謝を申し上げます。

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