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パワーハラスメントがなくならない本当の理由

パワーハラスメントの講習会や研修は一般的になりました。パワーハラスメントとはどう言うものなのか、どのような言動がパワーハラスメントになるのか、パワハラの知識に関しては一般化し理解が深まっています。

誰もがパワーハラスメントの知識を持つことは、パワハラ防止の大きな第一歩です。

しかし一方で、頭では理解していても、パワーハラスメントに至ってしまう心理的背景を持っている人にとっては、ストレスやプレッシャーの多い状況などでは、パワハラは容易に起こってしまいます。

そこで今回は、パワーハラスメントに至ってしまう心理的背景に焦点を当てて、パワハラがなくならない理由を一緒に考えてみましょう。


1、心の中にある対人関係のパターン

わたしたちは、育ってきた環境の中で対人関係のパターンを身につけます。
この対人関係のパターンを、心の中の「雛形」とか「鋳型」とも言います。

では、パワハラの心理的背景につながるパターンとはどのようなものなのでしょうか。

子供の頃に、親などの養育者から責められたり怒鳴られたりして、厳しい批判や恐怖でビクビクした体験をした人は、それが対人関係の雛形として心に刻み込まれ、「怒る人 & ビビる自分」という対人関係のパターンが形成されます。

このパターンが形成されると、自分がビクビクするだけではなく、権力のポジションなど強い立場につくと、相手をビビらせる人にもなり、これがパワハラにつながります。

相手の失敗やうまくできないことなど、相手を責めたくなるような場面になると、無意識のうちに相手をビビらせる怖い人のパターンにはまってしまいます。
対人関係のパターンを再現して、自分が感じた不安や恐怖を相手にも引き起こしてしまいます。


2、共感性が乏しい

パワハラする心理的背景として、弱者に対する思いやりや倫理観が欠如していること、具体的にいうと、共感性が乏しいことが挙げられます。自然に相手の立場に立って痛みを感じることが苦手です。

リーダーにとって、共感力は重要なコミュニケーション能力の一つです。共感性が乏しくても、メンバーの話を聞こう、共感的に傾聴しようと頑張っている時は、共感力を発揮できている可能性が高いです。

しかし、もともと共感性が乏しいと自然には共感性が発揮されないため、意識していないときは、相手の立場になって痛みを感じられず、冷酷な態度を容易にしてしまいがちです。

特に、プレッシャーやストレスで余裕がなくなってくると、誰もが自己中心的な考えや行動にになりがちで、パワハラにつながりやすくなります。

相手の気持ちを考えずに発言してしまうことは、客観的なパワハラとは認定されないまでも、受け取った側が不快な思いをしたり苦痛を感じたりする可能性が高く、相手にとってみれば「今のはパワハラじゃないか」などと言いたくなる状況に簡単に陥ってしまいます。


3、自分と他人の境界が曖昧

人は思い通りにならないことをわかっていないこと、もっと言えば、自分と他人の区別がついていないことは、パワハラにつながりやすい心理的背景として重要なポイントです。

わたしたちは、相手が自分の思い通りにならないと感じるとき、相手は自分の延長であるかのように考えています。

相手に自分の意思や要求を押し付け、自分の目的を相手が自動的に共有しているものだと勘違いしています。

これは、いつの間にか自分と他人は同じ考えだと思い込んでいる状態で、自分と他人との境界が曖昧になっています。自分と他人は違って当然ということが自分の中に育っていないのです。

この認識のズレは、他人をコントロールしようとする行動へとつながります。そして、リーダーのような立場で権力のポジションについた場合、相手をコントロールしようとすることが容易にパワハラにつながってしまいます。

例えば、このようなシーンが考えられます。
リーダーが1週間の海外出張を要求しました。メンバーは家族と相談した結果、子供の学校の送り迎えなどがあるため1週間家を空けることが難しいことを伝えました。

するとリーダーは「今後のキャリアを考えて、いつかは海外出張に行く場面があるんだから、家族とよく相談しておくように」という発言をしました。メンバーはこの発言に対して、家庭に土足で踏み込まれたような気持ちになり非常に不愉快で、パワハラではないかと感じました。

リーダーは、メンバーが期待に応えられないことの不満からこのような発言をしたと考えられます。家庭とキャリアの両立においてどちらを優先するかは本人の決断です。

自分と他人の考えは違って当然であり、それぞれの考えは尊重されるということが身についていないと、自分の思い通りにならなかったとき、パワーバランスとして上位の立場にあるリーダーは、、些細な発言でも相手を追い詰める可能性がある、ということはぜひ覚えておきたいです。


まとめ;

パワハラに至ってしまう心理的背景として、
・心の中にある対人関係のパターン「怒る人 & ビビる自分」
・共感性の乏しさ
・自分と他人の境界線の曖昧さ
を取り上げました。

わたしたちはこれらの要素のうちどれか一つはもっている可能性が高いです。しかしパワハラに繋がるのは、この3つ併せ持った場合が多いです。

パワハラは理屈としていくら頭ではわかっていても、このような心理的背景を持っている場合は、特にストレスやプレッシャーで余裕がなくなると発動されやすくなります。

これらの心理的背景を解決するにはどうすれば良いかは、別の機会に取り上げてみたいと思います。

まずは、パワハラの言動に対する知識だけではない、心理的背景を知ることもパワハラを防止していく上ではとても大切なこととして心に留めておきましょうね。


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