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アビダンマッタサンガハまとめノート

第一義
 所縁を知る本質、認識するはたらき、機能 「知ること」 物質と生物
  を区別するはたらき
心所 心に相応して生じる本質、認識と一緒に生まれる感情、受・想・行 
 例えば冷熱の温度などによって変化する本質・物質
涅槃 すべての苦の静寂という本質

             

 Ⅰ. 摂 心 分 別


  心の主体としての心法を説いたもの 

欲界心54
  欲界に入って在る心 欲界心は眼耳鼻舌身の世界「三次元の心」「五根
 を通るから欲が生まれる」

不善心 12 

 喜びを倶ない悪見に相応して色を対象として、又声・香・味・触・法を対
 象とし、又彼彼より生起する 貧(貪欲)・瞋(怒り)・痴(無知)によ
 って起こる心

貪根心 8  貪と一緒にある心 
 貪りとは見て「抵抗が生まれないこころ」「楽しい」「見たい」というこ
 ころ 見るもの聞くもの味わうものなどの対象を心に「受け入れる・取
 る・離れない心」自分の感覚で測ること
(悪)見とは意見・概念・立場・考え方「無常を知らない」「これでないと
 いけない」としがみつく心

 喜倶悪見相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 喜倶悪見不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 捨倶悪見相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 捨倶悪見不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ

 行(サンカーラ) この場合はたらきかけ・活気づけるエネルギー
 無行  自律的ともいうべきであって、そこに自他の努力を伴うことなく
  自然に行為することである 充電しなくてもよい心・行が充分にある心
  で簡単に現れる心 鋭い心・はたらきかけがない
 有行  他律的ともいうべきであって、自他の努力を伴うことによって初
 めて行為することである 充電が必要になった心・行が弱い心で衝動で現
 れる心 鈍い心・はたらきかけがある
 喜倶 喜びを感じる
 捨倶 喜び悲しみもなく、「苦も楽もない平静な心」

(1) 欲界有因第一不善心・喜具悪見相応無行心
 喜びながら無常を常と、苦を楽と、無我を我と見るなど悪見に相応して、
 色・声・香・味・触・法の六所縁のいずれかを対象として、意識界に自主
 的に起こる貪心 預流道智により捨断される
(2)欲界有因第ニ不善心・喜具悪見相応有行心
 上記(1)と同じで、他人に勧められるなど他律的に起こる点が異なる
 預流道智により捨断される
(3)欲界有因第三不善心・喜具悪見不相応無行心
  ただ喜びながら悪見に相応せず、六所縁のいずれかを対象として意識界
  に自主的に起こる貪心 阿羅漢道を得た聖者には生じない
(4)欲界有因第四不善心・喜具悪見不相応有行心
  上記(3)と同じで、他律的に起こる点が異なる 阿羅漢道智により
  捨断
(5)欲界有因第五不善心・捨具悪見相応無行心 
 平静(捨)にして悪見に相応して六所縁のいずれかを対象として意識界に
 自主的に起こる貪心 預流道智により捨断される
(6)欲界有因第六不善心・捨具悪見相応有行心
  上記(5)と同じで、他律的に起こる点が異なる 預流道智により捨断
 される
(7)欲界有因第七不善心・捨具悪見不相応無行心 
 平静(捨)にして悪見に相応して六所縁のいずれかを対象として意識界に
 自主的に起こる貪心 阿羅漢道にて捨断される
(8)欲界有因第八不善心・捨具悪見不相応有行心
 上記(7)と同じで、他律的に起こる点が異なる 阿羅漢道にて捨断され
 る

瞋根心 2  瞋恚相応心 必ず憂の心と相応する
 憂とは心が好くない・暗い・楽しくない・イヤだという暗いこころ
 瞋とはぶつかる・反対する・否定する・拒否する 認識すると同時にその
 対象自体を否定したくなる、それが瞋恚・怒り 

 憂倶瞋恚相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
(9)欲界有因第九不善心・憂倶瞋恚相応無行心
  憂いを伴ない怒りに相応しながら六所縁のいずれを対象として自律的
 に直接生き物を殺したり叩いたり、悪口・怨恨・嫉妬をしたりする場合に
 生じる瞋恚心 不還道智にて捨断される
(10)欲界有因第十不善心・憂倶瞋恚相応有行心
  上記(9)と同様であるが過去の他人の無礼を後日になって思い出し、
 これを怒り又他に勧められて殺生するなど他律的な点が異なる 不還道智
 にて捨断される    

痴根心 2  
 痴とは無知  疑とは理解を拒む  悼挙とは混乱状態
  捨倶疑相応のものが一つ、
  捨倶掉挙相応のものが一つ

  これら2つとも極愚心という(愚痴の上にも愚痴な心)

(11)欲界有因第十一不善心・捨倶疑相応心
  捨を倶ない山宝・善悪報果・三世因果・四諦・縁起の道理に対する疑問
 に相応して六所縁のいずれかを対象として意識界に起きる極めて強い愚痴
 心 不還道智にて捨断
(12)欲界有因第十二不善心・捨倶悼挙相応心
  捨を倶ない瞑想の修道の障害となる心の浮つき、騒ぎ落ち着かない悼挙
 に相応して六所縁の中のいずれかを所縁として意識界に起きる不善心 12
 種の不善心の中で中でこの悼挙だけは悪趣地に結生する要素とはならない
 のは見所断でなく悪趣の因とならない修所断であるので、阿羅漢智にては
 じめて捨断される

無因心 18

 因とは貪・瞋・痴と不貪・不瞋・不痴のどれかを持つもので、過去の結果
 として享受するだけで、善悪の因になるものでない心つまりカルマは作ら
 ない 機能だけで善悪に関わらない

不善異熟心 7 悪い心で何かした場合に結果として受ける心
 捨倶の眼識、捨倶の耳識、捨倶の鼻識、捨倶の舌識、苦倶の身識、
 捨倶の領受心、捨倶の推度心

(13)欲界無因第一不善異熟心・捨倶不善異熟眼識
  過去に殺生・盗み・悪口・邪淫などの欲界不善業を積み重ねた結果によ
  り色を所縁として眼識によって色を認識する時に不苦不楽の捨を倶なっ
  て意識界に生起する異熟心、嫌なものを見たときに生ずる心
(14)欲界無因第ニ不善異熟心・捨倶不善異熟耳識
  過去に欲界不善業を行い積み重ねたため声を対象として、耳根によって
  声を認識する時に捨を倶なって耳識界に起こる異熟心、嫌なものを聞い
  た時に生じる心
(15)欲界無因第三不善異熟心・捨倶不善異熟鼻識
  過去に欲界不善業を行い積み重ねたため香を対象として、鼻根によって
  香を認識する時に捨を倶なって鼻識界に起こる異熟心、嫌なものを嗅い
  た時に生じる心
(16)欲界無因第四不善異熟心・捨倶不善異熟舌識
  過去に欲界不善業を行い積み重ねたため味を対象として、舌根によって
  味を認識する時に捨を倶なって舌識界に起こる異熟心、嫌なものを味わ
  った時に生じる心
(17)欲界無因第五不善異熟心・苦倶不善異熟身識
  過去に欲界不善業を行い積み重ねたため触を対象として、身根によって
  触を認識する時に苦を倶なって身識界に起こる異熟心、苦痛や嫌なもの
  に触れ生じる心
(18)欲界無因第六不善異熟心・捨倶不善異熟意界・領受心
  過去に欲界不善業を行い積み重ねたため色・声・香・味・触の五所縁の
  いずれかを対象として捨を倶なって前記の五識と異なる心基を所依とし
  て意界に生起する感受領受心 不好所縁が現れれば領受作用する
(19)欲界無因第七善異熟心・捨倶不善異熟意識界・推度心
  過去に欲界不善業を行い積み重ねたため色・声・香・味・触・法の六所
  縁のいずれかを所縁として認識する時に捨を倶ない心基を所依として意
  識界に生起する不好所縁が現れれば推度作用をする。欲界悪趣地の有情
  はこの異熟意識界によって結生する、又有分・死・彼所縁作用もなす

無因善異熟心8  過去の欲界善業の報果(結果)えられた心 無因とは貪
         因・瞋因・痴因・無貪因・無瞋因・無痴因がない意味 

 捨倶善異熟の眼識、捨倶善異熟の耳識、捨倶善異熟の鼻識、捨倶善異熟の
 舌識、楽倶の身識、捨倶の領受心、喜倶の推度心、捨倶の推度心

  
(20)欲界無因第一善異熟心・捨倶善異熟眼識
  過去に欲界善行を行い積み色を対象として色を見る時、捨を倶なって眼
  識界に起こる異熟心
(21)欲界無因第ニ善異熟心・捨倶善異熟耳識
  過去に欲界善行を行い積み声を対象として音を聞く時、捨を倶なって耳
  識界に起こる異熟心
(22)欲界無因第三善異熟心・捨倶善異熟鼻識
  過去に欲界善行を行い積み香を対象として香を嗅ぐ時、捨を倶なって鼻
  識界に起こる異熟心
(23)欲界無因第四善異熟心・捨倶善異熟舌識
  過去に欲界善行を行い積み味を対象として味をなめる時、捨を倶なって
  舌識界に起こる異熟心
(24)欲界無因第五善異熟心・楽倶善異熟身識
  過去に欲界善行を行い積み触を対象として認識する時、楽受を倶なって
  身識界に起こる異熟心
(25)欲界無因第六善異熟心・捨倶喜異熟意識界・領受心
  過去に欲界善行を行い積み色・声・香・味・触の五所縁のいずれかを対
  象として捨を倶なって前記の五識と異なる心基を所依として善異熟の五
  識によって認識された所縁を意界において領受する
(26)欲界無因第七善異熟心・善倶喜異熟意識界・推度心
  過去に欲界善業の結果として色などの六所縁のいずれかを対象として、
  又 眼等などの五門において好所縁が現れた時、善を倶ない意識界にお
  いて推度心が生じる、彼所縁作用もなす
(27)欲界無因第八善異熟心・捨倶喜異熟意識界・推度心
  過去に欲界善業の結果として色などの六所縁のいずれかを対象として、
  又眼等などの五門において好所縁が現れた時、捨を倶ない意識界に推度
  心が生じる。善趣因者や不具・白痴・などの有情の結生など結生・有・
  推度・彼所縁・死の五つの作用をなす

無因唯作心 3 はたらきだけでカルマを作らない心
 捨倶五門引転心、捨倶意門引転心、喜倶の笑起心

(28)捨倶無因唯作意界・五門引転心
  五感(五根)の前に現れた色・声・香・味・触のいずれかを対象とし
  て、善でもなく、又業の異熟でもなく不苦不楽の捨を倶なって意界に生
  起する。
  引転心とは、潜在意識と表面意識との間の仲介をする作用である。五所
  縁のいずれかが五感の前に現れると有分心(潜在意識あるいは夢を見ず
  に熟睡している状態)の流れを止めて有分心に注意喚起(=引転作用)
  をする。その直後に五識(見・聞・嗅・嘗・触)のいずれかが生起す。
 この五識が生起する条件に次の三つがある。
  ① 根が破壊せず丈夫である。
  ② 所縁が前に現れる。
  ③ 意作がある。
(29)捨倶無因唯作意識界・意門引転心
  喜でもなく、不善でもなく、又業の異熟でもなく、不苦不楽の捨を倶な
  って意識界に生起する 五門においては確定心となり、意門においては
  引転心となる即ち、前者は五門作用においての認識作用、有分→五門引
  転→五識→領受→推度→確定→速行→彼所縁→有分の場合の確定作用であ
  る。後者は意門作用における有分→意門引転→速行→彼所縁→有分の中
  の意門引転作用である。
(30)喜倶無因唯作意識界・笑起心
  阿羅漢だけに起きる。意識界において、この心により喜悦する

(28)((29)はすべての生命に関係する
30で不善心と呼ぶこともある

 

欲界浄心 24

大善心 8  欲界における福善である布施・持戒・止観の修習などの善行
      をおこなう心(行為の心)欲・色・無色・出世間の善心中、最
      も多いから大善心という。智慧を伴うかで分けるのがポイント
 喜倶智相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 喜倶智不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 捨倶智相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、 
 捨倶智不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、

(31)欲界有因第一善心・喜倶智相応無行心
  知恵のすぐれた人になりたいと念じ自ら喜びながら智恵に相応して欲界
  の布施・持戒・止観の修業などの善行を行う時六所縁のいずれかを対象
  として意識界に起こる真の善心。無貪心・無瞋因・無痴因を有する
(32)欲界有因第ニ善心・喜倶智相応有行心
  上記(31)と同様であるが、他律的な点が違う、無貪心・無瞋因・無痴
  因を有する
(33)欲界有因第三善心・喜倶智不相応無行心
  善も不善もしらず知恵がまだ発達しない幼児が父母の布施する姿を見
  て、人真似しながらも自ら喜びつつ善行を行う時に六所縁のいずれかを
  対象として意識界に起こる心 無貪心・無瞋因を有する
(34)欲界有因第四善心・喜倶智不相応有行心
  父母から「布施せよ」「比丘を礼拝せよ」など他律的に勧められて喜び
  ながら善行を行う時六所縁のいずれかを対象として起こる心、無貪心・
  無瞋因・を有する
(35)欲界有因第五善心・捨倶智相応無行心
  平静(捨)を倶なって智恵に相応して欲界の布施・持戒・止観の修習な
  どの善行を自主的に行う時、六所縁のいずれかを対象として意識界起こ
  る真の善心、無貪心・無瞋心・無痴因を有する
(36)欲界有因第六善心・捨倶智相応有行心
  上記(35)と同じ 他律な点が異なる 無貪心・無瞋因・無痴因を有す
(37)欲界有因第七善心・捨倶智不相応無行心
  上記(34)とは異なり自律的で捨倶 無貪心・無瞋因・を有する
(38)欲界有因第八善心・捨倶智不相応有行心
  上記(37)と異なり他律的 無貪心・無瞋因・を有する

   
大異熟心 8  欲界有因異熟心 (次生の生まれを決める心)過去の欲界
     善業の報果(結果)として欲界六天界や人間などの欲界善趣地の
     基礎心となって作用する。 生まれたとはこの世に心が現れたこ
     と、心の波が現れたこと、その現れた心が異熟心、過去のカルマ
     の結果
 喜倶智相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 喜倶智不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 捨倶智相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、 
 捨倶智不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ

(39)欲界有因第一善異熟心・喜倶智相応無行心
  過去において智恵のすばらしい人になりたいと感じ、欲界の布施・持
  戒・止観の修養などの善行を欲界有因善心第一善心によって行い積み重
  ねた結果、六所縁のいずれかを対象として喜びながら智恵に相応して自
  主的に認識する時意識界に起こる異熟心 三因凡夫の結生・有分・彼所
  縁・死心の作用をなす
(40)欲界有因第ニ善異熟心・喜倶智相応有行心
  上記(39)と同様であるが他律的な点が異なる 三因凡夫の結生・有
  分・彼所縁・死心の作用をなす
(41)欲界有因第三善異熟心・喜倶智不相応無行心
  過去の欲界有因第三善心による善業の結果として六所縁のいずれかを対
  象として喜を倶ない智恵に相応せずに自主的に認識する時、意識界に起
  こる異熟心 ニ因凡夫の結生・有分・彼所縁・死心の作用をなす
(42)欲界有因第四善異熟心・捨倶智相応有行心
  過去の欲界有因第四善心による善業の結果として六所縁のいずれかを対
  象として喜を倶ない智恵に相応せずに自主的に認識する時、意識界に起
  こる異熟心 ニ因凡夫の結生・有分・彼所縁・死心の作用をなす
(43)欲界有因第五善異熟心・捨倶智相応無行心
  過去において智恵のすばらしい人になりたいと念じ、欲界の布施・持
  戒・止観の修習などの欲界有因第五善心によって行い積み重ねられた結
  果、六所縁のいずれかを対象として不苦不楽の捨を倶ない智恵に相応し
  て意識界に自律的に生起する異熟心(39)とこの異熟心が特に勝れてい
  るといわれる 三因凡夫の結生・有分・彼所縁・死心の作用をなす
(44)欲界有因第六善異熟心・捨倶智相応有行心
  過去の欲界有因第六善心による善業の結果として六所縁のいずれかを対
  象として捨を倶ない智恵に相応して意識界に他律的に起こる異熟心 三
  因凡夫の結生・有分・彼所縁・死心の作用をなす
(45)欲界有因第七善異熟心・捨倶智不相応無行心
  過去の欲界有因第七善異熟心による善業の結果としての六所縁いずれか
  を対象として捨を倶ない智恵に相応せず意識界に起こる異熟心 ニ因凡
  夫の結生・有分・彼所縁・死心の作用をなす
(46)欲界有因第八善異熟心・捨倶智不相応有行心
  過去の欲界有因第八善異熟心による善業の結果としての六所縁いずれかを対象と
   して捨を倶ない智恵に相応せず意識界に起こる異熟心 ニ因凡夫の結
  生・有分・彼所縁・死心の作用をなす
 
大唯作心 8  欲界有因唯作心
 喜倶智相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 喜倶智不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、
 捨倶智相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、 
 捨倶智不相応のものは、無行が一つ、有行が一つ、

(47)欲界有因第一唯作心・喜倶智相応無行心
  智恵のすぐれた人になりたいと念じて欲界の布施・持戒・止観の修習な
  どの善行を身・口・意の三方面から喜びながら知恵に相応して自主的に
  行う時に、六所縁のいずれかを対象として意識界に生起する、善でもな
  く不善でもなく又業の異熟でもない真の唯作心
(48)欲界有因第ニ唯作心・喜倶智相応有行心
  上記(47)と同じだが他律的な点が異なる
(49)欲界有因第三唯作心・喜倶智不相応無行心
  阿羅漢が愚かな人々を救済する立場から方便としての程度の低い心状、
  例えば善悪を知らず智恵の発達も十分でない幼い子供が父母の布施する
  姿を見て、あるいは持戒や止観の修習の励む比丘の姿を見て人真似しな
  がら自ら喜を倶なって善行を行う時、六所縁のいずれかを対象として意
  識界に生起する、善でもなく不善でもなく又業の異熟でもない真の唯作
  心
(50)欲界有因第四唯作心・喜倶智不相応有行心
  阿羅漢が愚かな人々を救済する立場から方便として(47)(51)に比べ
  さらに低い程度の心状、例えば父母から「布施をせよ」「比丘を礼拝せ
  よ」と命じられる無知な子供、智恵が相応せず喜びながら他律的に善行
  を行う時、六所縁のいずれかを対象として意識界に生起する、善でもな
  く不善でもなく又業の異熟でもない真の唯作心
(51)欲界有因第五唯作心・捨倶智相応無行心
  八有因唯作心の中で(47)とこの唯作心が最も勝れたものである 欲界
  の布施・持戒・止観の修習などの善行を身・口・意の三方面から捨を倶
  ない智恵に相応して自主的に行う時、六所縁のいずれかを所縁として意
  識界に生起する唯作心
(52)欲界有因第六唯作心・捨倶智相応有行心
  上記(51)と同様ながら他律的な点が異なる
(53)欲界有因第七唯作心・捨倶智不相応無行心
  上記(49)と同様ながら捨倶の点が異なる
(54)欲界有因第八唯作心・捨倶智不相応有行心
  上記(53)と同様ながら他律的な点が異なる   

 結果を未来に引くことなく、又、業の結果として得られた異熟でもなく、ただ作用のみの無記心を唯作心という。
 凡夫や有学には、無明、渇愛随眠という、有(現世)と有(来世)を接ぐ働きをする湿潤(煩悩)があるから、来世に異熟をもたらすが、阿羅漢には、この湿潤が無い、このような心が唯作心

 

色界心 15

 瞑想の世界の範囲 まだ物質に依存する世界で心だけでなく喜びを身体
で味わう「心が何かを体験する」 

善心 5  色界善心 この善心を修することによって色界天に生じて楽を
     受ける 禅定を作ると生まれる心
 尋・伺・喜・楽・一境性と倶にある初禅善心
 伺・喜・楽・一境性と倶にある第二禅善心
 喜・楽・一境性と倶にある第三禅善心
 楽・一境性と倶にある第四禅善心
 捨・一境性と倶にある第五禅善心

(55)色界初禅善心
  色界初禅に生まれたいため修行をする中で、五欲や不善心を離れ、尋・
  伺があり、離から生じた喜楽があり、一境がある善心 概念・言葉は、
  はたらいている 心と身体で実際に感じている心 初禅天には六識の
  中、眼・耳・意識は存在するが、鼻・舌・身識はない 無貪因・無瞋
  因・無痴因の三因を有する
(56)色界ニ禅善心
  色界天に生まれたいため修行をする中で、意識界において尋と伺が静止
  して内心が浄まり精神が統一されて尋がなくなり伺があり定から生じた
  喜と楽があり、一境性がある善心 知識がはたらかなくていい・言葉が
  なくて済む状態 強引に言葉をつかうことが消える 無貪因・無瞋因・
  無痴因の三因を有する
(57)色界三禅善心 
  色界天に生まれたいため修行をする中で、意識界において尋と伺が静止
  して内心が浄まり精神が統一されて尋と伺がなくなり、定から生じた喜
  と楽があり、一境性がある善心 言葉を使わなくても概念的に捉えるこ
  とが消える  無貪因・無瞋因・無痴因の三因を有する 
(58)色界四禅善心
  色界天に生まれたいため修行をする中で、意識界において喜を離れて捨
  があり念があり世知があり身の楽を感受した聖者たちが「捨あり、念が
  あって楽に住すと説く境地に達し、一境性がある善心 「ああ、楽し
  い・気持ちいい」という状態が消える、ただ喜悦感だけがあり落ち着い
  て集中力がある 無貪因・無瞋因・無痴因の三因を有する 
(59)色界五禅善心
  色界天に生まれたいため修行をする中で、意識界において楽と苦とを離
  れ、すでに喜と憂を滅している故に不苦不楽にして、捨によって清浄と
  なり一境性がある善心 この第五善心はいろいろな神通の基礎禅となる
  喜悦感も消え集中力があり自分がいるだけ「なんだか、いるという感
  じ」 因・無瞋因・無痴因の三因を有する無貪 
   
 心所の中、尋・伺・喜・楽・一境性は、それぞれ禅支という、禅とは、禅支の集まりをいう、禅、禅支とは心所に対する名で、心に対する名ではない、禅と相応する心が禅心である

<図 1>
              尋 伺 喜 楽 一境性
         初 禅  ○ ○ ○ ○  ○
         第二禅  ✕ ○ ○ ○  ○
         第三禅  ✕ ✕ ○ ○  ○
         第四禅  ✕ ✕ ✕ ○  ○
         第五禅  ✕ ✕ ✕ ✕捨 ○      
 楽は五受の楽で心所にはない 第五禅で楽から捨に変わる
 初禅などの、初、第二などというのは、禅の進む段階を最初から順に呼ん
 だもの
  (1)尋 睡眠、無気力を滅し去り、所縁に対して精神を向かわせる
       しっかり考える
  (2)伺 疑を滅し去り、所縁を深く細かく思惟観察する 言葉なしに
       観察する そこに留める働きをする
  (3)喜 怒りを滅し去り、所縁を好む 喜び「ああ、楽しい」という
       肉体的な喜び
  (4)楽 悼挙、悪作、不安を滅し去り、所縁を楽しむ 喜悦 (受の
       楽)
  (5)一境性 貪欲、愛欲を滅し去り、所縁に精神を集中させる、五禅
       支の中心 集中力
 
異熟心 5  色界異熟心 色界初禅善心~第五禅善心を修習する中でその
      報果として、この異熟心が得られる、これらの異熟心が色界天
      に結生する 禅定の心で梵天に生まれ変わる心

 尋・伺・喜・楽・一境性と倶にある初禅異熟心
 伺・喜・楽・一境性と倶にある第二禅異熟心
 喜・楽・一境性と倶にある第三禅異熟心
 楽・一境性と倶にある第四禅異熟心
 捨・一境性と倶にある第五禅異熟心

(60)色界初禅異熟心
  色界初禅善心(55)を修習した果報として意識界に起こる 色界天の梵
  衆天、梵輔天、大梵天における有情の結生・有分・死心となる 三因を
  有する
(61)色界ニ禅異熟心
  色界ニ禅善心(56)を修習した果報として意識界に起こる 少光天、無
  量光天、発光天における有情の結生・有分・死心となる
(62)色界三禅善異熟心
  色界三禅善心(57)を修習した果報として意識界に起こる 少光天、無
  量光天、発光天における有情の結生・有分・死心となる 三因を有する
(63)色界四禅善異熟心
  色界四禅善心(58)を修習した果報として意識界に起こる 少浄光天、
  無量浄、光天、遍浄光天における有情の結生・有分・死心となる 三因
  を有する
(64)色界五禅善異熟心
  色界五禅善心(59)を修習した果報として意識界に起こる 広果天、不
  捨天、無熱天、善現天、無劣天における有情の結生・有分・死心となる
  三因を有する

唯作心 5  色界唯作心 阿羅漢たちが禅定を作った心
 尋・伺・喜・楽・一境性と倶にある初禅唯作心
 伺・喜・楽・一境性と倶にある第二禅唯作心
 喜・楽・一境性と倶にある第三禅唯作心
 楽・一境性と倶にある第四禅唯作心
 捨・一境性と倶にある第五禅唯作心

(65)色界初禅唯作心
  阿羅漢聖者が色界初禅を修し、その境地に入る時に意識界に生起する、
  善でもなく、不善でもなく又現世と来世を接ぐ業の異熟でもない唯作心
(66)色界ニ禅唯作心
  阿羅漢聖者が色界第ニ禅を修し、その境地に入る時に意識界に生起す
  る、善でもなく、不善でもなく又現世と来世を接ぐ業の異熟でもない唯
  作心
(67)色界三禅唯作心
  阿羅漢聖者が色界第三禅を修し、その境地に入る時に意識界に生起す
  る、善でもなく、不善でなく又現世と来世を接ぐ業の異熟でもない唯作
  心
(68)色界四禅唯作心
  阿羅漢聖者が色界第四禅を修し、その境地に入る時に意識界に生起す
  る、善でもなく、不善でもなく又現世と来世を接ぐ業の異熟でもない唯
  作心
(69)色界五禅唯作心
  阿羅漢聖者が色界第五禅を修し、その境地に入る時に意識界に生起す
  る、善でもなく、不善でもなく又現世と来世を接ぐ業の異熟でもない唯
  作心
 

