「千人同心がゆく」終章
令和改元とともにスタートした西多摩新聞連載作品「千人同心がゆく」。
現在、最終話となる「千人隊事件」をお送りしています。
事件と称しながら、
実際のところ、
大きな騒動に至る事象はありません。
参謀板垣正形等進んで八王子に至る。旧幕府同心の長・山本弥左衛門等書を上(たてまつり)て、徳川氏の為に乞ふ。正形、之を諭すに順逆を以てし、速かに順し、王事を勤めしめと某等誓書を上る。
(『復古記』)
慶応4年(1868)6月、八王子千人隊(幕末、陸軍奉行配下となり千人同心から改称、物語の便宜上、千人同心で通していた)は解散した。八王子や近在に農地を所有していた千人同心は帰農し、千人町の御頭(旗本並)や武田旧臣以来の士族の一部は静岡(徳川宗家領)に移住した。帰農しない一部の同心は明治新政府に仕え、甲州府兵護境隊となる。この護境隊が、やがて軍務官附八王子同心そして神奈川県兵と編成されていく。
解散後の八王子千人隊処置
慶応4年・明治元年(1868)
・5月15日 太政官布告第四百二十四号により千人頭が士族になる。
・7月10日 護境隊頭取3人、秋山喜左衛門・込谷民五郎・丸山惣兵術
と隊員48名軍務官付八王子同心として護境隊となる。
明治2年(1869)
・11月3日 八王子千人隊の平隊士が卒族となる。
(大政官布告千百四号)
明治5年(1872)
・3月 八王子千人隊の平隊士が士族とされる。
・この年 壬申戸籍が作られる。
これまでも大きな節目として、千人同心の様々な角度からの結末は、物語として描いてきた。最後の日光勤番としての決着、榎本武揚に参加した者の決着、世を捨てた博徒の視点、野に下った者の無念、そして新しい時代に希望を見つけられた人。
それらの総括、GW頃に……この長いオムニバスは終わります。
西多摩新聞連載作品目録
★は単行本上巻に収録された作品
千人同心の理
(2019年7月12日)
★剣の虜
(2019年7月19日~9月27日)
★長崎幻想絵巻
(2019年10月4日~11月15日)
大奥の底
(2019年11月22日~1月17日)
道場の喜怒哀楽
(2020年1月24日~2月28日)
身を知る雨
(2020年3月6日~3月20日)
★武州一揆
(2020年3月27日~7月3日)
★バラガキ
(2020年7月10日~12月4日)
柳、そよぐ
(2020年12月11日~12月18日)
★二百年来の声韻
(2021年1月1・8日合併~2月19日)
緑のさざ波
(2021年2月26日~5月14日)
★天狗の影
(2021年5月21日~7月23・30日合併)
戸吹の苦悩
(2021年8月6日~9月10日)
桑都の剣
(2021年9月17日~10月15日)
美賀保丸
(2021年10月22日~12月10日)
世 界
(2021年12月17日~2022年1月14日)
百姓の国学
(2022年1月21日~2月4日)
異人の回顧
(2022年2月11日~3月25日)
剣 客
(2022年4月1日~8月26日)
※井上源三郎資料館HP掲載(題「もののふの剣」)改稿
剣の碑
(2022年9月2日~9月9日)
※插絵画家の会刊行「文人墨客第三号(平成30年)」掲載
封建社会
(2022年9月16日~10月21日)
桑都日記
(2022年10月28日~2023年1月1・6日合併)
世間様に背を向けて
(2023年1月13日~3月24日)
ぼくの日光勤番
(2023年3月31日~10月6日)
血梅(ちばい)
(2023年10月13日~11月10日)
海 (2023年11月17日)
どうする長州征伐
