メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種 4-1「部下のストレスに気付くには」

 




 これまでは、行政判断では認められなかった自殺が、司法によって覆される事が起こったため、厚生労働省(当時は労働省)は自殺を含む精神障害の労災認定基準を見直しました。現在は「厚生労働省」ですが、当時は厚生省と労働省に分かれていました。省庁再編によって厚生労働省が誕生したのですが、心身の不調は労働によって起こる(長年の就労の影響で定年後に発症することもあります)ことが多いので、良い再編であったと思っています。

 心理的負荷による精神障害の認定基準は、業務によるものと業務外によるものに大別されます。
 このうち業務によるものは、「特別な出来事」と「特別な出来事以外」に更に分けられます。

Ⅰ.特別な出来事
①心理的負荷が強度なもの
・生死にかかわり、極度の苦痛を伴ったり、再起不能な後遺障害を残す業務上の病気や怪我
・業務に関連して他人を死亡させたり怪我を負わせた
・セクハラを受けた
②極度の長時間労働・発病直前のいケ月に概ね160時間や同程度の時間外労働があった

Ⅱ.特別な出来事以外
①事故や災害の体験 ・重度の病気や怪我・業務に関連して死を予感させるほどの事故や出来事を体験した
②仕事の失敗や過重な責任の発生 ・会社の経営に影響するほどの大きなミスをして、事後対応も行った ・仕事上の責任を問われて、立場や職責を大きく超える事後対応を行った。 ・経営に影響するようなノルマの未達成があり、事後対応も行った。 ・業務に関連した違法行為を強要された。
③仕事の量・質 転勤や部署変更など大きな変化があった。 ・いケ月当たり100時間を越える時間外労働があった。 ・2週間以上にわたって連続勤務を行い、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行った。
④役割・地位の変化 ・全く違う業務への配置転換があった。 ・海外に転勤し、現地の治安や言語など業務遂行に影響が出た。
⑤パワハラ ・治療を要する身体攻撃を受けた。 ・業務には明らかに必要性の無い精神的な攻撃。 ・必要以上の長時間の叱責。 ・社会通念からかけ離れた精神的攻撃
⑥対人関係 いじめや嫌がらせ
⑦セクハラ 性的な発言のみで、人格否定も含む。かつ継続的なもの

 

時間外労働の負荷評価


1か月あたり80時間未満は弱レベルです。80時間を越えると中レベルとなります。
2か月連続で120時間以上、3か月間に毎月100時間であった場合は強レベルです。
 長時間労働はメンタルヘルス不調の原因になりますし、脳神経疾患の発症との関連も深くなります。
 労働基準法では1週間に40時間を越えて労働させてはいけないとされています。休憩込みで朝8時から17時であることが多いのですが、この時点で法律すれすれの勤務時間であることが解ります。
 サブロク協定と呼ばれる規定は、労働者の過半数で結成する組合や、労働者の過半数を代表するものとの書面で協定を行い、行政官庁に届け出ると時間外労働が認められます。ただし、月45時間もしくは年間360(サブロク)時間の上限規制があります。
 また、過去にさかのぼって時間外労働の支払いを命じる判決が出ています。今後、サービス残業の扱いにも注意が必要となります。

  労働安全衛生法の改定に伴って「過重労働による健康障害防止のための総合対策」が策定されました。事業者が講ずべきものは
①時間外・休日労働時間の削減
②年次有給休暇の取得促進
③労働時間等の作成の改善
④労働者の健康管理にかかる措置の徹底(果樹労働による業務上の疾病を発生させた場合の措置・長期間にわたる時間外や休日労働を行った労働者に対する面接指導)

 ④にあるように労働安全衛生において、事業者は長時間労働を行った労働者に対して面接指導を実施しなければならないとされています。

 
 

ストレスチェックに関して

 高いストレス状態であると認定された労働者は医師から個人結果の通知とともに、医師による面接指導を受けるように勧奨がされま面接指導は業務時間内に行われることとされています。結果によっては配置変更などの措置が求められます。
 管理監督者は面接指導を受けやすい体制を作らなければなりません。産業保健スタッフ・健康管理部門・人事労務部門と連携して就業上の措置を講じます。面接結果を理由とする不当な措置は控えなければなりません。
 
 長時間労働者は精神的ストレスを高まった状態にあります。変化が見られたら、問いかけを行うなど症状の有無を確認しなければなりません。

 家族による労働者の疲労蓄積度チェックリストという物があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/001084060.pdf

厚生労働省からダウンロードできるもので、心身の疲労の蓄積度を見ることができます。過去1か月においてどうであったかを確認できます。
疲労、ストレス症状、働き方と休養のチェック項目から総合判定を行います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 働く人のメンタルがおかしくなりやすいのは、長時間であったり休日出勤であることが多いです。周囲に気遣う姿勢があるか無いかで、大きく変わってきます。きちんと対応すれば、離職防止にもつながります。

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