 

無色界心 12

 「心が何かになる」
善心 4  無色界善心
 空無辺処善心、 識無辺処善心、 無所有処善心、 非想非非想処善心

(70)無色界第一善心・空無辺処善心
  四無色界天に生まれたいための修習をする中で、意識界においてあらゆ
  る色想を超越し有対想を滅し、諸々の想を意作しないので空無辺処想を
  倶え、第四禅心の楽倶の捨断の故に捨倶の第五禅を具足して住す 無色
  界の瞑想をする人は空に集中する(物質が「ない」状態を、観察する)
  それを空無辺処という 心はただ平静な状態、捨だけで喜悦感もない
  三因を有する
(71)無色界第ニ善心・識無辺処善心
  四無色界天に生まれたいための修習をする中で、意識界においてあらゆ
  る色想を超越し有対想を滅し、あまねく空無辺処を超越した故に識無辺
  処想を倶え、第四禅心の楽倶の捨断の故に捨倶の第五禅を具足して住す
  真空状態を想像したところで心の限りないはたらきが分かったので、真
  空状態という杖なしに登るような状態で前の心の状態(70)を杖にして
  瞑想する 三因を有する
(72)無色界第三善心・無所有処善心
  四無色界天に生まれたいための修習をする中で、意識界においてあらゆ
  る色想を超越し有対想を滅し、あまねく識無辺処を超越したため無所有
  処想を倶え、第四禅心の楽倶の捨断のため捨倶の第五禅を具足して住す
  なにも無いこという意味「ただ集中するだけで心が無辺状態になる心」
  三因を有する
(73)無色界第四善心・非想非非想処善心
  四無色界天に生まれたいための修習をする中で、意識界においてあらゆ
  る色想を超越し有対想を滅し、あまねく無所有処想を超越したため非想
  非非想処想を倶え、第四禅心の楽倶の捨断のため捨倶の第五禅を具足し
  て住す 非想「想がない状態」ものごとをなんでもかんでも認識してい
  るような状態ではない 非非想「非想=死んでいる(認識しない)ので
  もない」 三因を有する

異熟心 4  無色界異熟心 無色界善心の報果として意識界に生起する、
      無色界天に生起した有情の基礎
 心空無辺処異熟心、識無辺処異熟心、無所有処異熟心、非想非非処異熟心

(74)無色界第一異熟心・空無辺処異熟心
  前記無色第一善心(70)による無色界善業を行い積みたる故に意識界に
  生起する異熟心 空無辺処の結生心となる
(75)無色界第ニ異熟心・識無辺処異熟心
  前記無色第ニ善心(71)による無色界善業を行い積みたる故に意識界に
  生起する異熟心 識無辺処の結生心となる
(76)無色界第三異熟心・無所有所異熟心
  前記無色第三善心(72)による無色界善業を行い積みたる故に意識界に
  生起する異熟心 無所有処の結生心となる
(77)無色界第四異熟心・非想非非想処異熟心
  前記無色第四善心(73)による無色界善業を行い積みたる故に意識界に
  生起する異熟心 非想非非想処異熟心の結生心となる

唯作心 4  無色界唯作心
 空無辺処唯作心、識無辺処唯作心、無所有処唯作心、非想非非処唯作心

(78)無色界第一唯作心・空無辺処唯作心
  善でもなく、不善でもなく、又業の異熟でもなく唯作なる現法楽住(身
  心の楽住健康)の無色界禅を修し、あまねく色想を超越し、有対想を滅
  し、諸々の想を意作しないため、空無辺処想を倶える 第四禅心の楽倶
  の捨断の故に捨倶の第五禅を具足して住す
(79)無色界第ニ唯作心・識無辺処唯作心
  善でもなく、不善でもなく、又業の異熟でもなく唯作なる現法楽住(身
  心の楽住健康)の無色界禅を修し、あまねく空無辺処を超越する故に、
  識無辺処を倶える 第四禅心の楽倶の捨断のため捨倶の第五禅を具足し
  て住す
(80)無色界第三唯作心・無所有処唯作心
  善でもなく、不善でもなく、又業の異熟でもなく唯作なる現法楽住(身
  心の楽住健康)の無色界禅を修し、あまねく識無辺処を超越するため、
  無所有処を倶える
   第四禅心の楽倶の捨断の故に捨倶の第五禅を具足して住す
(81)無色界第四唯作心・非想非非想処唯作心
  善でもなく、不善でもなく、又業の異熟でもなく唯作なる現法楽住(身
  心の楽住健康)の無色界禅を修し、あまねく無所有処を超越するため、
  非想非非想処想を倶える 第四禅心の楽倶の捨断の故に捨倶の第五禅を
  具足して住す
   <図 2>
    (所縁の別)    (無色界心)
     空所縁       空無辺処
     初無色識所縁    識無辺処
     無所有施設所縁   無所有処
     第三無色識所縁   非想非非想処
色界心15、無色界心12の上2界心を大心という
 色界禅では、下位の禅支を超えることによって上位の禅が生じるので、上位禅定がすすむ過程で五禅が一つ一つ減って行くので色界禅を支の超絶禅という<図1>参照
 無色界では、禅支を超える必要はなく、それぞれ下位禅の所縁を超えることによって上位の禅が生じ得るので、無色界禅を所縁の超絶禅という<図2>参照
 止修習禅  止業処を修習して得られる禅 
 道成就禅  前世で、八禅定を具足した人になりたいと願った人が道を得
       た時、世間禅も同時に得た場合の禅色界・無色界禅には、上
       記の2種類の禅が得られる

 

出世間心 8

 生命を乗り越えた世界 心の成長の終り

道心 4  世間道心
 預流道心、 一来道心、 不還道心、 阿羅漢道心

(82)出世間第一善心・預流道心
  涅槃の海に注ぐ八支聖道の流れに初めて到達した道と相応する心 欲界
  地に最低7回結生する 有身見(私があると見る)・疑(疑い)・戒禁
  取(儀式などにしがみつく)の三結を捨断する 「ザルで水を汲んでも
  意味はないと」納得する「じゃあ生きていきたいという気持ちを止めよ
  う」と落ち着く心 ヴィパッサナー瞑想で「とことん無常を観察しろ・
  無我を見ろ・苦を見ろ」ということ
(83)出世間第ニ善心・一来道心
  一来の道と相応する心、欲界に一度だけ結生する 貪(色貪・欲愛))
  瞋(強烈な怒り)・痴(無知)をさらに薄くさせる 一来道智と相応す
  る心
(84)出世間第三善心・不還道心
  不還の道と相応する心、欲愛を完全に遮断し、阿羅漢道に達しない場合
  でも梵天界には、必ず生まれる貪瞋という欲界の不善煩悩を完全に捨断
  した不還道智と相応  嫉(嫉妬)・慳(物惜しみ)が消える
(85)出世還第四善心・阿羅漢道心
  最高の悟りである阿羅漢智と相応する心 阿羅漢の道と相応する心、こ
  の道心を得た人は、一切の煩悩を捨断しどこにも結生せず無余涅槃に入
  る 色貪・無色界に対する欲・慢・推挙・無明が消える

果心 4  出世間異塾心
 預流果心、 一来果心、 不還果心、 阿羅漢果心

(86)出世間第一異熟心・預流果心
  預流道心を得た直後に意識界に起こる心
(87)出世間第ニ異熟心・一来果心
  一来道心を得た直後に意識界に起こる心
(88)出世間第三異熟心・不還果心
  不還道心を得た直後に意識界に起こる心
(89)出世間第四異熟心・阿羅漢果心
  阿羅漢道心を得た直後に意識界に起こる心

  

詳細心 121

 出世間心の詳細 40
預流道心 5
 尋・伺・喜・楽・一境性と倶にある初禅預流道心
 伺・喜・楽・一境性と倶にある第二禅預流道心
 喜・楽・一境性と倶にある第三禅預流道心
 楽・一境性と倶にある第四禅預流道心
 捨・一境性と倶にある第五禅預流道心

 
一来道心 5   不還道心 5   阿羅漢道心 5
 上記3道心も同様に各5種となる

預流果心 5、 一来果心 5、 不還果心 5、 阿羅漢果心 5
 も同様である
 欲界観と出世間の道・果とは、相の観察をするので相至心観察という
 道心は善心・果心は異熟心と見ればいい
<出世間五禅の起こり方>
 観を修して出世間道に達する場合、五種禅の中のどれか1種類のみが起こ
 る」
観観者  止の修習を経ないで初めから観のみ修習する人でこの場合初禅の預流道のみ得られる
禅を得た者  止の初めに修習して何らかの禅を得ている人で、自分が得た何れかの禅に入定し、その禅から出て、その禅に含まれる何れかの禅支に対して無常・苦・無我相を観ずる。


<表 1>の見方
界繋による分類、
 世間(欲。色・無色界の三界)
  欲界 欲の多い心の状態
  色界 諸欲は離れたが色(物質)的関心が残っている状態
  無色界 色的関心も無くなった純粋精神的な禅状の状態
  出世間 世間的な煩悩がなくなった悟りの心の状態

  善・不善・無記の三性による区別
 善心 三界。出世間のすべてに存在   不善心 欲界のみに存在
 無記(善・不善いずれでもないもの) 異熟 善悪業の報果(結果)
                   唯作 作用のみのもの、善・不
                                                                                善・異熟のいずれでもない                     
 無因心 有因心(一因・二因・三因)の対、因には、貪・瞋・痴・無貪・
     無瞋・無痴の6種がある
 浄心 89心より不善心と無因心を除いた残りの59心をいう、

五受(肉体的精神的感受作用またはそのえられた感性そのもの)による分類
憂受(精神的苦)喜受(精神的楽)苦受(肉体的感覚的苦)楽受(肉体的楽)捨受(不苦不楽受)

憂受 欲界・不善の瞋根心(無行と有行) 苦受 欲界不善異熟の身識のみ
楽受 欲界無因善異熟の身識のみ   喜受と捨受 三界出世間の不善・
                         喜・異熟・唯作の
                         すべてに存在する

分類の基準
 (a)六識に意界を加えた七識界(七識界門)眼識界2心・耳識界2心・鼻
    識界2心・舌識界2心・心識界2心・意界3心(五門引転心・領受心)
    ・意識界76心
 (b)三界・出世間という界繋により、色界を5種禅、無色界を4種、出世      
    間を4向4果に区分する(四界繋門)
 (c)心を善・不善・無記に分かち、無記を異熟と唯作に区分する(三性
    門)
 (d)心を憂・喜・苦・楽・捨の5受によって分類する(五受門)
 (e)心を無因・一因・二因・三因の別によって分ける(六因門)

(a)六識および意界の七識とすることは原始経典以来の説だが、意界を別
  立てすることは原始経典では明示されていなかった。
(b)三界や出世間の界繋に分けるは、原始経典以来の説で、空間的地域的
  な世界を意味したものでなく、心の状態を指す。アビダルマになると善
  悪業とその報果が具体的に考察されるようになり89(121)心説となる
(c)異熟は、善悪業の報果(結果)で、前五識はすべて異熟、意識におけ
  る異熟は三界・出世間に存在するが、不善業の報果としての異熟は欲界
  にのみあり、善業の異熟は三界・出世間にある。出世間の異熟というの
  は、出世間の無漏の善としての四向(預流道乃至阿羅漢道)の報果(預
  流果乃至阿羅漢果)を指す
  唯作に2種ある(1)純粋の無記で認識作用に関係したもので、前五識を
  開導する五門引転と第六識を開導する意門引転(2)一切の煩悩を断尽
  仏陀や阿羅漢の任運無作の作用で、何等の報果をも求めることのない無
  所有の行為
(d)五受(肉体的精神的感受作用またはそのえられた感性そのもの)によ
  る分類
憂受(精神的苦 欲界・不善の瞋根心(無行と有行)
喜受(精神的楽)三界出世間の不善・喜・異熟・唯作のすべてに見られる
苦受(肉体的感覚的苦)欲界不善異熟の身識のみ
楽受(肉体的楽 欲界無因善異熟の身識のみ
捨受(不苦不楽受)三界出世間の不善・喜・異熟・唯作のすべてに存在する
(e)因には善因・不善因・無記因がある
       善因  無貪・無瞋・無痴    不善因  貪・瞋・痴 
つまり心にはこれらの因があるもの(有因)と因がないもの(無因)とがある。有因の場合にはどの心に何れの幾種の因があるのかを示している。
 以上のような七識界、界繋、三性、五受、有因無因等の標準によって心を分類すると89種または121種となる。


            

Ⅱ. 摂 心 所 分 別

 心と相応するしるしを心所相という 心は水で心に溶けているものが心所と例えられる
同起 心が起こると同じに起こる
同滅 心が滅すると同じに滅する、色を区別するため・色と同時に起こる心
           もあるため
同所縁 心が所縁(対象)としているものを同じく対象とする、さらに色を
    区別するため同時に滅する色もあるので、同じ所縁であることも条
    件につける
同基 心が所縁(対象)とする基(浄色)を同じく所依とする、無色界の梵
   天界では例外

同他心所 13

(1)共一切心心所  どんな心にも必ず相応している心所 こころという
  現象がおこるため必要な心所 7つの心所の代表が変わるだけで実際に
  は7つ必ずある
1触(ソク) 所縁(感覚知覚の対象)に触れること(根・境・識の三有の和
  合による認識)触れること・強く触れること・強く触れた状態がある
  物質でなく心に生まれる反応
2 受(ジュ) すでに存在の気づかれた所縁の苦・楽・憂・喜・捨などを感受
  すること感覚 触れたことを「感じる」「感受性」「反応するはたら 
  き」「知識になる以前の情報を感じるステップ」
3 想(ソウ) 所縁を念想すること認識・相を作ることにより再認識する六触
  を縁として生じた受をその適用した感覚器官にもたらし、認識するこ
  と、表象、知覚・表象にあらわれたままの心像であり、未だ思惟や考察
  や智慧の作用は加らない 印・印象・区別 観じたものについて何か区
  別するための印のようなものが生まれること ものの「差」をとってい
  る
4 思(シ) 対象に心心所を発動させること 意志 業を作る最も重要な作用
  心理的観点において思が他の諸心所の作用を決定し、善悪の論理的観点
  においての心所は自らの結果を決定する 「こうしよう」「ああしよう
  」という何かエネルギー  心をもって行く原動力 行の別名 大工の
  頭領に例えられる
5 一境性(イッキョウショウ) 一所縁(一つの対象)に心を専注(集中)すること
  、それによってその所縁が時間空間において一定の位置を保ち心の散乱
  が静まる 集中力
  【三種の一境性】 
  三界の善・無記心と相応するもの(有漏定)
  出世間心と相応するもの(無漏定)
  不善心と相応するもの(邪定)

6 命根(ミョウコン) 心・心所を、維持・存続させること ここでは非色命根
  を指す
7 作意(サイ) 心・心所を警覚させ、所縁に向かわせ、心・心所と所縁を
  結合するはたらきをする 思念 注意 「しよう」とするはたらき・こ
  ころに情報を乗せること 心を持って行くだけ
  【三種の作意】
  所縁の境を支持するもの
  路を支持するもの 五門引転と同意語
  速行心を支持するもの 意門引転と同意語

(2)雑心所  浄心にも不浄心にも種々に相応する心所
1 尋(ジン) 所縁を思惟し、所縁に対して精神を向かわせること 心を乗っ
  けて行く 相応法(心)を対象に向かわせる(留め置く)こと 考想
  五色の所依である五基に対し五所縁は明確にとらえられるからその所縁
  に対して五蘊を向けさせる働きをする尋は不用であるため(13)~
  (17)・(20)~(24)に相応しない又初禅以外の諸禅には相応しな
  い。第ニ禅によって捨てられる
  何かを認識しようとする心に起こる論理性「すぐ出る理論」言葉で考え
  ること
  【四種の尋】
  ① 有漏の善尋:正思惟とも呼ばれる。欲界有因の善・異熟・唯作の二十
  四心及色界初禅の三心(善・異熟・唯作)と相応する。初禅と相応する
  尋、すべての安止定の出発点である尋、出家することを考える尋、観智
  と相応する尋などがある
  ② 無漏の尋 :同じく正思惟とも呼ばれるが、出世間四十心中の初禅に
  属する8心(表2参照)と相応する。涅槃を所縁とする尋
  ③ 無記の尋 :無因の意界・意識界の8心と相応する。善異熟3心(25
  )(26)(27)、不善心(18)(19)、唯作3心(28)(29)(30)と
  相応する尋
  ④ 不善の尋 :邪思惟とも呼ばれる。欲界十二不善心と相応する尋。貪
  と相応欲尋、瞋と相応する瞋恚尋、他人を害したい考える害尋などがあ
  る  
   ①②は所縁、③④は相応の違い
2 伺(シ) 所縁を引き続き、細かく繰り返し静かに思惟観察すること 考察
  「それについて、もうちょっとスムースに考える」 言葉にたよらず判
  断できること 乗っけた心をおさえる働き 尋が生じる全てと第ニ禅に
  相応する、尋と伺はセットで頭の中で「考えること」
3 勝解(ショウゲ) 所縁を決定し確知すること 信解 所縁を決定できないニ
  つの五識(20)~(24)(13)~(17)と疑倶心との11心には相応しな
  い 勝結「対象が心から離れないようにくっつく機能」 興味から面白
  い(楽しい)を抜かしたもの
4 精進(ショウジン) 努力すること 所縁をとらえる力が弱い五門引転心
  (28)・ニつの  五識・領受ニ心(25)(18)・推度心(26)(27)
  (19)の16心に相応しない 眼耳鼻舌身意で何か「しよう」というはた
  らき 
5 喜(キ) 所縁を好むこと 喜悦 禅定心であり欲界の善・不善、無記心中の
  喜倶心のすべてと相応する。憂・捨と性質が異なり、又精神的な楽に相
  応して、肉体的楽とは相応しない故、身識とも相応せず、さらに第四禅
  は喜を厭うためにこれとも相応しない
  【五種の喜】
  ① 小喜 身上の毛を立たせるような軽微なもの
  ② 刹那喜 瞬間電光の起きるが如く、時々起こる喜
  ③ 溢れる喜 海岸の波が反復するが如く、満ちた水泡の如く
  ④ 恍惚喜 力強く身体を持ち上げるが如く、空に跳ぶような強力な喜
  ⑤ 満たす喜 全身が喜をもって充満するほどの最強な喜.
6 意欲(イヨク) 所縁を欲求する性質を特相とし所縁を追い求める作用をもつ。
  即ち所  縁に対して、見たい・聞きたい・嗅ぎたい・味わいたい・触
  れたい・知りたいとおもうのが意欲である。 貪のような執着や粘りが
  伴っていない。志欲 知恵や涅槃をもとめたり、社会のために利を図
  る、 欲求する性質があるために、その性質の無い無因18心(表3参
  照)と疑・推挙心には相応しないやる気 

 (1)(2)を合わせて同他心所という 互いに性質を異(他)にする心所
  に同調する心所、「他人による心所」という意味で善にも悪にもなる

不善心所 14

(3)不善心所 どんな不善にも共通してある
1 痴(チ) 心所そのものに対する無知 愚痴 縁起流転の根本 無明・不正
  知と同義語 常に12不善心と相応する 普通の状態 ありのままを知ら
  ないこと
2 無慚(ムザン) 厚顔無恥 悪行をなすことを内心に慚じないこと内心への恥
  がない
3 無愧(ムギ) 無謀 悪行をなすことを外心(世間や他人)に怖れないこと
  外部に恥ない
4 悼挙(ジョウゴ) 心が浮き落ち着かないこと 散乱と同義語 混乱状態
   1~4共不善心所・基本的な不善心所・痴の四つ この心所が生まれた
  ら不善
   阿羅漢道智によって捨断される  
5 貪(トン)  欲 世間の所縁に執着して貪ること  8貪倶心(1)~(8)と
  相応する 触れた情報に逆らわずに簡単に受け入れる場合にある心所
  「楽しい」「掴む」「離れない」受け入れた情報に対して欲が生まれる
  色貧・無色貧は阿羅漢道智によって捨断される 
6 見(ケン) 邪(五蘊を我がもの)に見ること 見解 意見 概念 立場 考
  え方 4悪見相応(1)(2)~(5)(6)に相応する 間違った見方 
  預流道智によって捨断される
7 慢(マン) くらべる欲 「私」という錯寛した概念と他人をくらべる欲、計
  る、比べる 見と慢は互いに反発に合い相応しない 阿羅漢道智によっ
  て捨断される見と慢は互いに執する力が反発している為一緒に相応する
  ことはできない 比べたがる瞬間にだけ生まれる
   【三種の慢】
  増上慢 驕り高ぶること「他人と比べて私の方が偉い」とおもう
  卑下慢 卑屈に成ること「他人と比べて私の方がダメだ」とおもう
  同等慢 他人と同等だと思う「他人と同等だ」とおもう
   5~7欲の三つ 欲のこころ
8 瞋(シン) 怒り 激怒し、強暴なこと 過悪、過失、欠点、病素 2瞋恚心
  (9)(10)と相応する 拒否する刺激「受け入れたくない」と思う拒
  否反応 不還道智によって捨断される
9 嫉(シツ)  嫉妬 他人の栄誉や利得などを嫉むこと 2瞋恚心(9)(10)
  と相応する 
10 慳(ケン)  物惜しみ 自分の利得などを慳しむこと 生起するときその直
  接因の貪は滅しているので相応しない 嫉と反対方向 2瞋恚心と相応
  する 自分の持ち物を他人が使うのを起こることで欲とは異なる
  ①住処慳 ②家慳 ③利養慳 ④称賛慳 ⑤法慳 左記の5種の慳があ
  る
11 悪作(アクサ)  後悔 悪行をなした、善行をなさなかったと後悔すること
  不行儀、自分を責めること 2瞋恚心と相応する 預流道智によって捨
  断される
  8~11怒りの四つ 嫉と悪作と慳は一緒には生まれない 暗い感情で
  「対象が気に入らない」また共通して破壊力をもつ
12惛沈(コンチン) 心が沈み、鈍くなること 精神的に縮んでいるような状態
  12不善心中の5有行心(2)(4)(6)(8)(10)のみに相応する 預
  流道智によって(2)(6)・不還道智によって(10)・阿羅漢道智によ
  って(4)(8)が捨断される
13 睡眠(スイメン) 受などのあらゆる心所が寝くなり働きが鈍くなる 眠 12
  不善心中の5有行心(2)(4)(6)(8)(10)のみに相応する 預流
  道智によって(2)(6)・不還道智によって(10)・阿羅漢道智によっ
  て(4)(8)が捨断される、惛沈・睡眠は折に触れて生まれる・セット
  の心所
14 (ギ) 心が迷い決定しないこと 疑惑 疑倶心(32)と相応する 預流道智によって捨断される
 12~14無知の三つ

浄心所 25

(4) 共浄心所  一切の浄心と共通して相応する心所 89心の三界・出世間
       の一切善心及び有因の異熟・唯作心である59浄心と相応する
1 信(シン)仏法僧の三法や因果業報など仏教を信じること、信用、確信「明
  るい」心の活発な状態
2 念(ネン) 善に関することを念じて忘れないこと 記憶 有漏念と無漏
  念の2種有る 三界・出間の一切善心及び有因の異熟・唯作心である59
  浄心と相応する 気づくこと
3 慚(ザン) 悪行をなすことを、内心に慚(ハ)じること 自分を重んじて生
  起する 
4 愧(ギ) 悪行をなすことを、外心に怖れること 他人を重んじて生起
  する
5 無貪(ムトン) 世間の所縁に執着、貪らないこと
6 無瞋(ムシン) 激怒しないこと
7 中捨(チュウシャ) 心心所を各々過不足なく、一方に片寄ることなく働か
  せ、その 均衡を保つ 中正
8 身軽安(シンキョウアン) 五蘊の受・想・行の集まり(心所)、の安らかなこ
  と。この場合の身とは集合の意味 
9 心軽安(シンキョウアン) 心法(五蘊の識)の安らかなこと。身軽安は受・想・行
  の不安を静め、心軽安は心の不安(悼挙)を静める   
10身軽快性(シンキョウケショウ) 五蘊の受・想・行の集まり(心所)の軽ろやかなこ
  と
11心軽快性(シンキョケイショウ) 心法(五蘊の識)の軽やかなこと。
  身軽快性は心所か沈み、重くなった(惛沈・睡眠)のを解消させ、心軽
  快性は心が重くなったを解消させる   
12身柔軟性(シンニュウナンショウ) 五蘊の受・想・行の集まり(心所)柔らかいこ
  と。
13心柔軟性(シンニュウナンショウ) 心法(五蘊の識)が柔らかなこと。
  身柔軟性は心所法の頑(慳慢)であるのを解消させ、心柔軟性は心法の
  頑であるのを解消させる 日々成長するのに必要な柔軟性   
14身適業性(シンテキゴウショウ) 五蘊の受・想・行の集まり、即ち心所法が心所の
  作用に適していること 適しているかどうか
15心適業性(シンテキゴウショウ) 心法(五蘊の識)が心の作用に適していること。
  身適業性は受・想・行の不適応(貪慢)を止滅させ、心適業性は心の不
  適応を止滅させる。
16身練達性(シンレンタツショウ) 五蘊の受・想・行の集まり、即ち心所法が練られ
  、調えられていること。
17心練達性(シンレンダツショウ) 心法(五蘊の識)が練られ、調えられること。
   身練適性は、受・想・行の集まりの不調(不信)を消滅させ、心練達
  性は心の不調(不信)を消滅させる 何かをおこなう前に必要な練達性
  18身端直性(シンタンジキショウ) 五蘊の受・想・行の集まり(心所)、まっ直
  ぐなこと
   19心端直性(シンタンジキショウ) 心法(五蘊の識)のまっ直ぐなこと 芯が
  通っていること
   身端直性は、受・想・行の誑(キュウ)(自己の悪を隠蔽して他を詭(イ
  ツ)わること)・諂(自己に無い徳をあるように見せかけること)を止
  滅させ、心端直性は、心の誑(キュウ)・諂(テン)を止滅させる 