(2023年11月24日~2024年3月15日)
千人隊事件
(2024年3月22日start)
千人同心がゆく 参考文献
◇「八王子千人同心史 通史編」 八王子市教育委員会・発行
◇「八王子千人同心史 資料編Ⅰ」 八王子市教育委員会・発行
◇「八王子千人同心史 資料編Ⅱ」 八王子市教育委員会・発行
◇「八王子千人同心史編集ニュース」八王子市教育委員会・発行
◇「ブックレット 千人のさむらいたち~八王子千人同心~」
村上 直・監修
八王子市郷土資料館・編集
八王子市教育委員会・発行
◇「特別展八王子の天然理心流―受け継がれた剣術・柔術・棒術」
八王子市郷土資料館・編集
八王子市教育委員会・発行
◇「日野市史 通史編二」 日野市教育委員会・発行
◇「瑞穂町史」 瑞穂町教育委員会・発行
◇「瑞穂小史」 瑞穂町教育委員会・発行
◇「瑞穂の地名」 瑞穂町教育委員会・発行
◇「入間市博物館文書目録第4集 中島敏雄家文書目録」
入間市博物館・編集発行
◇「名栗村史研究1 那栗郷」 名栗村史資料調査委員会・編集
名栗村教育委員会・発行
◇「𦾔交會 八王子千人同心旧交会会報」
曹洞宗良价山宗格院・事務局
八王子千人同心旧交会・発行
◇「新選組日誌」 菊池明、伊東成郎、山村竜也・編
新人物往来社・刊
◇「新選組顛末記」 永倉新八・著
新人物往来社・刊
◇「氷川清話」 勝海舟・著
江藤淳、松浦玲・編
講談社・刊
◇「榎本武揚シベリア日記」 榎本武揚・著
講談社・編、刊
◇「一外交官の見た明治維新」 アーネスト・サトウ・著
坂田精一・訳
岩波書店・刊
◇「没後150年 新選組井上源三郎
八王子千人同心と新選組の幕末維新」
日野市ふるさと博物館・発行
◇「井上松五郎源三郎兄弟の事跡」 谷 春雄・編著
日野市ふるさと博物館・協力
井上源三郎資料館・発行
◇「八王子千人同心井上松五郎 文久三年御上洛御供旅日記」
日野の古文書を読む会研究部会・解読、編集
井上源三郎資料館・発行
◇「武術・天然理心流 上 新選組の源流を訪ねて」
小島政孝・著
小島博物館・発行
◇「新選組余話」 小島政孝・著
小島博物館・発行
◇「八王子千人同心」 吉岡 孝・著
同成社・発行
◇「松本斗機蔵 幕末の開明派、憂国悲運の幕臣―その人と献策―」
大野延胤・著
近代文藝社・刊
◇「多摩の百年 上 悲劇の群像」 朝日新聞東京本社社会部・著
朝日新聞社・刊
◇「渋沢栄一」 渋沢秀雄・著
渋沢青淵記念財団竜門社・発行
◇「彰義隊遺聞」 森まゆみ・著
新潮社・発行
◇「幕末維新人物一〇〇話」 泉 秀樹・著
立風書房・刊
◇「時空旅人ベストシリーズ 新選組 その始まりと終わり」
三栄書房・刊
◇「風光る紀行」 渡辺多恵子・協力
小学館・刊
千人同心がゆく 参考資料
◇「歴史講演会 井上家と沖田家 (令和五年一二月九日講演)」
井上雅雄・講師
日野新選組ガイドの会・編
◇「郷土歴史講演会
英国外交官アーネスト・サトーの箱根ヶ崎村通行について
― Part2 ― (平成一七年一月二三日講演)」
神山義三・講師
瑞穂町教育委員会・編
千人同心がゆく 協力(敬称略)
※所属は取材当時
曹洞宗良价山宗格院 浦野信幸
天然理心流日野道場・井上源三郎資料館 井上雅雄
五日市郷土館 清水菊子
道の駅日光 日光街道ニコニコ本陣 加藤加代子
苫小牧市美術博物館 佐藤麻莉
新選組井上源三郎資料館 井上雅雄
文芸同人 槇の会 乾浩
その他 取材地
そして……NEXT episode
千人同心の蝦夷地開拓を特化した、完全新作
「千人同心がゆく 北のまほろば」
本作品終了後にスタート(するかな)の予定です。