絶対悲観主義

 おはようございます。
 本棚を整理していたら以前読んでいた『絶対悲観主義』に再会。著者は一橋ビジネススクール教授の楠木建さん。

 「絶対悲観主義」って何だろうか?
 楠木さんによると

 フツーの人にとってベストだと僕が思っている仕事への構え、それが「絶対悲観主義」です。「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもない」という前提で仕事をするーー

『絶対悲観主義』p3

 要は、自分に対しても他者に対しても、過度な期待はせずに自然体で過ごせという趣旨であると私は理解した。楠木さんは「この身も蓋もない真実を直視さえしておけば、戦争や病気のような余程のことがない限り、困難も逆境もありません」(p4)と説く。

 「余程のこと」とした「戦争」については後段の「戦時下の日記」で次のように述べる。

 戦争だけは勘弁してほしい。戦争を起こさないために、個人として世の中をどのように見て、何を考え、どう行動すればいいのか。

 戦時下の日記を読むと、時空を飛び越えて、「ああ、戦争はこうして始まり、世の中の人々はこういうふうに受け止め、戦時体制に組み込まれていくのか」ということが手に取るようにわかる。

 開戦までの人々の普通の生活、開戦直後の全国的な高揚感、そのあとの情報統制による漠然とした不安、空襲の衝撃と人間の驚くべき適応力ーー一日一日ゆっくりと戦争へ向けて動いていく世の中の雰囲気と、それを反映した書き手の心境の変化を追体験することができる。

前掲書、p56〜59

 戦争の悲惨さは申すまでもない。先日G7サミットが被爆地・広島で開催され、アメリカのバイデン大統領らG7各国の首脳たちが原爆資料館(広島平和記念資料館)を訪れた。また、明日6月23日の沖縄慰霊の日には県内外から多くの人が沖縄を訪れる。
 こうした被災地訪問や慰霊を通して、かつての悲惨な戦争を学習し、追体験し、心に刻み、2度と同じことを繰り返さないことは、私たち世代の務めであると思うが、「どうしてそのような戦争になってしまったのか?」ーーそのプロセスを知ることが必要だと、楠木さんの『絶対悲観主義』の一節を通じて考えた。

 私たちが日々何気なく書いている日記やこうしたブログが、かつて戦時下で書かれていた「日記」の再現にならないように、過度な楽観や悲観に陥らず、淡々と現実を直視していければと思う。

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