(5)離心所 悪を離れる 戒律を破るような状況になったとき生じる破らな
      い心
1正語(ショウゴ) 妄言(嘘)・両舌(噂)・悪口(キツイ言葉)・綺語(ムダ
  話)の4語悪行を離れて、正しい言語をなすことで、職業と関係しない
  語業 自分の言葉を操縦すること
2 正業(ショウゴウ) 殺生・盗み・邪淫の3身悪行を離れて、正しい行為をなす
  ことで職業と、関係しない身業(正しい行為)
3 正命(ショウミョウ) 妄語などの七身語悪行を離れて職業に従事することで、職
  業に関する身語業 正しい生き方・仕事
  【七身語悪行】①毒を作る②毒の売買③武器を作る④武器の売買⑤麻
  薬・酒の製造⑥麻薬・酒の売買⑦生き物の売買
    正見→智慧 正思惟→尋 正精進→精進 正念→念 正定→一境性
   出世間つまり瞑想して悟る心は三つ一緒にうまれ欲界の八善心の中で
  別々にまれる

(6)無量心所  四無量心(慈・悲・喜・捨)の心所の意味 限りなくひ
        ろげてよい感性慈悲喜捨の瞑想であえて作る善心所
1 悲(ヒ) 不幸な有情を所縁として、憐れむこと 他人の苦しみを見て本当
  に何かしてあげたくなる気持ち
2 喜(キ) 幸福な有情を所縁として、喜ぶこと 人々の幸福を見てああよか
  ったと思う気持ち慈は共浄心所の無瞋と捨は同じ心所中の中捨と同じな
  ので、悲と喜だけが揚げられている
  時々、別々に(同じに二つは生まれない)善心に現れる

(7)慧根心所  知る作用を司るもの
1 慧(エ) または、智、無痴ともいわれる 正しい真理を観える働き。三界・出
  世間の一切善浄心である59心から智不相の欲界善心の12心を除いた47心
  と相応する「あるがまま」を「あるがまま」にみる

 確定心とは意門引転心、意界の3心とは五門引転心及び2つの領受心(表3
参照)をいう

 嫉・慳・悪作、慢、惛沈・睡眠、悲・喜、正語・正業・正命の11心所は不決定相応の心所(或る時のみ相応する心所で必ず相応するのではない)という


表2の見方
 52心所と89心との相応を表示した心心所相応表
相応→心法や心所法が随伴倶起すること

○は決定心所 心所の相応心が生じるたびに常に相応する(41)
△は不決定心所 心所の相応心が生じるたびに常に相応するわけではない(11)
  嫉・慳・悪作はそれぞれの心所が生じているときは、或るときは互いに執する力が反発している為別々に生じ、或るときは所縁が同じ場合には相応する
  正語・正業・正命は欲界では八善心の中で別々に相応し、出世間心では同時に相応
 する
  悲・喜は有情施設を所縁とする或るときは相応し、ブッタなどを所縁とする或るときは相応しない
惛沈・睡眠は同時に或るとき(ある状態のとき、つまり心が沈んでいる時など)に相応する
慢は或るとき(ある状態のとき、つまり比べたがる瞬間)に相応する

             

Ⅲ. 摂雑分別

 受などの6要目を雑(マジ)えて摂(オサ)めるから、摂雑(セツザツ)という
 

1. 受の摂

  感受性・反応するはたらき・知識になる以前の情報を感じるステップが
  受、感じることが生命 体験のこと
三受  楽・苦・不苦不楽(捨受)これは、所縁の相違によってのもの
五受  楽・苦・喜・憂・捨 これは、根の違いによってのもの

2. 因の摂

 因果法則の因ではなく、善悪の区別をするために基準となる心所のこと
  貪・瞋・痴・無貪・無瞋・無痴(智慧)の6種 

3. 作用の摂

 結生 現世に生を受ける最初の刹那を指すもので、過去世と現世を結ぶはたらきをするところから、結生と言われる
 有分 結生以来の心相続である生有を絶やさせない因となる心(潜在的意識)が有分心である。
心の「生きているというはたらき」「存在の輪」「「有」は存在・生きる、「分」はただ繋ぐということ、ここに言う生有とは、業によって生起する世間異熟心と、それに相応する心所、及び業生色である。即ち、過去生が滅した直後に、業に支配された結生心が生じ、その後、それと同じ異熟心が表面意識(路心)作用が行われない限り、死に至るまで生滅相続する。このような潜在意識が有分心である。又生有の支分を形成するから有分と名づけられる
 引転 五門の前に、五所縁が現われるか、意門においてある対象が現われるかした場合に、潜在意識である有分心の流れを止めて、前五識、または意識を生起させる作用のこと。つまり、諸六識に対する注意喚起の作用を為して、有分心から表面的意識へと引き、転向させるのである。
  眼耳鼻舌身に何か情報が触れるとそちらに傾くその心
 見・聞・嗅・甞・触 五根と五境によって正じた五識の作用に他ならない 所縁の感覚的刺激に対してこの五識は善異熟と不善異熟のニ種を持つ
 領受 五識によって捉えられた所縁の好き嫌いを感受するのが、領受作用 
  「情報を受け入れて心が変わること」
 推度 領受心が感受した色などの五所縁を、好か不好かと推し度(ハカ)り考察する作用である。この段階ではどちらか一方に決定することはできない。 この働きをするのが善・不善の無因三異熟心である
  入った情報を分類する心、主観的な分類でなく条件反射のような分類
 確定 確かめ決定するもの、即ち好あるいは不好を、どちらかに確定する 知覚的な認識から知性的認識へとなる
「ああ、こうゆうものだな」と確定する心、例えば「好い音だと確定する」
 速行 五門引転の場合には、確定された所縁を選択処理する、即ち、善悪の意思作用を司る。意門作用の場合は、是非善悪の意志作用の他に、更に禅定・陣痛・滅尽定等の定作用、道・果等の出世間作用等も行う。 善悪の思が業となるためには必ずこの速行心が生起する必要がある
  確定した情報によって走る心、例えば目を閉じて音が耳に入って瞬間に「ああ、ドアが閉まった」と判断して終るなど
 彼所縁 彼(速行)の所縁を所縁とするのでこの名がある。速行の直後に生じる
  例えば大音響の音楽の後頭の中でガンガン鳴るなど
  現在生の終る刹那。現在生から離脱することがその作用で、業の勢力がある限り、有分心は有情の心相続を絶やさないよう働いているが、業の勢力が無くなると、有分心のこの働きは消滅して、結生・有分と同じ異熟心である死心に至る

4. 門の摂

  家などの門、入り口を意味する:
眼門・耳門・鼻門・舌門・身門・意門の6種
眼門・耳門・鼻門・舌門・身門 それぞれ、眼・耳・鼻・舌・身のことで
               色である
               これは、眼などを通して眼門路心などが生
               じる。
意門  色ではなく、有分心である。有分心に所縁が映じると、それに
    よって意門心が正じることから、一切の有分心を意門という
離門心 19心(表3参照)は結生・有分・死の作用をする時には五門に生じ
    ない、更にこれらの心は己自信が意門であるから、意門に起こると
    も言えないので、離門心という、つまり生まれ変わりは六門に関り
    がない、この離門心は、業・業相・趣相、以外の所縁を取らない。

5. 所縁(対象)の摂  

 縁られるものという意味。また、ここで楽しむとも解される その物・対
  象・現象を、認識を引き起こす原因・きっかけ・縁・起きあがる時の杖
  に喩えられる
   色所縁 色 
   声所縁 声 
   香所縁 香 
   味所縁 味 
   触所縁 触
   法所縁 浄色 眼・耳・鼻・舌・身心で考えなくては分からないも
          の「五感で感じない色でそれぞれの五感の機能」
       細色 慧眼で見て不明確なもの五感で直接認識不可能もの
          「直接認識可能な色以外の色」
       心  所縁を知る本質
       心所 心に相応して生ずる本質
       涅槃 すべての苦の寂滅という本質
       施設 心中に表れる概念
    (法とは「現象・ものごと」のこと、全て意門で認識する、五所縁
     以外のこと)
    
   意門心 現在所縁 今、この瞬間、生じ住し滅する間存在している
       過去所縁 現在所縁が滅し終わった時、その同じ所縁
       未来所縁 まだ生じない所縁
       離時所縁 施設と涅槃 三時を離れた所縁、即ち生・住・滅
            によって存するものではないので、過去・現在・
            未来とはいえない
         (三時とは 心、心所、色 。現在・過去・未来)
         (意門心とは 潜在意識、一切の有分心)
                      。  
   離門心 臨終の速行心の所縁は、色・声・香・味・触・法の6種の所
       縁で、この中のいずれかの所縁が六門によって捉えられる
       が、それらは生起に応じて,或る所縁は現在、或る所縁は過
       去、或る所縁は施設となる
 
     (業・業相・趣相  6種の所縁を論の用語でこうも言う)

     神変 色界第五禅の定が強くなって明瞭になると、これと相応
        して慧が神通の段階に達する、この後その所縁を所縁と
        する第五禅が神通という名で安止に達する、それと同時
        に化作などの結果が現われてくる、その化作することを
        神変という    

6.基の摂

    基になるものの意味、心心所は、眼などに基づき、それらを所依と
   して生起するからである 
  眼基 耳基 鼻基 舌基 身基 心基 の6種

  欲界  すべてが得られる、即ち、五根(浄色)をすべて見ている人は
      欲界にしかいない色界(無想有情天を除く) 
      3基(鼻・舌・身)がない (眼・耳・心のみある)
  無色界 6つの基色がすべて得られない

 五浄基 五識界は順に、一向に眼・耳・鼻・舌・身の五浄基に依止して生
     じる 10
 心 基 意界は五門引転1・領受2 3                  
    残りの意識界(推度心3・大異熟心8・瞋恚2・初道心1・笑心1・ 
    色界心15) 30

 無色の異熟4心は、心基に、依止することなく生じる
42心は心基に依止し、或いは、依止することなく生じる(時々)        
43心は五蘊地(欲界・色界)にのみ生じるので常に適当な基に依止している
                           (常に)






表3の見方
心の(有)(無)はそれぞれ有行・無行の意
心所   それぞれ各心法(89心)に相応する心所の数のみ(表2参照)記入した
受の摂  心法(89心)と五受との関係(p7参照)
因の摂  心法と有因・無因などの関係で因の種類により心心所を分類して摂めた(p7参
     照)
作用の摂 心法(89心の一々)が具体的心作用中のいかなる作用を分担するかの問題
    ( )については本p229とp27参照
門の摂  心法(89心)と眼などの六門との関係
所縁の摂 心法(89心)は何を所縁(対象)とするのかの関係
基の摂  諸識とその基(依り所・基礎・基盤)である諸根との関係

全体図です



             

Ⅳ. 摂路分別

 表面心(路心)による心作用を説いた摂
 路心 潜在心に対する表面心のことで、一刹那から一刹那へと絶え間なく生滅しつつ、一筋の道路のように相続するもの

六種の境生起
 五門
  極大所縁 大所縁 小所縁 極小所縁
 意門
  明瞭 不明瞭

生起→心の生じる様子 
 生起時における生起→五門引転・眼識・領受など順次それらは、六門に生
 じる
結生時における生起→結生・有分・死は、1種の心を以って為されるしかも、
 それは六門に生じないので離路と言われる                  
                     
1心刹那  
 心が1回生滅する時間(1弾指の1兆分の1程度)=3刹那(生・住・滅) 
色法の寿命  
 心刹那で計れば17心刹那(表色・相色を除く)
    生刹那・住刹那  心と同じ17心刹那
    滅刹那  49刹那(16心刹那と1刹那)

1. 五門路

 眼門の極大所縁路
(0) 有分が流れている 有分心とは過去の善悪の業の果報が現世において
   潜在意識として生起した心、ちょうど熟睡しているような状態を意味
   する。この有分の所縁は、過去の世の有情における臨終の速行が所縁
   とした業・業相・趣業の中の随一なものである。89心中の19異熟心が
   有分心となる。
【19有分心】
欲界無因捨倶不善異熟心・推度心(19)=悪趣地(地獄・畜生・餓鬼 阿修
  羅)に堕ちた悪趣無因者の有分心
欲界無因捨倶善異熟心・意識界・推度(27)=生来の不具・盲目・非男女の
  人間及び四大王天界の善趣無因有情の有分心。
欲界有因智不相応4異熟心(41)(42)(45)(46)=人間・欲界六天界のニ因者の有分心。
欲界有因智相応4異熟心(39)(40)(43)(44)=人間・欲界六天界の三
  因者の有分心。
色界第一禅異熟心(60)=凡衆天・凡輔天・大凡天の有分心
色界第ニ禅異熟心(61)=少光天・無量光天・発光天の有分心
色界第三禅異熟心(62)=少光天・無量光天・発光天の有分心
色界第四禅異熟心(63)=少浄光天・無量浄光天・遍浄光天の有分心
色界第五禅異熟心(64)=広果天・不捨天・無熱天・善現天・善見天・無劣
  天の有分心
   ※色界の無想有情天は無心であるため有分心がない
無色界第一異熟心(74)=空無辺処地の有分心
無色界第ニ異熟心(75)=識無辺処地の有分心
無色界第三異熟心(76)=無所有処地の有分心
無色界第四異熟心(77)=非想非非想処地の有分心
(1)1心刹那を過ぎ(色所縁は住位の時のみあるので1心刹那を過ぎた後に五門に現われ
    る)
<多心刹那を過ぎ>(眼色(眼根)、明るさ、色心所作用、作意の4つが、眼識の生じる条件であって不十分で、あればあるほど、色法が生じて眼門に現われるまで時間は多くなる)
2心刹那から15心刹那まで、種々の場合があり、大所縁、小所縁、極小所縁となる
住位に達した五所縁のみが五門に現れる
 (2)~(3)有分が動揺→有分心は、所縁として業・業相・趣相などを捉
     えているが、色などの所縁が五門に現われると、自己の所縁とし
     て正しく捉えておくことができなくなって動揺する(2心刹那)
<有分心相続>有情に路心が生じない時は、潜在意識である、所縁は直前の過去有における臨終の速行が所縁とした、業・業相・趣相の中どれかで、所縁の門が現われるとその度断続して路心相続が始まる(路に入る)そして、路心相続が終われば元の有分心相続の状態に戻る、即ち有分相続は連続して常に生じているので我々には意識されない、映画のフィルムが映写されるように
<過去有分>新たにあらわれた所縁が有分心と接触するが、それに対して有分心はまだ反応しない
<有分動揺と有分捨断> 最初の1心刹那が有分動揺(つまり有分心を動かすだけ)、次の1心刹那が捨断(つまり有分心を断つ)の様相を示す刹那であるので有分捨断という 
<五門と有分動揺の関係>鳥が木の枝に止まった時、木の下の地面に影が映るように、眼門に色所縁が現われると同時に意門にも現われ、心基(心臓の中にある)を所縁(対象)とする有分心が動揺する
<有分動揺が2心刹那を要する理由>勢いよく走った人が、2歩位は踏み出してしまうようなもの、寝ている人が瞬時に目が覚めるのではない。
  完璧に寝ている→動揺してなんとなく弱くなり→結構弱くなり寝てられ
  ない
(4)五門引転心が生じ、有分の流れを断って有分心を、表面的意識へと引
   き、転向させ(前五識を生起させ作用)生じ滅す (1心刹那) 
   善・不善・異熟がなく唯作のみ
     89心中の欲界無因捨倶唯作意識界(28)が五門引転の作用を行う
  「目が覚めて」(目に情報がぶつかる)ぶつかった場所に心が移動する 
(5)眼識(五根と五境によって正じた識)の作用生じ、滅す (1心刹那)
   好・中所縁に対して(20)が不好所縁に対して(13)が作用する 
  「目に入った」(移動した)振動が目に伝わる
<五識が起こる四つの原因>
    眼浄色 色所縁 光  作意   耳浄色 声所縁 空間 作意
    鼻浄色 香所縁 風界 作意   舌浄色 味所縁 水界 作意
    身浄色 触所縁 地界 作意
(6)領受(五識によって捉えられた所縁を感受)する受領心生じ、滅す(1
   心刹那)  
     好・中所縁に対して(25)が不好所縁に対して(18)が作用する
   「心が振動を受ける」はたらき、物質から感覚器官を通して心に振動
    が「伝わった」
    受領証  
(7)推度(領受心が感受した色などの五所縁を、好か不好かと推し度(ハ
   カ)り考察する作用)する推度心生じ、滅す (1心刹那)  極大の
   好所縁に対して(26)が極大の所縁に対して(27)が極大の不好所縁
   (19)が推度作用する
    前の心の振動を受けて次の心で違う振動を起こし「どんなものか」
   と推度する
(8)確定(推度心が考察した所縁を好・或いは不好か確かめ決定する)す
   る確定心が生じ滅する (1心刹那) 意門引転心である(29)が五
   門における確定作用をおこなう  
   異塾心なので自分ではコントロールできない、ここで喜。不喜を分け
   る(決定する) 解かった情報を「ああこんなものだ」と確定する
(9)~(15)速行(確定作用によって確定された所縁を選択処理する。即
     ち善悪の意思作用を司る)する (7心刹那) 善悪の一切はこの速行作用でおこなわれる
  「考える世界・妄想の世界」確定心と同じ心が速行心として走る
<29の欲界速行心>色を所縁とすることができるは、29の欲界速行心の何れかが生じる
縁により(1)如意作用→ 欲界8善速行心の何れか(2)非理作意→ 12不善速行心の何れか(3)阿羅漢→ 9唯作速行心の何れか 
 如意とは適切な理由・正しい原因・正当な理由 善悪業に一切はこの速行作用でおこなわれる
<多くは7回>時には6回、死や気絶する場合は5回などの場合もある
【人の種類による五門作用の速行29心】
 凡   夫=20心→善 心 8心(欲界喜倶4善心+欲界捨倶4善心)
          →不善心12心(欲界喜倶4不善心+捨倶6不善心+憂倶
           2不善心)
 預 流 と =15心→善 心8心(欲界喜倶4善心+欲界捨倶4善心)
 一来聖者   →不善心7心(欲界喜倶2不善心+欲界捨倶3不善心+憂倶2不
         善心)
 不還聖者 =13心→善 心8心(欲界喜倶4善心+欲界捨倶4善心)
         →不善心5心(欲界喜倶2不善心+欲界捨倶3不善心)
 阿羅漢聖者= 9心→唯作心5心(喜倶4唯作心+1笑起心)
          →唯作心4心(捨倶4唯作心)
 如何なる眼根にも律儀・不律儀は在しない。つまり、眼浄色によって念も忘念も生じない。更に、色所縁が眼の視野にはいって来る時、有分動揺→有分捨断→五門引転→眼識→領受→推度→確定作用をそれぞれ成就しつつ生じて滅する。その直後に速行心が速行する。その際、有分の時にも、引転などの時にも、律儀・不律儀は存在しない。ただし、速行の刹那において、もしそこに悪戒・忘念・無智・不忍辱・懈怠が生じたならば、不律儀がある。この時を眼根における不律儀であると言われる。
 確定された所縁の中で、善心における好所縁に対して喜倶の四善心(31)(32)(33)(34)が、好中所縁に対しては捨倶四善心(35)(36)(37)(38)が速行心として生起する。又、不善心における好所縁に対して喜倶の四貪欲心(1)(2)(3)(4)が速行心として生じ、不好中所縁に対しては捨倶の四貪欲心(5)(6)(7)8)をはじめニ瞋恚心(9)(10)やニ愚疑心(11)(12)が速行心として生起する。
 速行心は縁によって三種に別れる如意作という縁がある時、速行は欲界八善心(31)~(38)の中のいずれかが速行心として生じるのに対して、非理意作の縁ある時は十二不善心(1)~(12)
の中の何れかが速行心として生起する。また如意意作の縁により阿羅漢聖者には九唯作心欲界無因喜倶唯作意識界笑起心(29)・欲界有因8唯作心(47)~(54)の何れかが生起する
 確定された一つの所縁が好所縁であるか、不好所縁であるかは、その人の過去世における善悪業の積み重ねや本人自身の性格によって左右される場合が多いといわれる。詳しくは表2-2参照
(16)~(17)彼所縁(彼(速行)の所縁を所縁とするのでこの名がある)が生じる(2 心刹那) 
この彼所縁により速行作用による経験を保持する、即ち印象に残るということ
<速行に従う彼所縁>速行が終われば有分に堕ちるべきところを、8欲界大異熟心、3推度心の中の何れかが、速行心の後に従って彼所縁の作用をなす
(0).有分に堕ちる→2心刹那の彼所縁が滅すると路心相続が終わり、心相続は再び有分心相続になる、両者を比較すると、前者の心相続は表面的意識、後者の心相続は潜在的意識によるものである、この前者から後者の変化をいう。

大所縁による路
 彼所縁の生起に至るまでは不可能である程過ぎ去って現われて来た所縁。その場合速行の終わりに直ちに有分に堕ち彼所縁の生起はない

 <大所縁による眼門路>速行時分

最初の睡眠の状態        ⇒ 有 分          
マンゴ-の実が落ちた      ⇒ 所縁が五門に現れる     
その音に目を覚ます        ⇒ 有分動揺・有分捨断・五門引転
目を開いて実を眺める      ⇒ 五識の見るなどの作用    
実を手に取る          ⇒ 領受心           
実に触れる           ⇒ 推度心           
匂いを嗅ぎ熟していることを知る ⇒ 確定心           
その実を食べる         ⇒ 速行心           
口の中にマンゴ-の味が残る   ⇒ 彼所縁         
再び熟睡する          ⇒ 有 分            

大所縁による路
 彼所縁の生起に至るまでは不可能である程過ぎ去って現われて来た所縁。その場合速行の終わりに直ちに有分に堕ち彼所縁の生起はない


小所縁による路
 速行の生起に至るまでにさえも不可能な程、過ぎ去って現れて来た所縁。その場合には速行さえも起こらないから、2・3回確定心のみが生じ、その後、有分に堕ちる。

極小所縁による路
 確定の生起に至るまでさえも不可能なほど、過ぎ去って現れて来た、滅に近い所縁を極小所縁という、有分動揺のみあって路心の生起はない


2. 意門の欲界速行時分

 意門とは心だけで回転する場合
欲界における意門一般作用
 五門における認識とされた所縁をさらにくわしく考察・取捨・選択すらための五門作用が終わり有分にはいった直後に断起する意門作用
最初から意と法とに生じる法境を所縁とする意門作用

 明瞭所縁による路
(0) 有分が流れている 
(1) ~(2)明瞭な所縁が現れ有分動揺、捨断(2心刹那)
(3)意門引転心が潜在的意識である有分の流れを止めて、意識を生起させる、つまり注意   喚起の作用を為して、有分心から表面的意識が潜在的意識へと引き転向させる(1心   刹那)捨倶無因唯作意界(29)が有分心に対して意作(注意喚起)を行うことを意味する五門作用では捨倶無因唯作意識界(28)がその引転作用を行う
            <意識が起こる要素>
     心基(無色界を除く) 法所縁(五所円以外) 作意
(4)速行心(是非善悪の意志作用の他に、更に禅定・神通・滅尽定等の定作用、道・果等の出世間作用等も行う)が速行し (7心刹那)欲界の意門一般作用には29心を速行心として生起する
<29の欲界速行心>色を所縁とすることができるは、29の欲界速行心の何れかが生じる
縁により(1)如意作用→8善速行心(2)悲理作意→12不善速行心(3)阿羅漢には9唯作速行心が生じる
善悪業の一切は、この速行作用でおこなわれる
(5)彼所縁 異熟心が生じる(2心刹那)欲界有因八異熟(39)~(46)と欲界無因異熟意識界(19)(26)(27)の11異熟心
有分に堕ちる
  欲界における意門一般作用2種
   ○ 五門において認識された所縁(対象)をさらにくわしく考察・取
     捨・選択するため五門作用が終わり有分にはいった直後に継続す
     る意門作用
   ○ 最初から意と法とに生じる法境を所縁(対象)とする意門作用
     過去有分については物質と異なり比較の必要がないので過去有分
     の必要ない

 不明瞭所縁による路
速行の後、有分に堕ち彼所縁心生起がない


 明瞭・不明瞭は、意門における境の名づけ方、五門では所縁が意門では心が主となるので、所縁の決定のしかたが異なる。明瞭は鏡に写る像が清浄な時、不浄だと不明瞭となる様に心の状態が主として決定する。

 意門に所縁として現れるものは下記の10種がある
1.見たもの、 2.聞いたもの、 3見たもの・聞いたものの両者に関連したもの、4信じたもの、 5好きなもの、 6業相の考察、 7智審察の認定、 8業力・神通力、 9界の振動、神の授与 10智覚・開悟

 

3. 意門の安止速行時分

 禅の路、道の路
 明瞭・不明瞭の別がない→禅、道、果を得るため、地通などの業処を習得する場合には所縁が明瞭でなければ禅などを得ることはできないから、禅速行・道速行の生じる安止路所縁は、明瞭
 
 彼所縁の生起もない→欲界心の後にだけ彼所縁は生じるから、即ち大(上二界)と出世間の速行心だけが生じるので安止速行路には生じない

          近行定は、欲界  安止定は、色界禅定

 禅を得る状態に近づくと、地遍施設などの所縁が意門に現れて来て、上記のような心相続が展開する
 安止に入る直前の速行としては、意門引転心(29)の後、智相応の欲界心(31)(32)(35)(36)(47)(48)(51)(52)だけが生じる、また、安止路に入る場合に地遍などの止業処を修習すればその禅が得られ、次に出世間の道・果がえられる、つまり止観に導引されて(止観を修習することによって)ヨ-ガ者の心は安止定に達する、26の大界、出世間の速行心中の何れかが安止定になり得る。

