「卒業証書がinstagramに」筆耕者が個人アカウントに投稿教育庁から委託管理の注意喚起
個人情報保護の意識をアップデートしましょう
教育庁から「都立高等学校における個人情報の流出について」の報道資料が発表されました。
SNSに自分の卒業証書がアップされていて、学校に問合せをしたようです。
教員が個人アカウントに生徒の卒業証明書でも無断でアップをしたのではないようです。
SNSが全盛となってから10年経ちます、教員も個人アカウントのSNSに生徒に関する写真を投稿したら大問題になることはわかっているようです。
筆耕者という証書に名前を書く委託先業者の方の個人アカウントにアップしたようです。
ここは想像ですが、卒業証書に筆書きした自分の作品を「どうだ綺麗にできただろう。」と「映えの良いものをアップしておこう」としたのでしょう。
この学校の卒業証書は氏名と生年月日が記載されているようで、日本で月間3300万人いるInstagramに投稿され、何人のアクセスかは不明ですが閲覧されてしまいました。
SNSに公開された状態は個人情報の流出にあたります。その画像データがスクリーンショットされているかどうかは関係ありません。情報は目にしたときには取得されていると考えられます。誰がみたか分からない状況も流出になります。
筆耕者は、卒業証書の生徒4名とはおそらく面識もないでしょう。もしも、生徒4名が目の前にいて、「卒業証書を書くから見てて、ほら、凄いできでしょう。ねえ、凄い良い出来なので、Instagramにアップして良いかな?」と尋ねたとしたら。
「おじさん。なんで、知らない人に氏名と生年月日の個人情報を晒されないといけないの。ありえないんだけど。」と教えてくれたかもしれません。
都立高の教員も卒業証書の手配をした筆耕者が個人アカウントに投稿するなんて想像してもいなかったでしょうから、匿名の通報を聞いて事実確認してがっくりしたことと思います。
個人情報保護は民法の不法行為にもなります。使用者責任があります。卒業証書の筆書きは教員がしても良いですが、筆書きが綺麗な筆耕者に委託しても構いません。その筆耕者が卒業証書に筆書きする以外にその個人情報を利用をする目的外利用や今回のような第三者提供をした不法行為について監督責任があります。
発注者である都立高校の監督責任で、都立高校を監督している教育庁にまで責任が及ぶのです。
委託先が個人情報保護できるかどうか事前に評価することも監督責任の範囲です。そして、業務委託契約時に個人情報保護の覚書などもあります。
民間企業の例でいえば、名刺の作成のためのデータを印刷会社に委託する際に個人情報保護ができている事業者を探すのと似ていると思います。印刷業では、顧客の個人情報保護のためプライバシーマークを取得している事業者も多く、印刷関連のプライバシーマークの審査機関もあります。
筆耕者が個人情報保護の意識が希薄だったのは何故なのかは、報道資料からはわかりません。
筆耕者は、発注元の都立高校から投稿の確認と削除要請をされました。本人はおそらく高校に謝罪はしていると思います。都立高校から生徒の保護者に謝罪がされました。都立高校から教育庁に報告され、教育庁から事情聴取があり、報道発表がされました。そして、全高校に注意啓発がされています。
SNSの炎上とまでなっているか不明ですが、バイトテロのようになってしまっています。
個人アカウントに業務関連の情報をアップすること自体が、情報漏洩でそこに個人情報があれば個人情報漏洩です。
SNSは、芸能人などのプライベートの情報を業務のために公開している人たちが互いにビジネスとして個人アカウントを利用しています。芸能人の人たちのSNSの利用は、一般人のSNSよりもかなり難易度が高いのですが、一般人の我々は彼らにあこがれても良いですが真似をして仕事に関係したものを個人アカウントに公開してはいけません。
個人アカウントを業務に利用させようとする企業あれば、それはそれで企業としてもリスクがあります。
自分が書いたよくできた卒業証書を自慢したかっただけかもしれませんが、それならば世の中に存在しない架空の人の名前と生年月日を利用してあげれば問題ありません。(実在している人に偶然あたったら問題になると思います。)
自分に依頼してきた学校とそこに通う生徒の人がいることを考えて、卒業を予定している学生が知らないおっさんのSNSに投稿されて、氏名や生年月日を公開されたらどう思うかなどの相手の気持ちを考えることができれば、してはいけないと気づくはずです。
相手の気持ちを想像してみることはパースペクティブテイキングといいます。プライバシー問題はパースペクティブテイキングが欠如しているとおこります。リスクを予想する思考もこれからの時代は必要です。