 初禅を得た人が次の段階の第ニ禅を得たいと希望するなら、前の遍作相の段階から再び瞑想の修習をはじめなければならない、無色界禅定はすすむ場合も同様

 欲界速行から安止速行 
どの欲界速行から安止速行が期待されるか
喜倶心か捨倶心かの説明 ○(2心)→○(32心) ◎(2心)→◎(12心) 
阿羅漢になった人の場合 △(2心)→△(8心)  □(2心)→□(6心)
(表4参照)
三因凡夫や下三果の有学には32心と12心が安止する
無学(阿羅漢)には8心と6心が安止する
道の有学には1心刹那だけなので有学に入らない

4.彼所縁の決定

 (法則と考えてよい)
 異熟は不顚倒、速行は顚倒
 如何なる速行心の後に何故なる彼所縁が生じるかのことで、まず異熟心が善・不善・喜倶・捨倶心になるかは、所縁が好か不好かによる 
<中層の人による法>中層の人を基準
 好所縁 美しい色・声など
 極好所縁 得がたい仏陀や美人の色・声など
 不好所縁 大・小便・死体の色・声など
<異熟による法>異熟心によって区別する
 好所縁 速行が喜・捨・受であっても前五識・領受・推度・彼所縁は必ず
     善異熟心である
 極好所縁 仏・法・僧・仏塔などを見聞するなは前世の善業による善異熟
      心
 不好所縁 速行が喜・捨・受であっても前五識・領受・推度・彼所縁は必
      ず不善異熟心である
      外道が仏・法・僧・仏塔などを見聞するなは前世の善業による
      善異熟心だが見顚倒に
     より怒り瞋恚速行心が生じる
<門・時による別> 
 好所縁 寒い冬の火
 不好所縁 暑い夏の火
<自性と妄想による別>
 (自性による)好所縁 自性(本来)の好・不好所縁
 (妄想による)好所縁 妄想により顚倒した好・不好所縁

 
○ 異熟心は所縁により善・捨受との相応が決定しているので、これを異熟は不顚倒という 
 前世の業によって自性好所縁・極好所縁に出会うと必ず善異熟の善倶推度の彼所縁が生じる(前五識や領受には受による区別がない)
11の彼所縁のいずれかが生じる ○(18-11)(表4参照)

好所縁  善異熟   前五職・領受・捨倶推度・彼所縁(捨倶推度1.捨
                            倶大異熟4)
                   (27)(43)(44)(45)(46)
極好所縁 善異熟   前五職・領受・喜倶推度・彼所縁(喜倶推度1.喜
                            倶大異熟4)
                   (26)(39)(40)(41)(42)
不好所縁 不善異熟  前五職・領受・推度・彼所縁(捨倶推度1)
                   (19)
○ 速行心は所縁による受との相応がきまってないので速行は顚倒という
 阿羅漢はけして顚倒(ひっくりかえらない)することはないが、凡夫は顚
 倒する場合があるのでこういう。

 異熟も不顚倒、速行も不顚倒
  ’これは阿羅漢になった人の場合)

○ 唯作の速行心は所縁により極好所縁と出会うと喜倶唯作速行が生じその
  後5彼所縁の何れかが生じる、これを異熟も不顚倒という △(5-5)
  (表4参照)

○ 唯作の速行心は所縁により好・不好と出会うと捨倶唯作速行心が生じそ
  の後に6彼所縁心の中の何れかが生じるこれを速行も不顚倒という □
  (6-6) (表4参照)

好所縁  善異熟   前五職・領受・捨倶推度・(捨倶唯作速行)彼所縁
     (捨倶推度1.捨倶大異熟4)(27)(43)(44)(45)(46)
極好所縁 善異熟   前五職・領受・喜倶推度・(捨倶唯作速行)彼所縁
     (喜倶推度1.喜倶大異熟4)(26)(39)(40)(41)(42)
不好所縁 不善異熟  前五職・領受・推度・(捨倶唯作速行)彼所縁
     (捨倶推度1)(19)

 客有分による路
 憂倶速行心の後に捨倶彼所縁が生じ憂倶速行時分の場合には、捨倶有分心が生じる、これは憂倶は苦しいので喜受に従うことはできないので捨倶なら従うことができるそこで客有分の作用する捨倶推度心が生じる
 客有分とは、主有分に対する名で、自分の直前の路心が所縁とするものを所縁とすることができない場合、前に経験した何らかの欲界所縁を所縁として臨時に有分の作用をする捨倶推度心をいう
 所縁が不好所縁なら不善異熟の推度心、好所縁・極好所縁なら善異熟推度心が生じる瞋恚速行の後、彼所縁が生じない場合、過去の欲界所縁を取って捨倶推度心2が客有分の働きをする。

 喜倶大異塾心4で生まれた人が瞋恚速行の後、彼所縁が生じない場合、過去の欲界所縁を取って捨倶推度心2が客有分の働きをする。
 彼所縁が生じた場合は問題ない、彼所縁は捨倶としてほとんど生じ所縁により彼縁は決定しているため

 彼所縁の支分
  下記の3支を彼所縁の支分という、この中の何れか欠けても彼所縁は生じない
①欲界速行のみ生じ、他の安止速行などの後には生じない
②欲界有情にのみ生じ、上二界には生じない
③欲界所縁のみを所縁として、大(上二界)・出世間・施設などを所縁としない

5. 速行の決定

欲界速行 
○欲界速行
 普通7回、最低6回
遅純生起→ 5回 死ぬ時・木から落ちた時・水に溺れた時・誕生直後の時な
      どの気絶態や意識が確かでないとき。
敏速生起→ 4回から5回 これは、世尊の両側から左右交互に現れる神通。
智相応善、唯作速行  → 遅通達者4回(編作・近行・随順・種性)
(この後、安止速行)   速通達者3回(近行・随順・種性)

 安止速行
○大界速行(色界。無色界)
初めての人は最初の安止は大界速行1回
神通速行も常に1回
滅尽定の第四無色禅(前の定)は2回 
その後一度得た禅は心刹那生じることができる(入る長さに応じて)

○ 出世間速行
四道速行心は生起は1回(心刹那)
出定時→ 適宣に不還果心或いは阿羅漢果が1回生じ滅した後に有分
  (滅禅定から出るときの果定)
道速行の道心に続く果速行 → 遅通達者2回 速通達者3回
一度得た果定は入るときは多心刹那生じることができる(入る長さに応じて)

滅尽定
-1…-v…-2-v-3-v-4-v-5-v-6-v-7-v-8-決意-9-9-滅尽定……
1-9 =第一禅定から第9禅定(色界5、無色界4)
v  =ヴィパッサナー(無常、苦、無我を観察)  

  

 人による路心の別
 
人の種類によりどのような別があるのか説くもの

 人の種類は下記の12種
①悪趣無因者 ②善趣無因者 ③二因者 ④三因の凡夫 ⑤預流道 ⑥一来道
⑦不還道 ⑧阿羅漢道 ⑨預流果 ⑩一来果 ⑪不還果 ⑫阿羅漢果

①不善異熟捨推度心1心で結生
 欲界唯作速行9心、安止速行26心(色界善5心・色界唯作5心・無色界善4心・無色唯作心4心・出世間8心)、大異熟智相応4心、大異熟不相応4心を80路心(89心から離門心の9心を除いた)より除いた37心が生じる
 唯作速行心は阿羅漢にのみ生じるため、安止速行心は、禅・道・果の速行心であるので、無因・二因の結成異熟心が障碍となっているので(愚鈍の業によって結成した無因者・二因者は基礎異熟が悪いから)禅・道・果を得ることができない。

②善趣地に善異熟推度心1心で結生
  欲界唯作速行9心、安止速行26心、大異熟智相応4心を除いた41心が生じ
  る

③大異熟智不相応4心で結生
  欲界唯作速行9心、安止速行26心を除いた45心が生じる

④大異熟智相応(無貪・無瞋・無痴の三因ある)4心、大(上二界)の異熟9
  心の計13心で結生
   唯作速行18心、出世間8心を除いた54心が生じる

⑤⑥⑦⑧道心は各道心が1心刹那ずつしか得られないため禅を得る速行心は得られないが出世間の速行心は各々の聖者のみに生じる

⑨大異熟智相応(無貪・無瞋・無痴の三因ある)4心、大(上二界)の異熟9心の計13心
 結生
  唯作速行18心、出世間7心(道4心・一来果・不還果・阿羅漢果の3
  心)、悪見相応
 4心(表2参照)、痴心1心を除いた50心が生じる

⑩大異熟智相応(無貪・無瞋・無痴の三因ある)4心、大(上二界)の異熟9
  心の計13心で結生
   唯作速行18心、出世間7心(道4心・預流果・不還果・阿羅漢果の3心
  計7心)疑1心を除いた50心が生じる

⑪大異熟智相応(無貪・無瞋・無痴の三因ある)4心、大(上二界)の異熟9
  心の計13心で結生
  唯作速行18心、出世間7心(道4心・預流果・一来果・阿羅漢果)悪見相
  応4心、瞋恚速行2心(表2参照)を除いた48心

⑫大異熟智相応(無貪・無瞋・無痴の三因ある)4心、大(上二界)の異熟9
  心の計13心で結生
   善21心(無因善異熟8心・有因善心8・色界善心5心)、不善12心、出
   世間3心(預流果・一来果・不還果)を除いた44心
  阿羅漢には一切の善、不善が得られない又随眠が無いので出世間善も生
  じる必要がない

 地による路心の別
地の種類によって路心にどの様な別があるのか説く

 欲界地  すべての路心(80)が適宣に得られる (89心-色界・無色界異
      塾心9心)
 色界地  瞋恚速行心2、大異熟心8、鼻識2、舌識2、身識2を除いた64心
      が得られる
 無色界地 全五識10、五門引転心1、領受心2、推度心3、大異熟心8、瞋恚
      速行心2、初道心1、笑心1、色界速行心10を除いた42心が得ら
      れる

  42心中下位の無色界が得られない
  すべての地において、それぞれの浄色を欠く者には関連している路心が
  得られない

 


             
          

 Ⅴ. 摂離路分別

離路心、表面路を離れた潜在心の作用を説明したもので、結生・有分・死の作用する19心を説く、いずれも異熟と関係する

 結生 現世に生を受ける最初の刹那を指すもので、過去世と現世を結ぶ働
 きをするところから、結生と言われる。
 有分 結生以来の心相続である生有を絶やさせない因となる心(潜在的意
 識)が有分心という、即ち、過去生が滅した直後に、業に支配された結生
 心が生じ、その後、それと同じ異熟心が表面意識(路心)作用が行われな
 い限り、死に至るまで生滅相続する。若し、路心と有分心を含めた心相続
 が切れるなら有情は死ぬ訳である。異熟心と同じ
  現在生の終る刹那。現在生から離脱することがその作用で、業の勢力
 が無くなると、有分心のこの働きは消滅して、結生・有分と同じ異熟心で
 ある死心に至る

   有分心は異熟心とおなじとみてよい

 

1. 地の四集

欲界地 11
 離善地 4  善から離れている、悪趣ともいう
地獄 楽が得られず、苦ばかり  
畜生界 横に 行く 生まれるもの、即ち動物の仲間・社会
餓鬼界 餓鬼の仲間、社会     阿修羅衆 餓鬼より大きいもの

 欲善趣地 7  行くべき 楽を得られる地、愛欲の所縁
人界 善とも悪とも一定しない自由な心を持っている有情が人間
四大王天 持国、増長、広目、多聞などの4天に支配されている天衆が、住
     んでいる処
三十三天 マ-ガ青年と友に、人々のために道を造る等の功徳を積んだ32人
     の友人とが往生した天界
夜摩天 苦から離れる 都率天 喜びに赴いた 楽変化天 自分の欲する楽
    を化作する
他化自在天 自分の思い通りに他人に化作させる

 色界地 16
初禅地(同一平面)
 梵衆地 梵の衆をいう   梵輔地 輔(タス)ける梵天
 大梵天 梵衆地、梵輔地より勝れた梵天の住む天界
第二禅地(同一平面)
 小光天 光が少ない 無量光天 光が無量 発光天(光音天)光が発する                          
第三禅(同一平面)
 小浄光天(小浄天)上位の2天より浄光が少ない
 無量浄光天 浄光が無量  編浄光天(編浄天) 浄光が遍く                          
第四禅(同一平面)
 広果天 広大な結果  無想有情天 心心所が無く、ただ色蘊のみの有情
第五禅(浄居天)煩悩を離れて清浄になった天衆の居住(上下の層)                                
 不捨天 捨てることができない   無熟天 心配などの熟がない
 喜現天 誰が見ても楽しそうに見える天衆   喜見天 善く見る 
 無劣天 劣ったものが無い天

 無色界地 4  空中にあって物質的なものは存在していない空間だけの
         世界
空無辺処地    識無辺処地   無所有辺地   非想非非想処地

第五禅地 第五禅を得た不還果聖者と阿羅漢道聖者・阿羅漢果聖者だけが住む五つの浄居地ともいわれる 

 

2. 結生の四集


 結生 4
①離善結生、②欲善趣結生、③色界結生、④無色界結生を四種結生という

欲界結生10
①離善結生 1
 不善異熟捨倶の推度心(19)(離善地4に結生する刹那に結生心として生
        じ、有分心となり、現世の終わりに死心として断絶する)
②欲善趣結生 9
 善異熟捨倶の推度心(27)(欲善趣における生来盲目などの人々と、地
          神に依止している堕処の阿修羅との結成・死・有分)
 大異熟心(39)~(46) (欲界趣のすべての個所において結生心。有
          分。死心とて生じる)
③色界結生 6
 初禅異熟心(60)  初禅地(結生心・有分心・死心として生じる)
 大二禅異熟心・大三禅異熟心 第二禅地(結生心・有分心・死心として生
                    じる)(61)(62)
 大四禅異熟心(63) 第三禅地(結生心・有分心・死心として生じる)
 大五禅異熟心(64) 第四禅地(結生心・有分心・死心として生じる)
 無想有情(識はない) 色のみ(結生心・有分心・死心として生じる)

④無色界結生 4
 初無色異熟心(74)~(77) 初無色の地など(結生心・有分心・死心と
                       して生じる)

 一生は同一 結生心・有分心・死心は同一の心で所縁も同一のもの

  業の四集

4 業の四業 4×4

1.作用による四業 (業のはたらき方)
(1)令生業 結生時には、結生心心所・業生色及び天・宝などの業生時節
    生色を、生起 には前五識・領受・推度・彼所縁などの各異熟心及び
    1心刹那ごとの業生色を生じ させる善・不善の思生まれを作ってく
    れる業つまりどこかに生まれる。この業が、結成・生起時に結果を
    与える    
(2)支持業 自分自信では、異熟を結ぶことはないが、他の善悪業が異熟
    をもたらす時、異熟の後などに、その業の協力援助する業 生まれ
    てからその生命をサポートする業、幸福に出会うなど
(3)妨害業 命令業に異熟の機会を与えず、已に機会を得ている場合力を
    弱め、已に存在する異熟が持続しないよう妨害する一時的な業 生
    まれた生命の幸福や不幸を妨害する業
(4)殺害業 過去の命令業もその異熟をも完全に滅ぼす働きをする業 そ
    の人の殺してしまう業
四つの業を見極めるのは普通の人には不可能でおおさっぱな考えと見てよい

2.未来に異熟を結ぶ順序によって
(1)重業 他の業が妨害・滅亡できないほど重い業
(2)近業 死に際して(臨終の速行の前に)なされる業、或いは、その時
    に思い出される過去の業 一番最近やったこと
(3)久習業 反復してなされ、又は、反復した思い出されて習慣的になっ
    た行為 一般的に癖みたいになってること
(4)已作業 上記の3業に入らず、その状態まで達しない一般的な業と宿
    世の業 何かやったことがある業
(1)(2)(3)は今世のみの業

3.異熟の時期によって分ける 業が結果を出す時期の違い
(1)現法受業 現世に異熟をもたらす業、7回ある速行心中、最初の速行
    思をいう 今その人に現れる業
(2)次生受業 次の生存に結生異熟、生起異熟などとして異熟をもたらす
    業、7回目の速行思をいう 次の生で結果を出す業
(3)後後受業 来世の次の世以後、涅槃を得るまでの間に異熟をもたらす
    業で、最初と最後以外の中間の5速行思をいう 後でいつか必ず結
    果を出す業
(4)既有業 まったく異熟をもたらさない業で上記の三業が異熟を結ぶ機
    会を失えばそれは、既有業となる 業はあったのだけど、結果は出
    せなかった業

4.異熟の場所によって分ける
 (1)欲界不善業 大部分離善地に結生するが、生起時には、すべての不善業
   は、7不善異 熟をすべての色界に適宣に異熟させる。身業・語業・意
   業
の3種業門がある
 身業 身表と称される身門においてしばしば行われるのでいう
  殺 生 他人を殺す場合、自ら身体を用いて働きかける身加行と他に命
      じること、語加行とを生じさせる殺生の思が殺生の業
  不与取 持ち主が与えないものを盗み強盗し、或いは、騙して取る身加
      行、語加行を生じさせる思いをいう
  邪欲行 淫事
 語業 語表と称される語門においてしばしば行われるのでいう
  妄 語 間違っていることを、身・語によって言ったり、書いたりさせ
      る思
  離聞語 他人を扇動して仲を裂く言葉を生じさせる思 噂
  麁悪語 口汚く罵る言葉を生じさせる思 人をけなす言葉
  綺 語 人の心を散じさせ迷わせるだけの言葉を生じさせる思 無駄話
 意 業 意表と称される意門においてしばしば行われるのでいう
  貪 欲 他人の財産を無理を通しても欲しがる気持ち 異常な欲
  瞋 恚 相手の死を願うほど、瞋る
  邪 見 誤った考え
1~3は経典に出てくる分類を整理したもの、4はアビダンマ的分類

 業の根
  殺生・麁(ソ)悪語・瞋恚は、瞋恚及び瞋恚相応心によって生じる
  邪欲行・貪欲・邪見は、貪根及び貪根心によって生じる   
  不与取・妄語・離聞語・綺語は、貪・瞋の2根によって生じる
   上記の3種は、倶生縁の力によってのみ生じる
 (2) 欲界善業  欲界善趣地のみ結果を生じさせ、同じく欲界善趣地にのみ
   生起時において8大異熟心を生じさせる、しかしすべての欲界・色界
   に8無因異熟心をそれぞれ適宣に異熟させる。身門に生じる身業、語
   門に生じる語門、意門に生じる意業の3種、同じく、施・戒・修習の
   別によって3種。また89心生起によって欲界善業は8種。

    十善業道、或いは十善行
     身業 離殺生・離不与取・離邪欲行
     語行 離妄語・離離間語・
     意豪 離綺語・離麁悪語・正見(無痴)

    十善業事
     布施・所得の施(回向)・所得の堕喜
     持戒・恭敬・作務             
     修習・聞法・説法・見直業
   これらの業は20種(12の不善心、8の善心)とも欲界業とも言われる(3)色界善業 身・語・意の3種業はなく、意業のみ、施・戒・修習の3種
   がなく修習のみ
(4)無色界善業
 意業のみ・修習のみ

欲界業による異熟処
 悼挙を除いた不善業11種→離前地に結生(悼挙は結生異熟をもたらさない
  のは悪い世界に生まれ変わる程強くないため)
 不善業12種→不善異熟7心を生起時に欲界及び色界に門・所縁によって適
  宣異熟させる
 欲界善業8心→欲界趣地に結生
 欲界善趣地→大異熟8心生起
   欲界及び色界には無因異熟心8を適宣に異熟させる

三因の勝などによる別
 三因の勝善業
  結生 大異熟智相応4心(三因結生異熟4心)
  生起 16異熟心(大異熟8心、無因善異熟8心)
 三因の劣善と二因の勝善業
  結生 大異熟智不相応4心(二因結生異熟4心)
  生起 12異熟心(三因大異熟智相応4心を除いた大異熟智相応4心と無因善異熟8心)
 二因の劣善
  結生 無因善異熟の捨倶推度1心
  生起 無因善異熟8心

色界業による異熟処
 色界善業である初禅   → 弱 梵衆天 中 梵輔天  強 大梵天
 色界善業である第二・三禅→ 弱 小光天 中 無量光天 強 発光天
 色界善業である第四禅  → 弱 小浄光天 中 無量浄光天 強 遍
                               浄光天
 色界善業である第五禅 → 弱・中・強 広果天 想を厭うために修せば
                             無想有情天
            → 不還果は、浄居天 希望すれば、広果天、
              乾観不還果は梵天
無色界による異塾処
 空無遍処定→ 空無辺処地    識無辺処定→ 識無辺処地
 無所有処定→ 無所有処地    非想非非想処定→ 非想非非想処地


4. 死と結生との順

死の生起
 寿命の尽きること、業の尽きること、両者の尽きること、および断業による四種の死を四種の死生起という

臨終時の所縁の出現
 臨終の時になると業・業相・趣相の何れかが所縁として現れる
   所縁となる場合、来世に有の結生異塾をもたらし得る多くの善・不
    善の中の何れかが機会を得る 意門作用だけに生起する 思心所の
    こと
 業相 業を為す時に見たり聞いたりした、あらゆる所縁(善悪業の心境、
    光景、現場の様子)などをいう(6所縁) 五門作用・意門作用の
    両方に生起する   
     已に得られた業相 業の為される対象、つまりその際得られる所
              縁の中の主なるもの
     手段となった業相 業を為すための手段、つまり主たる所縁に従
              属して、これを成就させるための道具となっ
              た所縁
 趣相 往来する地に得られるすべての所縁(風景や様子などの具体的に臨
    終路にあらわれる)生まれる場所など
     得られるべき趣相 その人が人間界に生じるならば母胎、地獄な
              ら地獄、餓鬼なら森・山・川、欲界天なら天
              界
     受 用 の 趣 相  それぞれの生じる地に得られる種々の受用物
             、屋内や屋外にある物、鳥・地獄の火・天食な
             ど
 以上の業・業趣・趣相などが現れるのは、それらに基づく善・不善業の力の差により、それも六門の何れかに現れる。

臨終時の心相続
 善業が異塾をもたらす場合に好所縁 浄らかな善心相続
 不善業が異塾をもたらす場合に不好所縁 不善心相続
  それぞれ有に傾く

臨終の路 多数の路が集合したもの
  路心の最後   
   (1)速行の後に死ぬ場合
   (2)彼所縁の後に死ぬ場合
  有分の尽きる時 
   (3)速行・有分の後に死ぬ場合
   (4)彼所縁・有分の後に死ぬ場合
 欲界から欲界(1)~(4)が欲界から梵天・梵天から梵天・梵天から欲界には(1)と(3)がある

結生心の生起
 結生心は自然に生じて来るのでなく、梵の為すわざでもない、過去に自分の為した善・不善業という行いが生じさせたもの、行には下記の2種類がある
 (1) 過去の善・不善業と、それに相応する心心所  結生心を生じさせる
    善・不善行 命生行という  
 (2) 臨終の速行業とそれに相応する心心所  臨終の時に業などの所縁
    を結生心に対して投げ与える 投擲(トウテキ)行という
     (1)と(2)が結生心を生じさせる時に関係する
 結生心と同時に触・受・想などの相応法も生じる、つまりそれらに囲まれながら生じるそして相応法の依り所であり主となり直前の有から次の有に移転してきたのでもなく、直前の有と無関係でもなく、丁度山びこのように前世からの続きなのでもなく前世からの無明・褐愛行と無縁でも有り得ない
 欲界・色界に生まれる場合は、結生心は基を有するが無色界に生まれる場合、結生心は基のないものとなる。

欲界結生心の所縁
 臨終の路では心生起が微弱なため速行心も5回しか生じることができない、この路に17心刹那ある現在所縁(業相・趣相)が現れて下記のようになり死ぬと5心刹那を残す、つまり、この残り現在所縁を引き続いて所縁とする。

 上記のようなことで次有における結生心と有分心とその所縁は、この残りの現在所縁でありこれ以後は所縁は同じでも過去所縁となる
 臨終路の所縁と相応している業(2の投擲業)は結生異熟をもたらさないので、臨終路以前に生じた過去業(1の命令業)を、結生心もこの意門臨終速行が捉えた過去所縁を所縁とする、この業は法所縁に属しているので意門によって捉えられる

 臨終の5心刹那の速行心に応じる異熟心は、次生の結生心とならない、身心が元気な頃の業の勢力が強い時の速行心に応じる異熟心が次生の結生心になるといわれている。しかし、このニ心(臨終時の速行心と次生の結生心)の所縁は同じである、五門作用も同じ。
 死前に意門に多くの善悪業の業・業相・趣相どれかが所縁となってあらわれる、この時の速行心は、善の場合欲界有因八大善心(31)~(38)不善は十二不善心(1)~(12)、次生の結生心に直接影響を与えるのは業の勢力が強い頃の推挙を除いた十一不善心の中のいずれかであるが、結生心に強い影響を与えるのは善の場合欲界有因八大善心(31)~(38)不善の場合は十二不善心(1)~(12)の業の勢力が強い時の速行心である。

 臨終時の所縁はその速行と彼所縁と次生の結生心が同でも、死心は所縁が有分心の所縁と同じため、現世の善悪行に影響を受けない、しかし、次生の結生心の所縁と死心の所縁が同じに近い場合もあり、現世の業の勢力の強さにより異なる場合もある。又、臨終時の所縁が同じでも、次生の結生心に強い影響を与えるのは死前の業の勢力が弱まっている時の速行心よりも、それ以前の勢力が強い頃の速行心に応じる異熟心の方が強力である。
止・観の修習に励み善行を積み重ねた人は、死心直後に、臨終時の善異熟心が次生の結生心として生起する。悪行を積み重ねた人は、、死心後、無因不善捨倶異熟意識界(19)が次生の結生心となって悪趣地に堕ちるのである。

色界・無色界結生心の所縁
 色界結生心の所縁は施設である業相であるので結生心も施設である業相である
 無色界結生心の所縁は施設と大(色界・無色界)の業相なので結生心も施設であるコ業相である
  初所無色界結生心と第三無色界結生心はそれぞれ空施設の業相、無所有
  処施設の業相
  第ニ無色界結生心と第四無色界結生心はそれぞれ初無色識である大(無
  色界)の業相・
   第三無色識である大の業相
無想有情は色、無色界有情は名により結生する、残りに欲界有情は名と色により結生する

死・結生の順のガ―タ
 無色界(異熟)死心4 無色界結生心4(上位の下無色をそれぞれ生じる)
  と欲界三因(大異熟智相応)結生の計8心が生ずる
 色界(色界異熟)死心5 無因結生心2を除いた結生心17(凡不の場合)聖
  者は上の地に生ずれば再下の地には生じない。無想有情地からは、死ん
  だ後に欲界二因及び三因結生心8が生ずる。
 欲界三因(大異熟智相応)死心4        
  すべての結生心、即ち色結生(無想有情と結生心19)心が生ずる
 欲界三因(大異熟智不相応)4及び 無因捨倶推度2心の死心6
  欲界結生10心が生じる

有分と死
 <臨終路について>
五門路(眼・耳・鼻・舌・身門路)眼門路の場合 下記4種
  速行→死、 速行・有分→死、 彼所縁→死、 彼所縁・有分→死、
最初の速行の後に死が続く路の場合
  色所縁(業相) 過去有分―有分動揺―有分捨断―五門引転―眼識―
  領受―確定―臨終速行(5回)-死―結生―有分(15~16)―意門引転
  ―求有速行(7回)-有分
   上記のように臨終路の場合には、次有の結生路も含まれているから、
  結生路というものを別に説かない
 <速行・死の極大所縁臨終路>
  過―動―捨―五―眼―領―推―確―速(5)―死―結―有(15~16)
  -意―求有速(7)―有
 上記の場合意門引転と求有速行心は結生と言われる又異熟名蘊と已作色を所縁とする
 結生とは、結生作用を為す異熟心心所及びそれと同時に生じた業生色であって第一大異熟心心所33、身・性・基十法及び業生聚3などはその一例で、これが有の具体である、この有を所縁として欲求する貪を求有といい、これがあるため、すべての有情は自身を愛しく感じる。
   
意門路
 凡夫・有学の臨終路(五門と同様)
 欲界に再び生まれる者 速行→死、 速行→有分・死、 彼所縁→死、 彼所縁・有分→死
 欲界に再び他に生じる    速行→死、 速行・有分→死
 他の地から欲界に生じる

輪廻の輪の正断
 <涅槃路について>
阿羅漢を得た人の中、禅を得ないヨ-ガ者及び禅を得た人で禅定に入らない
 意門欲界速行→ 涅槃死心
路は上記の意門臨終路の通りだが死心の後に結生・有分が生じない

安止速行の後の涅槃に入.
(1)禅極無間路   入定の終わりに死ぬ路
(2) 観察極無間路  禅から出た後、観察路が生じた後生じた死の路
(3) 神通極無間路  神通入定の終わりに死ぬ路
(4) 命極無間路   命根の滅が近づいた時に阿羅漢道を得て、阿羅漢路
           が生じた道・果 を観察路の終わりに入滅する路


                   

Ⅵ. 摂色分別

 

1. 色の列挙

大種と依止色
(1) 大種 4 (4種) 止色の根元となる根本的な色で、大種依止色は大
  種に依止して初めて存在しえる。有情も無情も具体的に存在するものは
  必ずこの両者が共存している。
   地界 堅いという性質 物の堅さと重さを作るエネルギー-・はたら
      き、物量を作る はたらき 土台・骨組みのようなもの
   水界 倶生色の中に拡がるという性質 繋げる力、引き合う力
   火界 倶生色を熱する性質、寒冷と暑熱の2種がある 変化させるは
      たらき
      <体には体温である暖熱の他に下記の4種がある>
       ① 熱熱 ②焦熱 ③老衰熱 ④消化
    風界 引き離す力 ささえる 移動させるはたらき
     ①動く色聚に含まれているもの ②動かない色聚に含まれている
      もの2種
 ① 自然と共に生じている大種の色聚を他の処に移動させる性質。 手など
 が動く場合もこの手の中に含まれている風界によって、その生涯に応じて
 手全体も刹那々々に生滅しながら位置を変えて行く
 ② 倶生の色が互いに離れないように支えている性質。風船が膨らむのもこ
 の性質(風のエネルギー-が抑える地のエネルギー-に対抗する)
  界とはそれ自体の自性を保持している要素

依止色(24種) 大種に依止して初めて存在し得る従属的な色

(2) 浄色 5 (5種)眼・耳・鼻・舌・身を言う 感受性つまり何かを感
      受する、知覚する五つの感覚器官
    瞳孔の中にある、蚤の頭位の場所に無数に散在
    耳孔の中にある、指輪の形をした所に生えている微細な赤毛の根
    に散在している
    鼻の中の山羊の蹄の形をした所に無数に散在
    舌の真中にある蓮の花の花弁の形をした処に無数に散在
    消化熱、毛髪、身毛、手足の爪、疣(イボ)などを除いた身体全
     体に倶生色と共 に無数に散在

(3) 境色 7 (4種) 境とは牛が歩く処の意味つまり所縁というものは
      心が働く場所であるところからいう、従って、所縁となる色法
      のことをいう 認識機能に「受け入られる」の意味
     色(いろ・color)・形・大きさ、     
     音 耳で受信できる情報・物質エネルギー   
     香り 鼻で受信できる情報・物質エネルギー 
     味 舌で受信できる情報・物質エネルギー   
    水界を除いた三大種と称する触 水界は微妙のため感触の対象とな
      り得ない、水に触れ冷暖を知覚するのは火界に触れるため感じ
      る。三大種とは地・火・風界の触

(4) 性色 2 (2種) 男女の別が生じる基になる色 結生すると同時に
     身体の中に散在している
    女性   
    男性

(5) 心色 1 (1種) 心基のことで心臓の中に小さい房があり、その中
    に血がある、その血の拡散しているものが心色。意界、意識界はこ
    の心色に依止する 
    「ある物質」つまり脳と理解してもさしつかえない
(6)命色 1 (1種) 命根のことで身体全体に拡散していて、倶生の業
    起因色を守護してその命となっている。業生色は業が過ぎ去った後
    に生じる色であるから業がこれを保護することはできない、そこで
    命色が寿命のかぎりこれを保護する

(7)食色 1 (1種) 栄養素のこと、段色とも滋養素ともいう

 上記18色を(大種色4、浄色5、境色4(7-3)、性色2、心色1、命色1、食色1)を完色(実際の物質)自性色(それぞれ独自の性質を有する)、 有相色(生・住・滅或いは無常・苦・無我などの特相を有する)、 完色(業・心・時節・食などの基づいて完成したもの)、 色色(変壊する性質がある色である)、 思惟色(無常・苦・無我と思惟する業処修習の対象となり得る)とも言う

(8)分断色 1 (1種) 虚空界のこと、色聚が互いに融合しないよう分
    ち隔てる色(2本の指の区切り)

(9)表色 2 (2種)
   身表 身門のこと思は身体で表現されるから、この表われている身体
      の動作をいう、手をこう振ると「こっちおいで」となるなど
   語表 語門のことで自分の欲することが言語で表現されることで、こ
      の表示されている音声を伴った言葉を語表と称す。生きている
      言葉、ただ音としての言葉でなく、実際のコミュニケ-ション
      で使う言葉

(10)変化色 5 (3種)
    色軽快性 楽しい時など色蘊の軽い状態
    色柔軟性 楽しい時など色蘊が柔軟になる状態
    色適業性 楽しい時など色蘊が身業・語業を為すのに適した状態
    身・語の2表 身業・語業を為すのに適した状態に色蘊がある
  第一義的な自性があるわけでもなく、完色の特殊な状態をいうにすぎない

(11) 相色 4 (4種)色の特色
    色積集 結生時から浄色が整うまでの間の胎児を例にとれば(7週
        間)における1心刹那の生位の色 エネルギー-の集まる
        はたらき
    色相続 浄色が整った後のすべての生位の色 エネルギー-の流
        れ・波動・同じものの流れ 生位の色
    色老性 あらゆる完色が生じた後の49刹那の住位の色 老いるとい
        う連続する現象
    色無常性 最後の1刹那である滅位の色を色無常性 違う現象、物
        になる状態
 この4色は完色の生じ、老い、滅する状態を言うので、この他に色がある訳でない、何かを起因として生ずるとは言えない
 (8)~(11)の10種を非完色、無自生色、無相色、非色色、無思惟色とも称する
 <18種色と10種色の相異>
  18種色は第一義的な色で自性がある
  10種色は18種色(完色)の特殊な状態を見て別称されたものが施設としての10種
 色である
  色28種のなか性色(4)から相色(11)の15種を微細色という
 

2. 色の分別

(1)内色 五種の浄色のこと 五つの物質エネルギー-  
     身体の内外ではなく、身体と一緒に生じている色の中、自分にと
     って最も利益となる色
    外色 その他のすべての色

(2)基色 浄色と心色(こころが生まれる基盤)の6種 
    非基色 その他の22種色

(3)門色 浄色と表色の7種(五浄色は情報の入る門・身表と語表は情報の
                    出る門)
          非門色 その他の21種色

(4)根色 浄色・性色・命色の8種色 認識のはたらく場所
    それぞれ、前五識・根・倶生色などを支配している。眼識の見作用
   は眼識に故に色の優劣によって見作用に差が生じる、聞・嗅・嘗・触
   も同様
    性色は根・相・作業・所作を支配し、その性色通りの根などが生じ
   る。命根は
   倶生色(業起因色の業が過ぎ去った後世の色)に対して守護作用とな
  って支配する
  非根色 その他の20種色
   根色のように支配することがない

(5)麁色 浄色・境色  の12種色(きん近色・うたい有対色ともいう)エネ
      ルギー-波動が大きいか小さい物質かということ
    感触と言うのでなく慧眼で見て明確なものをいうので色所縁などの
    浄色とは誰でもその本質が明確であるのでこう言う
    細色 その他の16種色(遠色、無対色ともいう)
    水界、眼色などのように明確でない(慧眼で見て)
     近色・遠色 近くで見ると取り易いように、慧眼で見ると明確な
                                         麁色は捉え易いから近色、不明確な細色は捉え難い
                                         ので遠色
     有対色・無対色 眼色などの浄色と、色所縁などの境色とは、本
                                          来対立する性質のものなので有対色、これ以外を
                                          無対色という

(6)執受色 業生の18種色(心基色1、根色8、不簡別色8、虚空界色(分断
    色)1)
    渇愛、悪見によって所縁とされる業の異熟となる業生色をいう、こ
   の所縁とされる業は、業生色を自分の異熟であると執着しているから
   いう
   非執受色 その他の10種色 三生色とも言われる

(7)有見色 色処のこと
     眼色によって見ることのできる色
    無見職 その他の27種色
     見られないもの

(8)取境色 浄色5種色(所縁を取る声)
     眼・耳の場合これらの所縁である色・声所縁は浄色である眼・耳に
   接 触することなく所縁となり得るから不到達色とも言う
      鼻・舌・身は所縁である香・味・触が接触しなければ所縁となり
   得ない到達色
   不取境色 その他の23種色
 <無所縁と取境について>
  眼識などが浄色に依止しているので境を取ると称したにすぎない

(9)不簡別色 色・香・味・滋養素(食色)、四大種(地界・水界・火
    界・風界)の8
     種色。その色だけを他の色から切り離せない色  それ以上分割で
    きない色簡別色 その他の20種色。その色だけを他の色から切り離
    せる色

3. 色の起り方

(1) 業 業は色を生じさせる、容姿が異なるとか男か女など
(2) 心 心が安らかなら身体も快いなど、気持ちの変化が色の変化として
   外に現れる
(3) 時節 時節は火界のことで天候に応じて身体に快・不快を感じるなど
(4) 食 食物に含まれている滋養素(栄養素)も健康になるのは良い色が
   生じているなど

 (1)業起因色(業生色) 心基1・根色8・不簡別色8・虚空色1の18種色
 この業(思)によって生じる色で過去の思であり、他の人でなく、それを為した人自身に異熟を起こす。結生してから後のすべての生・住・滅刹那に起こす
 不善心12、大善心8の欲界心20に相応する思20及び色界善心5に相応する思5が業起因色を結生以来刹那ごとに生起させる

(2)心起因色(心生色) 表色2・声色1・軽快性など3・不簡別色8・虚空
             色1の15種色
 この生じた色で心等起色ともいう。心は色に較べ寿命が短いため、生の刹那にのみ力を
有しているから生の刹那にのみ色を生じさせて、住・滅の両刹那には生じさせることは、できない
 無色界の異熟心4・前五識10を除く75種心が最初の有分心の生位の刹那を初めとして、すべての生位の刹那に心起因色を生じさせる。
   最初の有分心の生位の刹那を初めとするのは、結生心は現有における
  最初の心であるから、現有に達したばかりの結生心は色を生じさせる力
  を持たない
   無色界地は色を厭う梵天の住処であるので色を生じさせることができ
  ない
   五識は禅支・道支・因と相応しないため力が弱く色生じさせられない
 威儀の支持 安止速行26心(色界10・無色界8・出世間心8)
  姿勢を支持すること
 表の起因 確定心1・欲界速行29心・神通2心
  身体・言葉で何かを表現する
 笑の生因 上記の32心の中13の喜倶速行心
  心が楽しくなった時に色が身体に生まれる、その時人が笑う

 (3)時節起因色(時節生色) 声色1・軽快性など3・不簡別色8・虚空界
               1の13種色
 あらゆる冷たいものには寒冷(時節)つまり火の元素が含まれ、あらゆる熱いものには暑 熱大界が含まれている。 業が原因となって生じる
 時節とは火の元素のことで、変化のはたらきをする火のエネルギーが新し
い物質を作る
 色は生刹那より住刹那の時間が長く勢力が強いので、この住位(生・住・減の間の僅かな在る瞬間)に達した時に色を生じさせる、つまり新しいエネルギーを作ってしまう。
 自身にある時節が自身に時節生色を生じさせ、外(木・山・水・地面)にある時節生色を生じさせる、素粒子一個でも大種からできているので、それそのものも変化する、その法則をいう。

 (4)食起因色(食生色) 軽快性など3・不簡別色8・虚空界1
 食物に含まれている滋養素が身体に吸収され、それが住位に達した時に色を生じる

業生などの自性
 業生色 心基・根色の9     
 心生色 二表は心生色9
 二生色 声は、心・時節色    
 三生色 軽快性などの3は、時節・心・食
 四生色 8種の不簡別色と虚空色とは業・心・時節・食の4により生じる
 無依色 4種の相色は、何れの起因によっても生じない


4. 色の聚

色の特相 色は実際には他の色と結合して生滅を共にする、この聚(アツ)まりを色聚(シュウ)という、
     その条件として同起・同減・同処依の3支分がある
(1)業生聚 業(カルマ)から生まれる物質の集まり
  ① 命色1と不簡別色8・眼浄色1を眼10集と言う
    この色聚は眼色が主となり、残りの色はその回りを囲んでいる・必
   ず一緒に生まれ消える
上記と同様に②耳10集・③鼻10集・④舌10集・⑤身10集・⑥女性10集・⑦男性10集・⑧基10種の計8種
  ⑨ 不簡別色8と命色1を命9集という(寿命)
    欲界には得られず色界のみに得られると説かれているが実際には
    、欲界には暖熱として身体全体に分布している・生きている身体の
    こと
(2)心生聚 心から生まれる物質の集まり
   ①不簡別色で純8集(物質の最も基本的な状態・ただの物質)
  ②身表と不簡別色で身表9集(身体で何かを表現する)
  ③不簡別色・語表・声で語表10集(言葉の表現) 
  ④不簡別色・軽快性・柔軟性・適業性で軽快性などの11集(身体が軽く
    軟らかく仕事を始めるのに適した軽快な性質)
  ⑤不簡別色・身表・軽快性・柔軟性・適業性で身表・軽快性などの12集
   (身体表現が軽流く軟らかく仕事を始めるのに適した軽快な性質)
  ⑥不簡別色・語表・声・軽快性などで語表・声・軽快性などの13集(声
    を出す・言葉を話すのに軽く軟らかく仕事を始めるのに適した軽快な性質)

(3)時節生聚
  ①不簡別色で純8集   ②不簡別色と声色で声9集
  ③不簡別色・軽快性などで軽快性などの11集
  ④不簡別色・軽快性などで声・軽快性などの12集

(4)食生聚
  ①不簡別色で純8集   
  ②不簡別色と軽快性などで軽快性などの11

内と外との聚
 (1)身体の外にある色(生命と関係ない)
    不簡別色で純8集・声9集
 (2)身体の内にある色(生命と関係する)
     残りの19集・2時節起因聚を加えた21聚


5. 色の生起の順序

欲界生起は一般的にすべての色が得られる、ある場合は欠ける場合もある
 
結生時
 湿生 湿った場所に結生する蛆虫など
  眼・耳・鼻・舌・身・性・基十集(浄色・不簡別色・命色)が現れる
 化生 現有より次有に忽然と結生し有情の姿をとる、最初の人間や諸天
  人・地獄の有情
  眼・耳・鼻・舌・身・性・基十集(浄色・不簡別色・命色)が現れる
 胎児 胎生と卵生がある
 結生(胎児有情の場合)身・性・基十集と称される3の十集現れる→生位か
  ら業起因色、 住位から時節起因色                           
 生起 次第に眼十集など現れる、すべての色が一般的に得られる
 第二心(最初の有分心)                   →心起因色
  滋養素が身体に行き渡る                  →食起因色
 胎児の有情の場合は次第に眼十集など現る(表参照)
上記のように四起因色聚の相続が寿命ある限り絶えることなく生じる

四起因色聚の断絶する順序
 業生色は死心から遡って17心刹那の心の住位の刹那から生じない又生位の刹那に生じた、死心が滅すると同時に共に滅する
 心生色は死心が滅した48刹那を経て滅する(51刹那―3刹那)
 食生色は死心が滅した後50刹那を経て滅する
 時節生色は骨と化して生じ続ける
(表参照)
色界における色の生起の順序
 鼻・舌・身・性10集及び食生聚が得られないので、結生時には眼・耳・基10集と命9集のみが得られる
 無想有情には眼・耳・基・声もすべて心生色が得られた結生時には命9集のみ得られ生起時には、時節生聚4の中、純8集と身快性などの11集と2身集が得られる
(表参照)


涅槃
 道智によって直接眼で見るように知るべきものであり、道智を得る欲界地によるものは推測にすぎない

1種 静寂の相という時性として
2種 有余涅槃 残りの名蘊と業生色によって仮に涅槃という、異塾の名蘊
       と業生色によって仮に説く涅槃、現法涅槃とのいう
   無余涅槃 名蘊と業生色が減したことによって仮に説く涅槃  當来
        涅槃ともいう
3種 空涅槃 貪瞋痴と共に名蘊・色蘊がないのでその様子を空行相とい
       う、この空行相があるので空涅槃と称する
   無相涅槃 一定の形状を現す五蘊が無いから、この様子を無相とい
        う、この無相行相があるので無相涅槃と称する
   無願涅槃 渇愛に基づく願いがなくまた対象とならないので無願であ
        る、この無願行相があるので無願涅槃と称する

 色法について論じた摂で北方仏教では一切法を色・心・心所・心不相応・無為の5位に区別するが南方仏教では心不相応を説かないで、心所法や色法の中に含めることが多いがこれに相当するものとして心所法の中の身軽快性、心軽快性、身柔軟性、心柔軟性、身適業性、心適業性、身練達性、心練達性、身端直性、心端直性とか色法中の色軽快性、色柔軟性、色適業性、色積集、色相続、色老性、色無常性などが北方仏教の心不相応法にあたると見られる。
 北方仏教では命根(生命力)は心不相応とされるが南方仏教では命根には物質的なもの(有色有情の命根)と精神的なもの(無色有情の命根)があり、前者は色命根、後者は非色命根として心所法の中に数える
 北方仏教では色法に善や不善のものがあるとされるが(例えば身・語の表業や無表業は色法とされ、善や不善に属す)南方仏教では色法はすべて無記のみとされる
 北方仏教では律儀(戎)や不律儀(悪戎)等の身・語業は善悪の色法だが、パーリ仏教ではすべて心法に属する、前五識も北方仏教では善悪がされるが南方仏教では強い意思作用はないので常に無記


             

Ⅶ. 摂集分別

 
   多くは原始経典に出てくるものである

1.不善の摂

(1) (ロ)4 漏池の意、つまり化膿した傷口から膿がでるような貪など
       の不浄が六門から漏(モ)れて来るのでいう、又酒の意味もあ
      って、貪などが酒に譬えられる
  1欲 漏 五欲を希求するか渇愛、及び常見に伴う渇愛 自性は悪見相
    応4に相応する貪
  2有 漏 色界・無色界禅とその異熟に対する渇愛及び常見に伴う渇愛
    自性は悪見相応心4に相応する貪
  3見 漏 常見・断見などのあらゆる悪見、自性は悪見相応心4に相応す
    る痴
  4無見漏 四聖諦・縁起などがわからぬこと、自性は不善心12に相応す
    る痴

(2) 流暴 4 暴流が有情を飲みこんでその命を奪うように、貪・見・痴
      なども有情を苦の輪廻の中に捉え、離善地にまで運び去る
  1欲暴流   2有暴流   3見暴流   4無明暴流

(3)軛(ヤク)4 貪・見などが軛(クビキ)のように有情の苦の輪廻に結び
      つけるもの
  1欲 軛  2有 軛  3見 軛  4無明軛
     漏・暴流・軛の自性は同じもの

(4)繋(ケイ)4  鎖などで繋(ツナ)ぐの意
 1貪欲の聚軛(貪欲身繋) 所縁を欲求すること 自性はあらゆる貪
 2瞋恚の聚繋(瞋恚身繋) 瞋ること 自性はあらゆる瞋
 3瞋恚の聚繋(戒禁取身繋) 牛や犬などの習性を修すれば、煩悩が浄め
     られ輪廻から解脱できるという考えを持つこと 自性は見心所
 4これが真実であると固執する聚繋(此実住者身繋) 邪見を抱いて自分
     の考えだけが正しく、他の考えは皆誤りであると固執する見心所

(5)固執 4  蛇が蛙を捉えて離さないよう固く執りつく
 1欲の固執 所欲に執着する 自性あらゆる貪
 2見の固執 諸の見から習性行と我見とを除いたあらゆる見
 3習性行の固執 前の繋にあるものと同義(戒禁取ともいう)
   上記の3種の自生は見心所 執する見の内容によって3種としている
 4我説の固執 我を主張する説に固執すること 最高我と霊魂我の説

(6)蓋(カイ)6  蓋(オオ)って防げる、心を蓋って禅・道・果だけでなく
      欲界善の生じることも妨害するのが蓋、六蓋の自生、貪・瞋・
      婚沈・睡眠・推挙・悪作  
 1欲貪の蓋 「色・声・香・味・触に対して意欲(欲貪)がある」こと  
 2瞋恚の蓋  怒りと反発・ちょっとした怒り  
 3惛沈・睡眠の蓋 「縮む」こと・心が暗くなる縮み 「眠たい・だる
        い」  
 4推挙・悪作の蓋 隠れたがる心・隠れる所が消えてドキドキすること・
        混乱 後悔  5疑の蓋 心の弱み  6無明の蓋 無知

(7)随眠 7  どんな時にも、有性に常につき添って眠っているもの、つ
     まり潜在している煩悩 6所縁の適当な所縁に出会えば煩悩とし
     て現れる
 1欲貪の随眠 2有貪の随眠 3瞋恚の随眠 4慢の随眠 5見の随眠
 6疑の随眠  7無明の随眠

  1・2は預流聖者で捨断  残り3~7は一来聖者のよって薄められる
  3・4は不還聖者で捨断   5・6・7は阿羅漢聖者により捨断

(8)経の結 10 紐で縛るように有情を苦の輪廻に結びつけるもの、経
      典の分類
 1欲貪の結 欲有漏と同じ
 2色貪の結 色界禅・異熟にたいする渇愛
 3無色貪の結 無色界禅、異熟に対する渇愛この2つの貪を合したものが有
        漏に相当
 4瞋恚の結 瞋根瞋2に相応する瞋    
 5慢の結
 6見の結 習性行の把持という見を除いたあらゆる悪見
 7習性行の把持の結    
 8疑の結   
 9掉挙の結   
 10無明の結
 

(9)論の結 10 有情を欲情に欲界に結びつけるもの、論の分類
 1欲貪の結   2有貪の結   3瞋恚の結   4慢の結   5見の結   
 6習性行の把持の結  7疑の結  8嫉の結  9慳の結  10無明の結
 

(10)煩悩 10  心を汚し、煩わせ、悩ませる
 1貪  2瞋  3痴  4慢  5見  6疑  7惛沈  
 8掉挙  8無慚  10無愧

2 雑の摂

 善・不善・無記を雑えて示すので雑の摂
(1)  6  根が木を支えるように具生の名色の土台となっている
 1貪  2瞋  3痴  4無貪  5無瞋  6無痴

(2) 禅支 7
 1尋  2伺  3喜[悦]  4一境性  5喜[楽]  6憂  7捨
     5.6.7は受に入るので自性は5禅

(3) 道支 12
 1正見 自性は慧根心所で、世間、出世界との2種がある
 2正思惟 自性は尋、出離思惟、無恚思惟、無害思惟の3種がある
 3正語  4正業  5正命  6正精進  7正念  
 8正定
(自性は一境性)9邪見  
 10邪思惟
 自性は12の不善心と相応する尋、欲尋・瞋恚尋・害尋・の3種
      がある  11邪精進  12邪定(自性は一境性)
   1~8は善趣地に9~12は離善地に行くので尋(2・10)精進(6・11)
   一境性(8・12)はそれぞれ2支ずつあるので、自性は9

(4)  22 例えれは大臣、総理大臣でなくそれぞれの分野で支配的な役割
     をする
 1眼根 自性は眼色   2耳根 自性は耳色   3鼻根 自性は鼻色
 4舌根 自性は舌色   5身根 自性は身色   6女根 自性は女性色
 7男根 自性は男性色    8命根 自性は命根色・命根心所
 9意根 自性はあらゆる心    10楽根 自性は楽倶身識に相応する受
 11苦根 自性は苦倶身識に相応する受   
 12喜根 自性は喜倶心62に相する受
 13憂根 自性は瞋根瞋2に相応する受   
 14捨根 自性は捨倶心55に相応する受
 15信根 自性は浄心に相応する信・念心所
 16精進根 自性は五門引転2前五識・領受・推度を除いた72心に相応する
      精進心所
 17念根 自性は浄心に相応する信・念心所
 18定根 自性は精進と相応しない16心と疑倶心1を除いた72心に相応する
     一境性
 Ⅰ9慧根 自性は三因心47に相応する慧
 20未知を知ろうとする根 自性は預流道に相応する慧(未知當知根)
 21境界内を知る根 自性は上3道・下3果に相応する慧(已知根)
 22知り己っている根 自性は阿羅漢に相応する慧(具知根)

(5) 5  反対法と出会っても不動であり、反って強固となる信など 
       根と力は表現のちがいと考えてよい
 1信力   2精進力   3念力   4定力   5慧力   6慚力
 7愧力   8無慚力   9無愧力

 <9力の反対法>
  (善の力)  信―不信  精進―懈怠  念―放逸  定―掉挙 
            慧―無明   慚―無慚   愧―無愧
  (不善の力) 無慚―慚   無愧―愧

(6)(増上) 4 倶正の名色の主となるもの 
        例えれば総理大臣で四つは同時に主にならない
 1意欲の主 自性は二因速行心及び三因速行心52に対応する意欲
 2精進の主 自性は二因速行心及び三因速行心52に対応する精進
 3心の主  自性は二因速行心及び三因速行心52の速行
 4観の主  自性は三因速行心34に相応する慧根、知恵のことでよい心と
      しか相応しない

(7) 4  身体を支えるつまりそれぞれの異熟を生じさせる滋養素など
      質量としての条件
 1段食 滋養素のこと 8色(食正の純8集)を生じさせる 食べ物のこと
 2触食 89心に相応する触の心所 この触は受である異熟を生じさせる
 3意の思食 89心に相応する思の心所 この思食は結生(識)である異熟
       を生じさせる
 4識食 89心を識食という この識は共に生じる名と色とを生じさせる
      この4つは五蘊の相続に深く関与しているので食という

3 菩提分の摂

  道智の仲門に属する諸法を菩提分という
念位 4
 1身に対し随観し続ける念住(身随観念処)
   32の身体の部分を所縁として、繰り返し観察する念住 浄想の顛倒を
   捨断することができる
 2受に対し随観し続ける念位(受随観念処)
   受を所縁として繰り返し観じる(すべての受が苦の行相として現れて
   くるように)
   念住
    不浄の行相が身に関して生じてくれば、楽想の顛倒を捨断すること
    ができる
 3心に対し随観し続ける念住(心随観念処)
   心を所縁として有貪心、離貪心などと判断して、無常の行相が現れる
   ように繰り返し、観ずる念住
   心が変化している有様を知れば、常想の顛倒を捨断することができる
 4法に対して随観し続ける念住(法随観念処)
   法とは、想蘊・行蘊であって、これらの自性が無我の行相として現れ
   るように繰り返し観ぎると、あらゆるものは第一義法だけしかないと
   知るようになる、この時、法に対し生じている我想の顛倒を捨断する
   ことができる

(2)正勤 4  21の善心に相応する精進心が四正勤の自性
  1已に生じた悪を捨断するための精進
  2未だ生じたことがない悪が生じないための精進
  3未だ生じたことがない善が生じるための精進
  4已に生じた善が増大するための精進

(3)成就の基礎(神足) 4  禅・道・果と言う結果をもたらす基礎とな
              るもの
 1意欲という成就基礎  2精進という成就基礎  3心という成就基礎
 4観という成就基礎

   21の善心、それと相応する意欲・精進・観が4種の成就の基礎の自性

(4) 5 人間の能力・可能性としての力
 1信根(信仰)  2精進根(精励 ) 3念根(専念)  4定根(心の統一)
 5慧根(智慧)
    自性は大善8・大唯作8・安止速行26の相応する信など 次の力も同じ

(5)  5 人間の能力・可能性としての力
 1信力   2精進力   3念力   4定力   5慧力

(6)覚支 7 四聖諦を覚えるための基になる法集の支分 悟りに導くもの
  1念妙覚支  念(注意力)
  2擇法妙覚支 慧(教えの選択)
  3精進妙覚支 精進(たゆまぬこと)
  4喜妙覚支  喜(教えの実践を喜ぶ)
  5軽安妙覚支 身軽安・心軽安(易く対処し得ること)
  6定妙覚支  一境性(心が散乱しない)
  7捨妙覚支  中捨(中庸)
   自性は大善8・大唯作8・安止速行26の相応する念など、それぞれ上記

(7)道支 8
 1正見 正しい見方(知慧・慧根)
 2正思惟 正しい思い
 3正語  正しい言葉
 4正業 正しい行いと、その積み重ね 
 5正命 正しい生活、生き方(仕事に関すること)
 6正精進 正しい努力
 7正念 正しいきずき
 8正定 正しい精神統一

4 一切の摂  

心・心所・色・涅槃などの一切法を示す箇所
(1)  5
色蘊 過去色・現在色・未来色などの集まり 受蘊なども同様
 2受蘊 感受の集まり
 3想蘊 表層の集まり 
 4行蘊 思心所の別名で、思が50心所〔52心所-受・想〕の主となって
     いる
 5識蘊 認識の集まり

(2)固就取の蘊 5  固就(自性は貪・見)の所縁となる蘊 自性は世間
           心・心所・
 1固就の色蘊 2固就の受蘊 3固就の想 4固就の行蘊 5固就の識蘊

(3) 12  路心の生じる処
 1眼処   2耳処   3鼻処   4舌処   5身処   6意処
 7色処   8声処   9香処   10味処  11触処   12法処
 
   1~6を内処 7~12を所縁である外処という

(4) 18  自性を保持するもの、つまり認識を成立させるための要素
 1眼界    2耳界    3鼻界    4舌界    5身界   
 6色界    7声界    8香界    9味界   10触界  
 11眼識界  12耳識界   13鼻識界  14舌識界  15身識界  
 16意界  17意識界  18法界

(5) 4  真実の意味
 1苦の聖諦  2苦因の聖諦  3苦減の聖諦  4苦減に至る道の聖諦

  





Ⅷ. 摂縁分別


 縁とは未だ生じていない縁所生法を生じさせ、次に生じている縁所生法を維持存続させる

1 縁起の仕方 (12縁起)

無明  知るべき法を知らないこと  
  自性:不善心と相応する痴
 四聖諦、前辺(過去)、後辺(未来)、前辺・後辺、十ニ縁起の8点について正しい理解ができないこと。つまり理解できないよう慧を妨げる

 自覚することがほとんど不可能という意味で無明(根本的な無知)といわれる根本的な生存欲

  現世のあらゆる身業・語業・意業及び未来に異熟をもたらすあらゆる
   業
 自性:世間善心・不善心に相応する29の思(道の思は異熟をもたらすが輪転には属さないので除く) 
善 行(業)欲界善心8・色界善心5と相応する13の思(行)
不善行(業) 不善心12       と相応する12の思(行)
不動行(業)無色界善心4      と相応する4の思(行)
                     29の思(行)
(無色界法は定の力が勝れているため、敵対法に対して動揺しないので不動
 行)

 記憶とか、それをもとにした意志とか意向 潜在的形成力
 根本的な生存欲があれば生きるために認識とか行とかに踏み出さねばならない、そうして踏み出す盲目的な心の作用  志向作用

  表象作用
 自性:結生時・生起における世間異熟心32
善 行(業)を縁として欲界無因異熟心8・大異熟心8・色界異熟心5
                           21識(心)
不善行(業)を縁として不善無因異熟心7         7識(心) 
32識(心)不動行(業)を縁として無色界異熟心4     4識(心) 
 (出世間の異熟識(心)は輪転には属さない)
 行為に踏み出す前には判断という形の認識がなければならない、そこで
 「行によって識が生じる」といわれる  判断作用

 なお識が生まれるために次の三条件が必要である
  1.根が破壊していないこと。
  2.所縁(境)が現前すること。
  3 意作(心心所を注意警覚させ所縁にむかわせ結合させる作用)がある
   こと。

名色  識が縁となる場合、識の自性:思と称される業と相応する識(心)つまり上記の32識(心)これを過去業識ならびに現在異熟識という
  名の自性:異熟心32と相応する心所(不表Ⅰ参照)
  色の自性:業生色つまり心色1と根色8・簡別色8・虚空色1の18色

 結生識が生じる時、識と相応する名蘊(受・想・行)と業生色も同時に生じるこの時、識が主となっているので、識によって名色が生じるという。
生起時にも、眼識などに相応する心所が同時に生じる。

 色の結生について業生色を結生させるのは25の思(本187参照)
   五蘊地の場合、前五識は名のみを生じさせ、心生色を生じさせない、
   他の識(心)は名色を生じさせる
 無色界は名のみ生じ、無想有情界は過去世で修した第五禅業である業識(心)が業生色を生じさせる

 識と名色は同時並行に生じる
 名色は識で32心は取り上げているので32心は入れない

 認識・判断の対象に踏み出すには対象が要請される、対象は形態をもち名称づけられるからこそ認識判断が可能になる  名称と形態

六処  六内処、つまり五色処(眼・耳・鼻・舌・身の諸根)と世間異熟心32の意処(意根) 
 名色を縁として五色処(浄色)と世間異熟心32の意処(心色)が生じる、つまり名色が生じれば業生色も生じその中に含まれている五色処も同時に必ず生じる、また心所としての名も意処である異熟識に対して縁となる 
 五蘊において名色が六処を生じさせ、無色界地において名が意処のみを生
  じさせる

 認識(とくに知覚)を構成する要素の筆頭に置かれる六つの感官

  触心所であって、六内処に応じた六種(眼・耳・鼻・舌・身・意触)の触 触れること(六外処も合わせて取る説もある)
 自性:世間異熟心32に相応する触心所。 
 眼・耳・鼻・舌・身・意処によって眼・耳・鼻・舌・身・意触が生じる
 意処によって意触(世間異熟心22に相応する触)が生じる

 これがあってはじめて知覚が成立する

 感官と対象との接触

  六種の触によって生ずる六種の感受作用 感覚、感受作用 
 自性:世間異熟心32に相応する受心所
 触によって生じる受を触所生受という、眼触所生受・耳触所生受・鼻触所
生受・舌触所生受・身触所生受・意触所生受の6種ある

 もっとも狭い意味での「知覚」 触により生じる受を触所生受という

 触と受は同時並行に生じる

褐愛  六受を縁とする6種の褐愛(色・声・香・味・触・法愛)
 自性:八貪根心と相応する貪心所
 色愛と名づけるのは色所縁などが受を伴い喝愛が働くから

対象を認識したことから生ずる衝動的な欲望

固執(取) 欲の固執・見の固執・習性行の固執・我説の固執の4種がある 
 自性:八貪根心と相応する貪心所 
 褐愛より所縁を貪る程度が強いとされる

この執着にもとづいて、善悪に業(行為)を起こす 執着

 輪廻的な生存のこと
 業有 業そのもの
 自性:世間善心17と不善心12とに相応する思29
  善行・不善行・不動行のこと。
 起有 業有の結果
 自性:世間異熟心32、と相応する心所及び業生色
  欲有・色有・無色有である、つまり名色と同じ自性
 色については名色の生起時を参照
行は過去世に生じ現世に異熟をもたらす
業有は現世に生じ来世に異熟をもたらす
執着によって起こされた善悪の業こそが、輪廻的な生存の原動力、有と所縁(対象)としての欲求する貪を求有といい、これがあるため、すべての有情が自身を愛しく感じる(本p172参照)
 
   有における最初の名色蘊(人界に結生する場合) この場合の有は業有のみを意味する
 自性:三界(欲界・色界・無色界)の各生存における結生の刹那に生じる世間異熟名蘊(世間異熟心32とそれに相応する心所)と業生色。
生と有は、業とその異熟の関係に他ならない
 誕生・生まれ変わること

老・死・愁・悲・苦・憂・悩  老とは結生後に、世間異熟名蘊と業生色とが老いる状態、 死とは世間異熟名蘊と業生色とが死滅すること、愁とは愁える、悲とは悲泣のこと、苦とは肉体的な苦のこと、憂とは親族などを失うこと、悩とは悲愁よりさらに激しい苦悩のこと
 輪廻的な生存の内にあるかぎり、逃れることはできない代表的な苦
 無明は漏を縁として生じる、老・死・愁・悲・苦・憂・悩など悩まされる人々は必ず欲の漏などが随っている、このなかに無明が含まれている。

自性 独自の本性・現象的存在の背後に、その基体となる不変の本質

 

 3  無明・行は過去時、生・死・老は未来時、識・名色・六処・触・受・褐愛・固執・有は現在時

無明・行を取る事によって褐愛・固執・有も取られる、褐愛・固執・有を取る事によって識などの5果が取られるから 過去の因は5、現在の因は5、未来の因は5となる(20行相・3連結・4集合)輪廻図参照


 12縁起説は惑・業・苦や流転・還滅等の染浄の価値に関係した有情の価値的縁起を、
縁によって生起するもの、つまり「これが生じる時、これが生じる」「これが生じないとき、これが生じない」という縁と縁所生との生じる様子だけを表す 
24縁起説はかならずしも価値に関係なく、あらゆる諸法が時間的空間的に関係なく諸法が時間的空間的に関係し合っている関係事項を考察する、12縁起にさらに力についても説く


2. 諸縁論の仕方 (24縁起)

1 名は名に対して6種の縁

 ①無間縁(1) 
   ものごとの変化は間がないということを語っている

  他の心を引き続いて生じさせる力が無間縁の力
間のない縁、自ら滅した後、心・心所を生じさせる縁
眼識→領受→推度などのように心の法則に従って生じさせるのはこの力が働くから

例え 輪転王の崩御により王子が間を空けず直ぐに即位するように、前に生じる名法が滅した後、後に生じる名法が間を空けずに生じさせる縁(令生縁)

一つの心が消えて、その瞬間次の心が表れるが、どんな心にも、その瞬間「自分」
いう気持ちがあるから「私」という錯覚が生まれる。
これは原因とすぐ次に現れる結果を理解していないのでこうなる

心のはたらきを無間という変化のありさまとして観察することは、邪見を破るため

魂があるなどの概念を否定する為の説でもある


②極無間縁(2)
  無間縁と同じ

              
   無間縁と、自性は同じで、名前のみが異なるもので一つの縁を相手に
  応じて2種 と説いたもので、色の生起を積集・相続(本p181相色参
  照)の2種として説いたようなもの

例え 輪転王の出家により王子が極めて間を空けずに直ぐに即位するように、前に生じる名法が滅した後、後に生じる名法が極めて間を空けずに生じさせる縁(令生縁)

 無間とは前心の直後に後心が生じる際に、この間には少しも時間的隙間が無く一つの心のように連続しているということ
<実例> (①無間縁 ②極無間縁両方の実例)
       (縁)            (縁所生)  
 相応する心所と共に五門引転  → 相応する心所と共に眼識 
 第 二 彼 所 縁      → 第 一 有 分
 第 一 有 分        → 第 二 有 分
 滅定に入る直前の       → 滅定から出た直後の
  非想非非想処善・唯作に心心所   不還果速行心心所・阿羅漢速行心
                   心所                 
 前世の死心心所        → 現世に結生心心所 
 無想有情地に結生する直前の  → 無想有情地より死んで再び生まれる
  時の欲界における死心心所     結生心心所

        
 ③非有縁(3)
   何かが「ある」という条件と「ない」という条件をいう


 自からが滅することによって後の法が生じるための力となるこれが非有縁の作用

 自性は無間縁と同じ縁力の作用の仕方が異なる
 
 例え 夜が過ぎることによって夜明けになる、炎が消えれば闇が生じる機会となる
  
 日が沈むと月が輝くように、前の心、心所、名法などがなくなること、存在しないことによって心、心所、名法などを生じさせる縁(令生縁)

 ④離去縁(4)
   一緒に「いる」か一緒に「いない」かの違い

 
 自らが去ることによって後の法が生じるための力となる 離れることによる縁
 非有縁と同じもので名称のみがことなる

 例え 日が沈むことにより月が輝くのを助ける

 夜が明けると朝焼けが始まるように、前の心、心所、名法などが滅すること、離れることによって心、心所、名法などを生じさせる縁(令生縁)

⑤習行縁(5)
  何か訓練していることが、結果に影響を与える

 同じ法を繰り返し生じさせる力が習行縁の力、即ち自分と同じ性質の法を続けて生じさせるように作用する力
 本を学習するとき繰り返し習うことによって段段と容易になるように、同じ作用を繰り返す度にそこに働く力が大きく次の法に及ぼされていく

 例え 繰り返しお香をたくと香が染み付く

 学問は前に学んだことが後に学ぶ理解の助けとなるように、前に生じた善、不善、唯作速行心は後に生じた善、不善、唯作速行心は同じ性の心を何度も生じさせる縁(令生縁)

             

欲界速行時分に7回速行が生じる場合(本p272参照)

<実例>
欲界速行時分に7回速行が生じる場合
 (縁)   (縁所生)    
 初速行 → 第二速行       
 第二速行 → 第三速行
 第六速行 → 第七速行
安止速行時分の場合、編作・近行・随順・種姓・禅に各速行が順に生じる時
 (縁)   (縁所生)    
 編作  →  近行         
 近行  →  随順 
 種姓  →  禅
定に入る時               
 (縁)    (縁所生)         
 前になる禅 → 後になる禅        
預流道路の場合
 (縁)   (縁所生)
 種 姓 → 道速行
上三道の路
 (縁)    (縁所生)
 清 浄  →  道速行

 種姓・清浄は欲界、禅・道は上二界・出世間で地が相異するが、性が同じ善であるため、その働きには影響しない

⑥相応縁(6)
  一緒にあるかないかということで影響を与える縁

      互いの間を妨げることなく働きかけ合っている力
      四つの名蘊は同起・同滅・同所縁・同基
       
 例え バター・蜂蜜・糖蜜・油を混ぜ合わせた四甘美

 四名蘊は所縁を取るとき別々の性質が性質はっきりせずに一緒に所縁を取るように生じさせたり支えたりする縁(心所4:同起、同滅、同所縁、同基が条件)

<実例>
貪根初心に相応する心所である名蘊4が一緒に生じている時
(縁・縁所生)   (縁・縁所生)  (縁・縁所生) (縁・縁所生)
識蘊・心心所3蘊   受・残り3蘊   3蘊・1蘊   2蘊・2蘊
 阿羅漢の果心の名蘊に至るまで同様

2 名は名色に対して5種の縁

① 因縁(7
「原因自体が条件になる」つまり原因そのものを一つの条件として見ている

  相応法をしっかり住(トド)める力
例え 樹には根があるため倒れず地にしっかり住まることができる
   養分や水を吸い上げる木の根が幹や枝や葉を大きくする

 因である貪、瞋、痴、無貪、無瞋、無痴が樹の根のように、関係する名法、色法を支えたり生じさせたりする縁

               
<実例> 
 (縁)          (縁所生)      
貪根所心に含まれている貪 →貪と相応する心心所・その貪根心によって
               生じる心生色
痴根所心に含まれている貪 →痴と相応する心心所・その貪根心によって生
              じる心生色
貪根所心に含まれている貪 →痴と相応する心心所・その貪根心によって生
              じる心生色
痴心所心に含まれている貪 →貪と相応する心心所・その貪根心によって生
              じる心生色
大善初心に含まれる無貪 → 無貪と相応する心心所・大善初心によって生
              じる心生色
 (無貪・無瞋・無痴は相互に縁・縁所生となる)
 心所33が生じる時
そこに含まれている無貪 → 無貪と相応する心心所・倶に生じる業生色

② 禅縁(8)
  禅定に関する特別な縁

 尋などの禅支には、所縁を至心に観察する力であり、しかも倶生法にも同じ働きをさせるように力を及ぼす、この力が禅縁の力

 瞑想すると落ち着く、それが弱い一境性(集中力)、その一境性が縁でさらに一境性を強くするなど

 例え 弓を射るとき確り狙いを定めるように、高いところから見下すとは
っきり見えるように

 山の頂上、樹の天辺に立つ人は回りの景色が良く見えるので、下にいる人に上で見ることを勧めるように、尋、伺、喜、楽、一境性、禅支法などは共に生じる名・色法を編などに集中するように生じさせたり支えたりする縁

<実例>
貪根初心・心所・心生色が一緒に生じる時
(縁)     (縁所生)
 尋 → 貪根初心・尋を除いた18の心所・心生色
      (貪には19の心所が含まれている )
 この場合尋以外の4禅支が縁になる時には、適宜に他の4支が18の心所に含まれる
 結生時には心生色のかわりに業生色を入れる


③ 道縁(9)
 道とは八正道のこと「それぞれ何かに導く、達する支えになる」という意味で道は縁になる

 正・邪の何れであってもその支に応じて、それぞれ有に導く作用をする力

 善趣・悪趣・涅槃に至らせる道のような縁、見は邪見のこと、無因心は含
まれない     

例え 旅人や乗り物にとって道は望む目的は運んでくれるようなもの

 道を歩む人が目的地にたどり着くように、正道、邪道などは共に生起するそれぞれの名・色法などを悪趣、善趣に向かわせるように生じさせたり支えたりする縁

<実例>
貪根初心には尋・精進・一境性・見が相応する
(縁)     (縁所生)
 尋 → 貪根初心・尋を除いた18の心所・心生色

④ 業縁(10)
 身口意の行動をしたくなる気持ちが業、その業が条件となる

 基の種は大きな樹の成長の縁となるように、倶生の思心所、各刹那に生る思心所などは関係する名。色・五蘊を促すように生じさせたり支えたりする縁

(1) 倶生業縁(10-1)

      

思の働きかける力、即ち加行力が倶生縁の力

例え 木の根は幹などと同時に存在しているが確り支える働きをしている

<実例>    
 貪根心が生じる場合 
(縁)           (縁所生)
倶生の思 → 貪根初心、思を除いた18の心所・貪根心によって生じる心生                            色
  (同様にして阿羅漢果まで知るべき)
大異熟心が結生作用として生じる場合
  (縁)           (縁所生)
 倶生の思 → 大異熟初心・思を除いた32の心所・結生業生色

(2) 各刹那業縁(10-2)

 刹那を異にするつまり倶生業縁は縁と縁所生は同刹那に生じるがこの各刹那縁は刹那を異にする

例え 種が芽を生じさせ種に応じて実らせる
 
 存在しない異熟(結果)をもたらす場合善・不善の思は滅してもそれは生住滅の寿命が尽きて第一義の自性が滅しただけで各刹那業縁の力は残されていて異熟(結果)をもたらす 
  例 若い時に習った知識が年をとってからも必要に応じて利用する 

  思は倶生業縁、各刹那業縁の2作用を同時になし遂げる、善・不善業縁にも相応して倶生縁も相応法に対して倶生縁の力を加え、更に未来に各刹那業縁の力を加える

例え 炎は光を放ち同時に闇も除くように

  
<実例> 
     (縁)              (縁所生)
 過去の貪根初心に相応する思 → その思によって離善地に結生した場合
                 の異熟名蘊、生起時の不善異熟眼識な
                 どの名蘊、不好業生色        

  同様にして残りの不善における縁・縁所生を知るべき
  (自然親依縁と同時に働く)

 過去の大善初心と相応する思 → それによって欲界趣地に結生した場合
                 の異熟名蘊、結生業生色・生起時の善
                 異熟眼識などの異熟名蘊、好業生色        
  (自然親依縁と同時に働く)

 色 界 善 の 思   →  色界地に結生した場合の名蘊と業生色
                生起時の異熟名蘊と業生色
  (自然親依縁と同時に働く)
       

 想離貪修習である過去の色界第五禅 → 無想有情の結生・生起時の業生
                    色に相応する思
  (自然親依縁と同時に働く)

 無色界善心に相応する思   → 無色界地における結生・生起時の異熟
                 名蘊
  (自然親依各刹那業縁)

 道速行に相応する思      → 果速行の名蘊
  (自然親依各刹那業縁の一部)

⑤ 異熟縁(11)
  結生心が後まで与える影響

         
 加行があるのが業縁の性質だが、異熟縁はその反対の性質である。
 つまり、異熟は善・不善業によって生じさせられるもので加行がない、そして倶生法にも自らの加行のない安静状態を及ぼす、このように作用する力が異熟縁の力

 心の働き方は最初に生起した、名色により変わっていく、視力が強い弱いなどは最初に生起した結果生じた目の状態(条件)によって異なる、その目の状態が異熟縁
  アビダンマに限っての使用法と考えてもよい

  同時に生じた心・心所が互いに影響し合う

  例え 完熟した実は食べるためにあり、もうそれ以上熟さない

 居心地の良いタ大樹の影の下でそよ風に吹かれて休んでいる人は気をつかうことなくのんびりしているように、善業、不善業によって生じる異熟蘊などはそれぞれの自性と同じくお互いに生じさせたり支えたりする縁

  縁がどれか一つの心となると縁所生がその他の心となる

<実例> 倶生縁と同じ

2 名は色に対して1種の縁

① 後生縁 (12)
 後から生まれたものが先にいたものに影響を与え、それで変化させる心

 縁所生の後に生じて、前に生じた縁所生に働きかける力
  
 一般に、縁が縁所生に作用するには、(1)令生力(2)支持力(3)令生・支持力の3種がある
 色が存在し続けるために心が後からエネルギーを与える関係、色の寿命の方が長いた
 め色は存在し続ける(支持縁)

  例え すでに大きくなっている木に後から雨が降り維持成長を助ける
<実例>
 初有分が生じる時、住位に達している色があるこの場合 
   (縁) (縁所生)
   初有分 ← 色
 乳幼児が乳を与えなければ、体を保たせる事ができないように業生色が次から次へと生滅相続するために心心所が後生縁の力で支持することが必要

 色が前に生じて後から名をささえる(エネルギーを与える)4 色は名に対して1種の縁

 ①前生縁(13) 
  「先に、何かが生まれていなくてはいけない」という条件

 地球上の生命は前に生じ今も存在しているように地球に生きているように、色、声、香織、味、触の五所縁:眼基、耳基、鼻基、舌基、身基、心基の六基は関係する心け前に生じ現在も在ることによって生じさせられたり支えたりする縁、色の後に心が生じると考えればいい

(1)基前生縁(13-1)は基前生依縁19-2-2と同じなので省略
(2)所縁前生縁(13-2)

 縁所生の生じる前に生じた縁が住位に至った時に、各縁所生に対して、基(本p85基の摂参照)としても或いは所縁(本p79所縁の摂参照)としても力を加える力

  例え すでに生じた太陽が後に生じた植物などを助けている

<実例> 
  現在色所縁を所縁として眼門路が生じる場合
      (縁)       (縁所生)
     現在所縁 → 眼識を初めとする眼門路心
  声所縁などを所縁として耳門路心などが生じるのも同様

  眼基を所縁として修習する場合   
      眼基   → 修習する意門速行
  耳基などを所縁とする場合も同様

  現在所縁を所縁として天眼路が生じる場合 
      色所縁  → 神変心

5 施設・名色は名に対して2種の縁

①所縁縁(14)
  対象があることを、条件とする

    心・心所は所縁に頼って生じるという関係

  例え 体の弱い人が杖や手すりが助けになるように

 色、声、香、味、触、法という六所縁を頼って心、心所である名法が生じるように支える縁

<実例>          
  眼門路が生じる時   
   (縁)        (縁所生)
 現在色所縁 → その色所縁を所縁とする五門引転心などの眼門路心心所
     各所縁は縁、各所縁を所縁とする路心は縁所


② 親依縁(15)
  影響という縁と考えてよい

 雨は全ての有情や物質に極めて強い拠り所となって縁となるように信、戒、聞法、布施、慧、欲愛、瞋恚、慢、見、身業、身苦、時節、食、人、住居などは善、不善、無記、などを生じさせるのに極めて強い拠り所となることによって生じさせたり支えたりする縁
(1) 自然親依縁(15-1)

  強く依りどころとなるように働く、縁の有する力
  かなり広い概念で、他の緑と共に働くことなく独立して働くので自然と
 言われる

  例え 雨の徳即ち雨は地上のあらゆる動植物が強く依りどころとし、そ
     れによって生育する

<実例>
 貪が生じるため、生天のための善を為し、或いはその貪を静め減するための施・戎・止観などを修習して禅・神道・道に至るこの場合 
   (縁)   (縁所生)
    貪 → 欲・大・出世間善 など
先ず貪が生じて、貪が勢いを増す場合
    前の貪  → 後の貪
貪により殺生をなす場合
    貪  →  不善
貪により異熟を得る場合、及び捨断するために道を修習して果心・唯作心が生じる
    貪  →  異熟・唯作
自分にある貪を他人が厭い・或る人の貪を別人が知り貪が生じたり善・悪の異熟・唯作が生じる場合、(瞋なども同様)
   それぞれの貪は、別人の善・不善・異熟・唯作に縁として力を及ぼす
 
信が生じる場合、信により施・戒を初め、道までも修する時
   (縁)   (縁所生)
    信 → 施などの善
信により施などを為しながら不善が生じる
    信 → 不善心
信により善・不善が生じた後、各に異熟・唯作を得る
    信 → 異熟・唯作
自分の信により他の人に信が生じたり、善・不善の異熟が生じる
   自分の信は、他人の善・不善・異熟・異熟に自然親依縁として作用す
   る、このような信は、自他に何れの善・不善・無記に対しても縁。
   戒・聞が働く場合も同様
 以下の楽・苦・人・食物・時節・住居なども、貪・信と同様

強力な善・不善業によって生起時、結生時に異熟識(心)が生じる
   (縁)           (縁所生)
   善・不善業  →  異熟識(心)とその相応心所

(2)所縁親依縁(15-2)

  縁所縁に強く依止されるので所縁親依縁と称される

  自性は所縁主縁と同じ (16-1)

所縁主縁としての所縁は能縁の心心所に対して自らを所縁とするように主導
所縁親縁としての所縁は能縁の心心所の強い拠り所となるように働く

(3) 無間親依縁(15-2)

             89心、52心所

  無間縁(1)と自性は同様で、無間縁の特に強く働く場合をいう

依 縁  縁所生が生じた時に初めて拠り所なる
親依縁  根本的に拠りどころとなる

6 名色は名色に対して9種の縁

①主縁(16)
  対象の中で主になっていることが、条件となる縁

(1)所縁主縁(16-1) (名色 → 名)

 所縁の側が能縁の心心所を主導する際の力
特に強い所縁が主となるとき、非常に強い縁のことで、対応する心も特別で決まっている
 例え 世界を支配している輪転王の例え
 色、声、香、味、触、法という所縁が主となったとき名法を自分の欲するように生じさせたりする縁力、色所縁には普通の色所縁と人を魅了する美しい色所縁の2種がある、前者は色所縁の力のみ、後者には所縁主縁の力まである
<実例> 
 8貪根心は、槇根心・痴根心・苦倶身識(付表Ⅱ受の摂参照)を除いた76世間心、それと相応する47心所、四世の好完色18(本p80参照)を重んじて所縁とする場合                      
極めて美しい色所縁を執して眼門・意門路が生じる場合           
   (縁)       (縁所生)
  色 所 縁  →  貪 速 行
世間禅を執する時 
  世間禅心心所 →  貪 速 行
8大善心が世間善17を重んじて所縁とする時、自他の善を観察、及び自らの善を観察するとき
    能縁の大善速行心 → 離・無量心心所を除いた33心所
8大善(出世間心)・4大唯作智相応心は自からの9出世間法を重んじて所縁とする
  阿羅漢道・果・涅槃 → 大唯作智相応心心所
8出世間心が涅槃を重んじて所縁とする場合
  自からの涅槃 → 道・果及びそれと相応する36の心所

(2)倶生主縁(16-2)(名 → 名色)  

                        

 4主の中、何れかが主となって倶生の心心所を支配するが、この支配力として働く力  

 

 意欲、精進、心、慧の法が主となったときに共に生じる名色法を自分の欲するように生じさせ支えたりする縁
<実例>
 貪根初心は19心所が相応するこの場合心が主となれば  
   (縁)      (縁所生)
    心 → 意欲・精進を含む19心所・心生色 
意欲が主となれば
   意欲 → 精進・観察(尋・伺心所)を含む19心所・心生色

② 倶生縁(17)
  「一緒に生まれる」ということ、現象が生まれる条件を縁にしている
   自らが生じれば縁所生を同時に生じさせるように働く力
   四名蘊(受、想、行、識)、四大(地、水、火、風)、結生心、心
  所、心基などは自ら生じると同時に縁所生を生じさせたり支えたりする
  縁

第一の場合

 同時に生じた心・心所が縁になれば他は縁所生となる

  例え 慧炎が生じれば光も同時に現れてくる

第一の縁所生として示される名蘊及び色は下記の2種に分けることができる
 ① 名蘊相互
  四蘊地に生じる名蘊及び五蘊地において色を生じさせない眼識などの名
  蘊
 ② 名蘊・心生色・結生業生色
  五蘊において色を生じさせる生起名蘊及び結生名蘊

<実例>
 四蘊地における結生時に無色異熟心心所が生じる時
 (縁)   (縁所生)          (縁)   (縁所生)     
  識蘊 →  残りの名蘊3   同時に   名蘊3  →  識蘊
  受蘊 →  残りの名蘊3
   四蘊地における生起時、五蘊地における色を生じさせない眼識が生
     じる場も同様
 五蘊地における結生時に名蘊及び業生色が生じる時
 (縁)   (縁所生)           (縁)   (縁所生)
 識蘊 → 残りの名蘊3と業生色  同時に  心所名蘊3 → 識蘊と
                               業生色
   五蘊地における生起時に貪根の心心所である名蘊と心生色が生じる時
 (縁)   (縁所生)           (縁)   (縁所生)
 識蘊 → 残りの心所名蘊3と心生色 同時に 心所名蘊3 → 識蘊と
                               心生色
  死心に至るまで同様
 第ニの場合

                依止色

  四大種のどれかが縁となれば他は縁所生となるということ

  依止色は四大種に寄り添って存在している(本p175大種と依止色参
                                照)

<実例>
 心生色の中、八・九集の色聚が生じる時、その中に含まれている
(縁)   (縁所生)          (縁)    (縁所生)
 地 → 残りの大種3と依止色  同時に  大種3と依止色 → 地

第三の場合

                            
<実例>
 結生名蘊と心基が生じる時、五蘊地においては、結生心心所と業生色聚に心基(本p193参照)が含まれているので
  (縁)       (縁所生)      (縁)   (縁所生)
結生心心所である名蘊4 → 心基   同時に  心基 → 結生名蘊4

                            

③ 相互縁(18) (名色 → 名色)
  相いにつまり相互に縁となる

四名蘊(受、想、行、識)、四大(地、水、火、風)、結生心・心所と心基などは自ら生じると同時に縁と縁所生は相互に支える縁

第一

          
第二

     
第三

      
  倶生法同志が互いに生じるよう働く力

  相互縁は倶生縁に含まれる

 例え 三脚の足が互いに助け合って、1本でも折れれば3本とも立つことが
     できない

<実例>
 倶生縁の箇所を参考にする、相互縁は縁の自性として上げたものが、そのまま縁所生となる

④依縁(19)
  影響という縁と考えてもよ、条件でもあり原因でもある

 四名蘊(受、想、行、識)、四大(地、水、火、風)、結生心・心所、心基:眼識、耳識、鼻識、舌識、身識などは対応する基などに依止されることによって生じさせたり支えたりする縁

(1)倶生依縁
    倶生依縁(19-1) 倶生縁(17)と同じ自性

(2)前生依縁
(2-1)基前生依縁(19-2-1) (色 → 名)

                       
 依縁所生の依り所として働く力が依縁の力、地大種と基色も倶生色・七識界の依り所として働く

 残りの大種と名蘊も倶生の名色に対して依り所として働く
    
 例え 大地が樹木の拠りどころとなるように画布が画にとって依り所とな
    るよう

<実例>   
    (縁)           (縁所生)
過去有分と同時に生じる眼浄色  → 眼識
 耳・鼻・舌・身なども同様
結生と同時に生じた心基     → 結生の後に生じる初有分
前心と同時に生じる心基     → 後に生じる心
滅定の最後1心刹那に生じた心基 → 定をでた直後に生じる
                  不還果速行・阿羅漢果速行
 死心の前17心刹那目の生位には最後の六基が生じるので、次の心から死心までの心は、その最後の六基に依止する
   (縁)  (縁所生)
 上記の六基 → 心心所

 


       
(2-2)基所縁前生依縁 (19-2-2)(色 → 名)

 一つの心基が基・所縁・前生・所依を兼ね備えているため基所縁前生依縁という

⑤食縁(20)
  食べ物(条件)によって、体も心も変わるということ
   段食色は身体を生じさせ支えたりする縁、触、思、識という名食3種
  は共に生じる名・色に生じさせたり支えたりする縁
 
(1)色食縁(20-1) (色 → 色)

                  
  縁所生法を保持させるよう働く力
   偏食をすれば調子が悪くなるなど、心も同じ、

 (2)名食縁(20-2) (名 → 名色

       

<実例>                    
貪根初心に相応する思、心生色が同時に生じる時 
 (縁)    (縁所生)
  触 → 心・触を除いた18心所と心生色
  思 → 心・思を除いた18心所と心生色
  識 → 19心所と心生色
結生作用をして各異熟心心所や結生業生色が生じる時
  触 → 心心所と結生業生色

⑥根縁(21)
  根は場合によっては認識に支配的な影響をあたる
  
 眼、耳、鼻、舌、身、心などの根法は共に生じる名・色法へ支配することによって生じさせたり支えたりする縁

(1)前生根縁 (色 → 名)(21-1)

支配力として働く力
    
例え 大臣は自分の所管だけを管轄できるように

<実例> 
  (縁)    (縁所生)
  眼基 → 眼色と共一切心心所
   残りの耳基なども同様

(2)色命根縁 (色 → 色)(21-2)

 名根は自分の属する色聚に含まれている業生色を支配する力が色命根縁
 <実例> 
     (縁)    (縁所生)
    命根 → 命色を除いた業生色9
     耳十集なども同様

(3)倶生根縁 (名 → 名色)(21-3)

   倶生名色法を支配する力
<実例> 
 貪根初心、心所、心生色が生じる場合
      (縁)           (縁所生)
  貪根初心に含まれている命心所 → 残りの心心所・心生色

⑦不相応縁(22)
  一緒にあるかないかということで影響をあたえる縁

 (1)前生不相応縁(22-1)
      基前生依縁(22-1-1)19-2-2と同じ自性
      基所縁前生依縁(22-1-2)19-2-1と同じ自性 

 (2)後生不相応縁(22-2)
      後生縁17と同じ自性

 (3)倶生不相応縁(22-3)

               

 倶生不相応縁法は、倶生不相応所生法と同時に生じても、同時に相関関 係を持たなくても働く、相互に相応関係を持たないように働く力
   
例え 
 甘い・酸っぱい苦い・辛いなど一緒の料理に味付けされていても別々に働くように、眼基、耳基、鼻基、舌基、身基、心基、結生心、心所などの名・色法は同時に生じてもお互いに相応せず生じさせたり支えあったりする縁
   物質と物質は不相応なのでいちいち説かない
   物質と心は不相応つまり名色の関係

<実例>                  
 貪根初心心所蘊によって心生色が生じる時
   (縁)  (縁所生)
   4つの名蘊 → 心生色
 結生時に大異熟初心心所名蘊とその業生色が生じる時
   結生名蘊4 → 結生業生色

    心 基  →  結生名 

⑧有縁(23)
   何か「ある」という条件と「ない」という条件  

(1)倶生有縁(23-1) 3種の倶生縁17と同じ自性      
(2)前生有縁(23-2)
   (2-1)基前世有縁(23-2-1)13-1と同じ自性
   (2-2)所縁前世有縁(23-2-2)13-2と同じ自性
(3)後生有縁(23-3) 後生縁12と同じ自性     
(4)食有縁(23-4) 色食縁21-1と同じ自性
(5)根有縁(23-4 )色命根縁21-2と同じ自性

    (1)~(5)は自性は同じでも縁の力が異なるだけ。
 ただ存在することによって働く力が有縁の力。この場合縁、縁所生は生位・住位・減位の何れの刹那にあっても、共に現在していなければならない
  
 五有縁と関係する名・名法へ縁所生に有るということで生じさせたり支えたりする縁  

 例え 大地が存在することによって同時に草木がこれに依止することができるように縁が存在していることがそのまま縁所生の力となる

⑨不離去縁(24)
  一緒に「いる」か一緒に「いない」かの違い

 (1)倶生不離去縁(24-1) 3種の倶生縁17と同じ自性   
 (2)前生不離去縁(24-2)
   (2-1)基前世不離去縁(24-2-1)13-1と同じ自性
   (2-2)所縁前世不離去縁(24-2-2)13-2と同じ自性
 (3)後生不離去縁(24-3)後生縁12と同じ自性
 (4)食不離去縁(24-4)色食縁21-1と同じ自性          
 (5)根不離去縁(24-5) 色命根縁21-2と同じ自性
   有縁と同じ自性
  
  縁の力が異なるだけで、自らが去らないことが縁所生に対して力となる
  
  五不離去縁と関係する名。色法へ離れられないということで生じさせた
 り支えたりする縁

  例 大海が減し去らないことによって、これに依止するあらゆる魚が生存するこ
   とができる

施設
 「知らしめるものと」いう意味心で、心中に現れる概念のことで、心・心所・色・涅槃が実法とされるのに対して仮法とされる
(1)儀施設  我々に理解させるために表わされる意義で、概念に対して
  種々の名(声施設)を与えて知らされるもの 名前が示すもの、車など
接合施設  無数の大種が変化して一大平面を形造っている様子を見て、
 地となづけられた、同じく山・樹・河・海などこのように名づけられた概
 念を、大種の接合した状態に基づくからこういう
積聚施設  材木などの材料が集合することによって成り立っているもの
  を、心の中で概念化し、家・馬車・牛車・村などとなづけられたもの
有情施設  五蘊の集まりを心の中で概念し男・女・人などと、名づけら
  れたもの
方位施設  太陽などの周転に基づいて概念化されたもの 北とか南など
  の方位⑤時 施設  太陽などの周転に基づいて概念化されたもの 時
  間のこと
虚空施設  大地の虚ろになっている状態を名づけたもの、つまり穴が成
  立するのは、周囲の岩・土(地大種・色聚)などが一定の空間を接触し
  ないこと、この状態に基づいて概念化されたもの 空間のこと
遍施設  それぞれの大種にもとづいて概念化されたもので40業処中の地
  遍・水遍など、例えば地遍と称しても第一義法の地界でなく地界が主に
  なっている土にすぎない
相施設  修習の順に基づいて概念化されたもので、遍作相、取相、似相
  などをいう 光りなどが瞑想などで見えるなど(修習に関することで本
  性・性・能・状態のない状態)
安般施設  出入りの息
色施設  青遍、黄遍など
依止施設  第一義法によって名づけられる
比較施設  第一に対する第二・第三 長に対する短、などの比較
 (2)声施設  我々に種々の意義・概念を知らせる「音声」で、その名
  称・呼称そのもののこと 名前のこと 声施設は我施設を描く、指し示
  す
存在施設  義施設が第一義適(実体適)に存在している場合の声施設
  で、色・受・想などがこれに当たる。例えば声施設である色が示す義施
  設28色は、第一義適には存在しているものであるなど
非存在施設  地・山などが示すところの義施設は第一義的に存在すもの
  でない
存在非存在施設  六神通は第一義的に存在するもので、神通を有する人
  は第一的には存在するものではない、故にこの2つの状態を合わせ持っ
  ている六神通者をいう
非存在存在施設  女は存在せず、声は存在するから、女の声をいう
存在存在施設  眼浄色も識も共に存在するから
非存在非存在施設  王も子も共に存在するものでないから
 

Ⅸ. 摂業処分別

業処 坐禅観法(禅定)の所縁(対象)又その所縁によって得られた坐禅観
   法そのものを指す

 

1. 止(サマタ瞑想)業処の仕方

  止とは禅定によって精神統一・精神集中をはかることで、その対象手段
 としての業処に下記の40種が数えられる
(1) 10  それぞれの精神集中の対象を人工的・人為的に作ってこれ
        を遍く見ること第五禅まで
  ①地遍  ②水遍  ③火遍  ④風遍  ⑤青遍 
  ⑥黄遍  ⑦赤遍  ⑧白遍  ⑨虚空辺  ⑩光明遍
① 地偏:食後の随民を除去して静かな大地に独坐する。大地に大皿の大きさの円を描き、それを所縁として「地面・・」「地面・・」とその名を念じながら随観する。やがて意門作用において眼を閉じても眼を開いた時と同じように心の中に地面があらわれる段階へとすすむ。次に地面を直接目にすることがない場所に移動する。ここで再び独坐をはじめ、地面を想念しながら所縁から心が離れないように、思を打ち込み繰り返し思を打ち込む。その結果、地面という実像から離れて影のように概念化された地面があらわれてくる。さらに集中を続けると所縁がより明瞭化され、この過程の中で五蓋が一時的に鎭伏され、一点の曇りもない、ちょうど黒雲も中から出た満月の如くの段階に達し、近行から安止定へとすすむ。 地編は実際の土の色で光とは異なる
水偏:川・池・沼・湖などの水を所縁として「水・・」「水・・」とその名を念じながら随観をはじめる。以後の修習は地遍の如く、所縁に打ち込み、近定から安止定の段階へすすむ。
火遍:燈火などの火を所縁として「火・・」「火・・」とその名を念じながら隋観をはじめる。以後の修習は地遍の如く。
風遍:木葉・竹の葉・頭髪などが風に動き揺れる、あるいは身体に風が触れるなどを所縁として「風・・」「風・・」とその名を念じながら随観をはじめる。以後の修習は地遍の如く。
青遍:青色の花・布・葉色物などを所縁として「青・・」「青・・」とその名を念じながら随観をはじめる。以後の修習は地遍の如く。
黄偏:黄色の花・布・葉・色物などを所縁として「黄・・」「黄・・」とその名を念じながら修習をはじめる。以後の修習は地遍の如く。
赤遍:赤色の花・布・葉・色物などを所縁として「赤・・」「赤・・」とその名を念じながら修習をはじめる。以後の修習は地遍の如く。
白遍:白色の花・布・葉・色物などを所縁として「白・・」「白・・」とその名を念じながら修習をはじめる。以後の修習は地遍の如く。
光明遍:光を所縁として「光・・」「光・・」あるいは「光明・・」「光明・・」とその名を念じながら修習をはじめる。以後の修習は地遍の如く。
限界虚空遍:壁の穴・鍵穴・窓の隙間などの空間を所縁として「虚空・・」「虚空・・」とその名を念じながら修習をはじめる。以後の修習は地遍の如く。

(2)不浄 10  屍体が放置・腐敗・散乱・白骨化していく無惨で汚いさ
         まざまな状態を観察念想するもの 初禅まで
  ①膨張屍  ②雑青屍  ③漏膿屍  ④切断屍  ⑤食残屍  
  ⑥散乱屍  ⑦斬刻散乱屍  ⑧血塗屍  ⑨蛆充満屍  ⑩骸骨屍

(3)随念 10  それぞれの対象の徳や状態をくり返し念ずる修習
仏随念  応供などの仏徳を所縁として、くり返し念じること 仏
      像ではない
法随念  経典を初めとする道・果・涅槃などの法徳を所縁として、くり
      返し念じること
僧随念  聖僧伽の徳を所縁として、くり返し念じること
戎随念  自己の戎徳を所縁として、くり返し念じるこ
捨随念  自己の施捨の徳を所縁として、くり返し念じること
天随念  自己に備わっている信などの徳を所縁として、くり返し念じる
      こと
寂止随念 一切苦の寂減である涅槃の徳を、くり返し念じること
身起随念 毛髪などの32の身分を所縁として、くり返し念じること
死随念  死という思いうかべる、死という法は全て生命のかかわる、そ
      の法則を想いうかべる
入出息随念 入息出息を念じること、くり返し念じること 第五禅念は
      所縁として心所であり、この念の所縁(業処)が仏徳など
  
(4)無量 4  それぞれの無量心をもって観想すべき対象をいう
  あらゆる有情を慈しんで楽を与えたいと思うこと 自性は無瞋心所
  怨みが無く、苦しんでいる人(生命)を心から同情して、その苦し
    みが無くなることをいのる
  嫉妬心が無く、ともに喜び、いつでも裕福であること 幸福な命を
    対象とする 幸福な生命を対象とする
  所縁の有情施設に対して無関心であること、即ち「一切の有情を自
    己とする」と見ること 自性は中捨心所

 ① 慈の修習:慈の修習にとって貪欲は近い敵、瞋恚は遠い敵と説く、この修習の目的は、瞋恚を遠離させ忍辱に心を相応させることにある。

 初心者は先ず自分自身に対して慈の修習を行うべきである。と説かれる如く、他の有情たちも怨恨なく、瞋害なく、痛苦なく、安楽にして幸福に生活せよと自分を譬えにして慈の修習に励むべきである。そして、尊敬する人⇒強く愛する人⇒無関係な人⇒怨敵者、の順に各段階において慈しみを受けるべき有情施設を所縁として、心を柔軟適業にして慈の修習に励むべきである。しかし、その中で異性と死者を支援としての慈の修習をおこなっても決して安止定も近行定も得ることができない為避けるべきであると説く。
この中で一番難しいのは怨敵者に対する慈の修習である。清浄道論では十段階に分けて説かれている。要約すれば次の如くなり。

  1怨敵者に対する慈の修習 十段階
   人によっては第一段階だけで怒りが寂滅することもあり、又、別な人
   は第十段階まですすんでようやく瞋根を除去できる場合もある。

[第一の段階]:怨敵者から受けた害悪を思い出し瞋恨が生起した時、前の
 人々(尊敬する人、強く愛する人、無関係な人)などを所縁として得た禅
 定に再び入出定して、その瞋恨を除去すべきである。しかし、まだ怒りが
 収まらなければ次の段階へすすむ。

[第二の段階]:①他人の美貌に対する嫉妬、②他人が苦しみに臥せるを欲、
 ③他人の財産に対する嫉妬、④他人の幸福に対する嫉妬、⑤他人の名声に
 対する嫉妬、⑥他人に友人がいることに対する嫉妬、⑦他人が死後善趣地
 に行かないようにと欲す、など七つの理由で怒る人に対して、次の仏陀の
 教えを自分自身に対して教えるべきである。

[第三の段階]:怨敵者の身・口・意行の中で、もし善い点が例え一つでもあ
 れば、その一点のみを随念する。他の悪行の部分を思念しない。又、彼の
 三行のどれもが善行でなければ、「彼は今は人間界にいるけれども、死
 後、これらの悪業によって地獄に堕ちるだろう」と非心を生起させ、この
 非心によって瞋怒を寂静させよ。又、彼の三行が寂静である場合は、その
 中で自分が欲するものだけを選び随念する。

[第四の段階]:次の如く自己を訓戒すべきである。
 ◎ もし怨敵者が汝の身を苦しめた時、その怨敵者の力の及ばない領域
 (=心)にいる汝の心も同じように何故苦しめる必要があるのか?
 ◎ (出家をする時)大恩ある両親や知人や親類を泣き顔と共に捨て去った
 汝が、輪廻からの解脱に大不利益をもたらす忿怒を何故捨て去らないの
 か?
 ◎ 汝が守る諸戒の根本を崩すような忿怒を汝は心の中に(今もまだ)留め
 ている。汝のような暗愚な者はこの世にいるだろうか?
 ◎ 誰かが大きな悪行を犯したと汝は怒るが、汝自身も昔同じような行為を
 したいと思ったことがあるはずではないか?
 ◎ 誰かが汝を怒らしたいために不快なことをおこない、それに乗せられて
 汝が怒れば、相手が思うがままではないか、汝の敵が大いに喜ぶではない
 か?
 ◎ もし汝が怒れば、その怨敵者を苦しめる、あるいは苦しめないに関係な
 く、間違いなく忿怒の苦によって汝自身こそ[必ず]悩害させられる。諸敵
 が激怒によって不利益な悪趣地を求めるのに、何故汝も忿怒して彼らの真
 似をしないのか?
 ◎ 汝が怒るために相手が汝を嫌ったならば、汝はその怒りを[すぐに]断ぜ
 よ。何故に不要の悩害を作るのだ。
 ◎ 汝に不快を感じさせる諸蘊の法は刹那的なる故に、今ではすでに消滅し
 ている。それなのに汝は一体誰に対して怒るのだ。
 ◎ 人、誰かに苦痛を与えようとしても、その苦がはずれると誰も苦しむこ
 とはない。汝が苦しめられるのは汝自身の中に苦の原因があるからであろ
 。それなのに何故汝は怨敵者を怒るのか。

[第五の段階]:瞋恚を因とする業は、欲界善趣地から遠く離れて悪趣地に導くだけである。かくの如く、先ず自分自身が業を所有していると観察し、そして他人の業も観察する。

[第六の段階]:仏陀の過去世における徳を随念する。
 a. 殺されても怒ることがなかった。
 b. 鞭で打たれ手足を切断されても怒ることがなかった。
 c. 手足と首を切断されても怒ることがなかった。
 d. 猟師に毒矢を射られた時も怒らなかった。
 e. 石を投げられ頭を砕かれた時も怒らなかった。
 f. 毒薬を身体に塗られるなどの虐待を受けた時も怒らなかった。
 g. 蛇使いに悩まされた時も怒らなかった。
 h. 子供達に虐待された時もその子供達をあわれみ怒ることがなかった。

[第七の段階]:長い輪廻において自分の血縁関係を観察すべきである。「過
 去世において自分を他人との関係がまったく無関係であることを見い出す
 のは難しい。この怨敵者も過去世において自分を育み養育してくれた母親
 であったかもしれない。又、苦労して養育してくれた父親であったかもし
 れない。自分の兄弟・姉妹・息子・娘となり、いろいろ奉仕をしてくれた
 かもしれない。それ故、この怨敵者に対して自分が心を瞋怒させることは
 筋違いである」と想起する。
[第八の段階]:瞋心を滅すると得られる次の十一の利益を観察すべきであ
 る。
 ① 安眠ができる。
 ② 気持ちよく目覚める。
 ③ 悪夢を見ない。
 ④ 人々に愛される。
 ⑤ 人以外の生き物にも愛される。
 ⑥ 諸天が守護する。
 ⑦ 火・毒・剣の難を受けない。
 ⑧ 精神の集中がすぐにできる。
 ⑨ 顔色がよい。
 ⑩ 迷わず命を終える。
 ⑪ この世で阿羅漢になれなくても来世は少なくても梵天界に結生する。

[第九の段階]:怨敵者の心身を所縁として三十二身分観察・四大要素・五
 蘊・十二処・十八界などくわしく分析すべきである。その結果、錐先にマ
 スタードの粒をのせるが如く、空に絵を描くが如く、怨敵者のどの部分に
 対して怒るのかなどが明瞭でなくなり、怨敵者に対する忿怒を置く場所が
 ないことをさとり瞋恚を寂滅させる。

[第十の段階]:怨敵者に布施の分与をなすべきである。
 『布施は、まだ調御していない人々を調御する。何処においても布施の目
 的を成就するものなり。布施と優しい言葉によって布施をする人は頭を上
 げ、布施を受け取る人は頭を下げる』と。この教えによって自分の怨敵者
 に対する害意は一方的に寂滅する。又、その怨敵者が過去世から抱き続け
 ていた忿怒も、その刹那において直ちに寂滅する。
[平等慈の修習]
 似相段階にはいり所縁を概念化させた人、あるいは初禅などによって安止
 定を得た人は、自分・愛する人・無関係の人・愛せざる人などの四者の間
 にある壁を崩壊させて、人間界も天界も差別なく、怨恨なく、瞋悩なく、
 平等に慈倶心を満たすべきである。

悲の修習:異性と死者は永久に非の所縁とはならない。又、世俗の憂悩は
 非の修習にとって近い敵、害は遠い敵であると説く。自分⇒愛する人⇒無
 関係な人⇒怨敵者の順に各段階において苦悩している有情施設を所縁とし
 て同情の念を起こすべきである。又、例え財産を得て今は幸福であって
 も、その人は身・口・意による善行をなさない故に、死後、欲界悪趣地に
 堕ちて多くの苦憂を受ける。あるいは親族の志望・病気・財産を失うなど
 の災難に遭遇しなくても、まだ輪廻の苦しみから解放されていない故に不
 幸であると四者を悲する。そして、慈の修習と同様に四者の間にある壁を
 崩壊させて安止定を増大させながら瞋恨を寂滅させる。この悲の修習は慈
 の修習と同様に11の利益などが得られる。

喜の修習:異性と死者とは絶対に喜の修習の所縁とならない。又、世俗の
 喜は、喜の修習にとって近い敵、不楽は遠い敵であると説く。慈と同じ修
 習によって安楽な有情施設を所縁として、五禅の前の第四禅によって安止
 定を増大させる。又、慈の修習と同様に11の利益が得られる。

捨の修習:世俗の無智捨は捨の修習にとって近い敵、貪欲と瞋恚は捨と全
 く異質である故に遠い敵であると説く。捨の修習を望む人は、先ず無関係
 な人を所縁として捨を生起させるべきである。即ち、不苦不楽の有情施
 設を所縁として、無関心であること、一切有情は業を自分自身の中に有す
 ると見る。次に、愛する人・もっと愛する人・怨敵者・自分という四者の
 間にある壁を崩壊させて混じり合い、それぞれの区別がなくなった相を随
 観する。この修習によって地遍において説かれたのと同じ方法によって第
 五禅が生起する。そして慈と同様に11の功徳が得られる。

(5)想 1  托鉢の苦労など、食物に関する煩いを観づることによって生
      ずる食物の厭う想
  食厭想

[四種の食]
1. 段食:食べ物に含まれている滋養素。人は過去業によってこの世に生ま
 れるが、業のみでは生きることができない。この段食という食べ物を食べ
 て初めて生きることができる。
2. 触食:受である異熟を生じさせる触。食べ物という色所縁が眼門にあら
 われると、すぐに触が生じて好・不好所縁を感受して、次に愛(渇愛)が
 生じて増大する中でいろいろな取がおこなわれ、有の相続につながる故、
 有情の輪廻という有の相続が長いのは、触食である触が主となっているた
 めである。89心に相応する触の心所。
3. 意の思食:この思食は、有から次の有へと結生させては、異熟色を生じ
 させる。特に五蘊の相続に関係が深いと言われる。89心に相応する思の
 心所。
4. 識食:この識食は、共に生じる名と色とを生じさせ、五蘊の相が続くよ
 うに支える。89心を識食という。

[第一の様相]:たく鉢の道中において、糞・尿・睡・痰・汚水・泥水などに
 注意を払い、道端では象・馬・牛・人間・蛇・鶏の死骸を見る。それから
 放つ悪臭が鼻をつくなど行乞に関する煩いを観想する。
[第二の様相]:食べ物を得るために通過し、眺め、忍ばなければならない遍
 求に関する煩いを観想する。
[第三の様相];受用した食べ物を指で掻き混ぜ、それを小さく丸めて口に入
 れる。口の中ではそれに唾や歯垢も混じ合い犬の吐瀉物の如くに嫌悪すべ
 き状態となるが、自分の眼で見ない内に胃の中に下るなど受用に関する煩
 いを観想する。
[第四の様相]:受用した食べ物が身体の中にはいると胃液・肝汁などの分泌
 物と混じり合い腐敗したヨーグルトのような状態となるなど分泌に関する
 煩いを観想する。
[第五の様相]:胃に食べ物がある状態がちょうど糞壷の如くであると貯蔵に
 関する煩いを観想する。
[第六の様相]:不消化により極めて嫌悪な悪臭が胃の中にあるなど不消化に
 関する煩いを観想する。
[第七の様相]:消化された食べ物が黄泥の如くとなり、やがて糞と尿に分か
 れて直腸と膀胱を満たすなど消化に関する煩いを観想する。
[第八の様相]:よく消化されれば髪・毛・爪・歯などの垢となり、不消化で
 あれば病の因となるなどの結果に関する煩いを観想する。
[第九の様相]:美しく盛り付けられた食べ物は一門から入り、九門から排出
 される。みんなで楽しく食べる豪華な料理もその排出時には独り便所の中
 にはいり、その悪臭に鼻をつまみ顔をゆがめる。美味しい食べ物も一夜を
 過ぎれば、すべて不廃物となるなど排出の煩いを観想する。
[第十の様相]:食べ物を食べる時、手・唇・舌・歯を汚す。やがて歯垢・
 唾・痰となり、眼垢・耳垢・痰・糞・尿となって汚れ、そのため汚れた各
 門を毎日洗い清めなければ快適とならないなど塗著に関する煩いを観想す
 る。

食に関する十の様相を観想した結果、次の四つの功徳がある。
  a. 味愛に対する執着が減少する。
  b. 貪欲をよく知る故に色蘊も遍知する。
  c. 不消化の観察によって身起念や不浄想の修習もおこなわれる。
  d. 現世において悟りを得ることができなくなっても来世は欲界善趣地に
   結生する。

(6)差別 1  この身体は地・水・火・風の要素(四界)より成るものに
        過ぎないと、分析的に観ずる修習
  四界差別
(その1)内の地界:髪・毛・爪・歯・皮・肉・腱・骨・骨髄・心臓・肝
  臓・肋膜・脾臓・肺臓・腸・腸間膜・胃・糞・その他身体の内に堅く固
  態にして我・我所なりと執取せられたるもの。
(その2)内の水界:胆汁・痰・膿・血・汗・脂肪・涙・唾・痰・関節滑
  液・尿・その他身体の内に水あるいは水態にして我・我所なりと執取せ
  られたるもの。
(その3)内の火界:熱くなるもの・皺や白髪など老いるもの・燃焼するも
  の・食べ物などを消化液状化するもの・その他身体の内に火あるいは火
  態にして我・我所なりと執取せられるもの。
(その4)内の風界:嘔吐・ゲップなど上に放出する風・大小便など下に放
  出される風・腸外風・腸内風・静脈を通じての肢体循環風・入息出息・
  その他身体の内に風・風態にして我・我所なりと執取せられるもの。

(7)無色 4  無色界の4つの状態をそれぞれ観ずる修習
  ①空無辺処   ②識無遍処  ③無所有辺処  ④非想非非想処

適合の別
 貪性者に対して貪を捨断するのに最も適している 十不浄・身起念
 瞋性捨に対して瞋を捨断するのに最も適している 四無量・青・黄・赤・
  白4編
 痴性者・尋性者に対してはその騒ぎ回る心を最もよく静められる 入出息
  念
   上記の4つの性質の者はそれぞれ適合する業処は、それらの人達と反
   対の心が生じるから
4信性者には更にその信を深める 仏・法・僧・戎・捨・天の6随念
5覚性者には更にその信を深める 死随念などの深い智を要する業処
   上記の2つの場合その善き性質を更に向上させるのに適した業処
 地・水・火・風・虚空・光明の6編と四無色との10業処はどんな性質の者にも適している

修習による別
 1編作修習 修習の始めですべての業処はここから始まる
 2近行修習 安止修習の近くにあるのでいう
       仏随念などの10業処は、近行修習まで達するが、安止修習ま
       では達することができない
 3安止修習 それぞれの所縁に安止する禅・道・果をいう

禅による業処の区別
 1十編と入出息念 5禅(色界禅)の所縁となる
 2十不浄と身起念 初禅の所縁となる施設を業処とする 
 3慈・悲・喜の3梵住 色界の下4禅の所縁となる
 4捨、梵住 5禅(色界禅)

境による別
 1編作相・取相 すべての業処において、適宣に仮設として必ず得られる
 2似 相    10編・10不浄・身分・入出息

修習と相との結合
 ①修習の最初の段階にある所縁 →遍作相(円形の地など)その心を遍
                  作修習
 ②心ではっきり捉えた所縁   →取相(眼を閉じても見える)その心を
                 遍作修習
                     (①よりよく定まっている)
                                                  
   五門作用の所縁から意門作用の所縁(法境)になったもの             
 ③取相と形も大きさも等しい別の所縁が心に現れて来ている
             →似相(修習の力によって現れて来た施設法)
   ここではじめて禅定の所縁(対象)となる
   似相が現われて以後  →近行修習という(色界禅に近い)
   五禅支が明瞭に現れて働きはじめ、五蓋が一時的に止息する
 ④似相を所縁とする近行修習を続けると速通者 →安止修習(色界禅)に
                        達する
                    達通者 →その似相を保ち続ける
                        よう努力すれば色界禅
                        が生じる                 

色界禅の生起

 ①地遍 ― 遍作相 ― 遍作修習
 ②地遍 ― 取 相 - 遍作修習
 ③地遍 ― 似 相 ― 近行修習
 ④地遍 ― 似 相 ― 安止修習(色界初禅)

 <初めて安止を得る場合の禅路>

 ―初禅善心
 ③で過程で欲界智相応善心(31)(32)(35)(36)の随一が中心的な速行作用をはたす、初禅から第四禅までは喜倶の善心(31)(32)が第五禅から非想非非想処までは捨倶の善心(35)(36)が中心となる、この似相が現れる前後の状態を欲界定と言う、④では五禅があつまり、色界五禅禅心(55)の速行作用のよって安止定がはじめて生起する

 五自在  引転・入定・在定・出定・観定
  引転自在 禅定に心を引転させることが自由にできる(自由に初禅定は
       意門引転が生起できる) 道順を記録しておく 順番に追っ
       て理解しておく
  入定自在 入定したり意欲が生じれば直ちに禅心に達することができる
       (自由に入定することが出きる)
  在定自在 有分を制して禅心相続を欲する限り続けることができる(期
       間を決意することができる)
  出定自在 予定した時間を超えづに入定から出られる(自由に出定でき
       る)
  観察自在 引転自在が得られれば同時に得られる(容易に五禅支を観察
       することができる) 禅定の内容(心の状態)を観察 後で
       観察する

第二禅を得るには修習を繰り返し重ね五自在を獲得し、禅支を繰り返し観察していると尋を厭うようになり尋がなくなる、そこで已に得た似相に対して遍作修習、近作修習の順に修すれば第ニ禅という安止修習が生じる。
第三禅を得るには尋・伺がなくなる。

  ① 初禅に対する欲求を捨断する前が遍作修習
  ② 初禅に対する欲求を捨断する後が近作修習

   ①似相 ― 遍作修習
   ②似相 ― 近作修習
   ③似相 ― 安止修習(第ニ禅) 第三禅 第四禅 第五禅も生じる



無色界禅の生起
 身体と心のはたらきとが分離した心

第五禅を五自在になるまで修した後
  ①遍(似相)をそのまま所縁とせずに、色界禅の所縁である遍色(遍作
   相の物質つまり地遍など)を離れるその遍にたいして「空は無辺、空
   は無辺と」念じると、
   この遍が消滅してすべてが空となるこれが遍作修禅
  ②更に修習すれば第五禅に対する欲求が無くなって近作修習に入る
  ③近作修習を続け、無色界という空無辺処定(安止修習)に達する
<空無辺定の生じかた>
   ①空所縁 ― 遍作修習
   ②空所縁 ― 近作修習
   ③空所縁 ― 安止修習(空無辺処)

(1)を所縁として、(2)を念じて、(3)をとる(4)は(3)の名前

<四無色界定の生じ方>
(1)空施設所縁  →  初無色識所縁  →  無所有施設所縁  →  第三無色識所縁
(2)空は無辺    識は無辺    何も無い     これは寂静
(3)初無色     第ニ無色    第三無色     第四無色
(4)空無辺処    識無辺処    無所有処     非想非非想処

上記のように下位の定に止まることなく一層寂静な方に向かう

神通の生起
 色界第五禅の定力が強くなる → 慧が神通の段階に達する

  禅の完成した人 → 道に達することや五禅を得る → 神通
  上記以外の人 →  一切の遍を所縁として9つの禅に度々入定すること
            によって得られる

神通
 神 遍   多身・一身などに化作すること
 天 耳   諸天の耳のように、遠い声、小さい声を聞ける
 他心知  他人の心を読める
 宿住随念 前世の出来事を考え知ることができる
 天 眼   天人の眼のように肉眼では見えない遠い所や微妙な色を見るこ
      とができる

[悟りを得る二つのパターン]
(一) 観⇒悟り。
(二) 止⇒観⇒悟り。※仏陀はこのパターンによって悟りを得られた。


2. 観(ヴィパッサナー瞑想)業処の仕方

  観という智慧の働きによる禅定修行のことで、凡夫から最高位の阿羅漢
 にいたるまでの実践過程の心作用のこと 下記の七種清浄七清浄
 1. 戒清浄・・・止の業処
 2. 心清浄・・・止の業処
 3. 見清浄・・・観の業処
 4. 度疑清浄・・・観の業処
 5. 道非道智見清浄・・・観の業処
 6. 行道智見清浄・・・観の業処
 7. 智見清浄・・・観の業処

1清浄 7  
(1)戒清浄  諸戒を守ることによって得られる清浄
 1守持者を解脱させる防護という戒(別解脱律儀戒)
  戒とは身・語・意を護って身業・語業・意業が悪行に向かうのを防止す
 るもの
 2根の防護という戒
  貪欲・憂などの不善が起こらないよう、眼根・耳根・鼻根・舌根・身
 根・意根の六根を守る戒
 3生活の清浄という戒
  清浄な方法で得たものだけによって生活する 
 4資具に依止という戒
  衣服・食物・住居・医薬の4種の資具に、目的を正しく自覚した上で依
 止する戒
(2)心清浄  心を清浄にする
  1近行定 近行修習  
  2定止安 安止修習
(3)見清浄  名色を清浄にする
  特相・作用・現状・直接因として観察する時に、我見から離れた清浄の
 智が現われる、これが見清浄
(4)度疑清浄  名色を清浄にする
  各色の縁を把握することによって「私は過去世に存在していたのだろう
 か」などの三世に関する疑惑を超える智
(5)道非道智清浄 習行方法は正しいかどうかを判断し、変化する内外を
         観察し続ける過程において十観智中のニの智が生じる
  無常・苦・無我の三特相を①思惟智で思惟し、生減を生減智で随観し
  、観の汚染である束縛を把握することによって、道と非道の特相を区別
  すること
  
 前4清浄では無常・苦・無我と思惟することはないので、この清浄で思惟智によって思惟する
 三特相(無常・苦・無我)
  1減尽の義によって無常である→ 何かを縁として生じたものは、減は刹
                 那には減するので、減を見ることによ
                 り名色が無常
  2怖畏の義によって苦である→  身体を構成する色蘊は減し、病に冒さ
                 れると見、名色が楽でなく苦である
  3不実の義により無我 →    実体が無いから、あらゆる名色は無我
                 であるので移ろい変化するので苦なの
                 で、苦しむまいと思って苦しむから自
                 在でなく無我
  上記のように1つが明らかになれば他の2つも明らかになる
  
  <四種の思惟法>
   1聚思惟法  過去有、現在有に生じる色などの区別なく、すべての
         受蘊などと、それぞれの蘊を1つにまとめて思惟する
   2時思惟法  有を時によって区別して思惟する法
   3相続思惟法 1つの有を冷色相続、熱色相続と区別して思惟する
   4刹那思惟法 1つの色相続をも、生・住・減という刹那に区別して思
         惟する
  
  名色の生減を明瞭する智を②生減智という
   1縁随観法  ヨ-ガ者が繰り返し観を思惟智を完成した場合名色を
          縁に関して随感するのが縁随観法
   2刹那随観法 縁を考えづに、生刹那、減刹那だけに注意して随観す
         る
    観の染汚
    1光明(観の光明) 2(観の喜) 3軽安(観の軽安)  
    4確信(観心と相応する信心所 5策励(観智と相応すろ精進心所)
    6(観の楽) 7(観の智である) 8安住(念心所である)
    9(中捨の捨と引転の捨) 10徴欲(観の徴欲)

  (6)行道智見清浄 三特相の観を順次行づること即ち道・果への行道
           であり、三界の諸行を無常・苦・無我とを明らかに
           智見し、煩悩から離れている智
    ①思推智 無常・苦・無我の三特相を、思惟
  ②生減智 名色の生減を明瞭する智
        ③壊減智 生減が敏速であることより壊滅のみを観じるようになる
  ④怖畏智 随観し続けると、それらが畏怖すべきものとして映る
  ⑤過患智 種々の過患を見る
  ⑥厭離智 諸行を厭離する
  ⑦脱欲智 諸行から脱したいという智
  ⑧省察智 諸行を再び無常・苦・無我と随観する智
  ⑨行捨智 諸欲を所縁としても、それに対して何の関心もなく、三特相
       を随観する
  ⑩随順智 前の8観智と同様に無常・苦・無我と三特相を随観する作用
       があるから、8随観と対立することなく随観する智また37菩
       提分法にも随観する

(7)智見清浄  前の6種清浄を順み修習したあと、最後に修習すべき4つ
        の道智のこと。煩悩から離れて清浄で四諦を直接知るもの
        という意味

  随順と共に頂点に達した行捨智を、出起(道法のこと)に至る観とも
 いう
  種姓心が涅槃を所縁として、凡夫の姓を超え、聖者の姓(有身見、疑
 を捨断した五蘊相続)に達しつつ生じる
  
  道心が4つの作用を同時に成就する、その後果心が生じ有分に墜ちる
    苦の遍知作用、因の捨断作用、減の捨断作用、道の修習作用                                                 
  有分が捨断され道・果などを観察する観察智が生じる
    涅槃を得たと道を観察する路    
    道の功徳を得た果を観察する路
     (上記は生じる人と生じない人がいる)
    涅槃を作証したと涅槃を観察する路
    煩悩を捨断したと捨断した煩悩を観察する路  
    煩悩が残っていると残りの煩悩を観察する路
     (上記は誰にでも必ず生じる)
種姓智:七清浄の第六の行道智見清浄と最後の智見清浄との中間にあり、随順智が偏作・近行・随順として生じた後、涅槃を所縁として同じ四智相応心中の随一な心が速行作用を続けて凡夫から聖者に移る準備段階、即ち、有身見・疑を有する五蘊相続である凡夫の姓を離れて、次の瞬間必ず有身見・疑を捨断した聖者の種姓に達することを助ける。

聖道:聖道の心作用は随順智→種姓智→聖道とすすむ。即ち、随順智は諸行の三相を所縁として欲界善心による速行作用が行われるのに対して種姓智は涅槃を所縁として同じ欲界善心による速行作用が行われるのである。聖道は、念じられる所縁も念じる心も共にきっちり切れてすべての行の停止した涅槃を所縁として預流道心が速行作用をなし、その後に同じく涅槃を所縁として預流果心が速行する。

 初めて預流果を得た聖者はまだ完全な果智に達していない故、この果智を完成させるために次の五種観察を欲界善心による速行によってさらに思惟観察をしなければならない。それによって悟りの完成度が高められていく。この聖道作用及び五種観察までの心的経過は、預流聖者をはじめ一来聖者・不還聖者・阿羅漢聖者も同じである。

[五種観察]
 1. 意門作用において自分が得た預流道を欲界善心による速行によって観
   察する。  
 2. 同じく意門作用を起こして次に預流果を観察する。
 3. 意門作用を起こして捨断した諸々の煩悩を観察する。
 4. 同様にまだ捨断されていない煩悩も観察する。
 5. 涅槃をよく観察する。
 ※ 預流聖者・一来聖者・不還聖者は五種観察を続けるのに対して阿羅漢聖
  者は捨断すべき煩悩がないため四種の観察となる。

 五種観察によって預流果が完全に得られる。そして預流・一来・不還・阿羅漢の各道位において89心の十二不善心が次から次へと捨断される。

 a. 五種観察によって完全に預流道を得た聖者は、悪見相応心喜倶(22)
  (23)・捨倶(26)(27)と疑相応心(32)の五心を完全に捨断する。
 b. さらに上の段階の悟りを希望する預流聖者は、再び七清浄の第五番目で
  ある「道非道智見清浄」から修行をはじめる。そして一来の道果を得た
  聖者は残りの七不善心を薄める。
 c. 不還の悟りを望む一来聖者は、前回と同様に道非道智見清浄から修行を
  はじめる。不還道智を得ると瞋恚相応心(30)(31)の二心を完全に捨
  断できる。
 d. 残りの悪見不相応心の喜倶(24)(25)・捨倶(28)(29)と掉挙相応
  心(33)の五心は、阿羅漢聖者によって完全に捨断される。

    ・ ・・預流道を得た聖者は四つの悪見相応心と疑相応心の五心を捨
     断する。・・一来道を得た・・・不還道を得た・・・、阿羅漢を
     得た聖者は四つの悪見不相応心を悼挙心の五心を捨断・・・する

 解脱の別 
 
無我随観  名色に対して我が存在しないと見ること →  空解脱        
無常随観  各色聚の生減の相を見ること      → 無相解脱
苦随感  あらゆる名色は苦のみであると見ること  → 無願解脱

 人の別
預流(須陀垣) 最高7回結生する
一来(斯陀含) 1度だけこの世に戻ってきて結生すれば阿羅漢になる人
不還(阿那含) この世に再び結生しない、色・無色地には結生する
阿羅漢     最上者

 定の別
果定 各聖者が得ている果にのみ入定することができる
    在定中は果心だけが連続して生じるが、一定の時間が経過して有分
    心が生じてくれば果心相続が途絶えて果定から出定する
 遅通達者
   有―動―捨―意―遍―近―随―種―果―[在定期間]―有分
 速通達者
   有―動―捨―意―近―随―種―果―[在定期間]―有分

減定、減尽定、減受想定 → 不還、阿羅漢のみが入定できる
 阿羅漢或いは不還
  順に初禅などの大(上ニ界)に入定・出定・随観を修しながら無所有処
  まで行く→
  出定した後4種の準備作業をする→ 非想非非想処に入定する→  
  禅心2回の後減定に達する
  阿羅漢、不還果心がそれぞれ1回生じる→ 有分心が生じる→ 
  自己の果心を観察す
  る観察智が生じる

   有―動―捨―意―非想非非想処心(1又は2心刹那)-減尽定{無心とな
                           り入出息も
   停止した状態}―果―有
                (心生色が生じなくなる)

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