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かえりみること

今年、落とした第104回オール讀物歴史時代小説新人賞への出展作品は、幕末横浜の遊廓を舞台にした、オムニバス風の作品。
まあ、豚屋火事で灰燼に帰すまでの演出が、それでよかったのかという反省は残る。いつか手を加えて、世に出してあげたい作品のひとつです。

夢酔流の手法は、史実と創意を絡めて描くことと、徹底して考証に準じるか、二通りございます。今回は考証に準じながらも人間関係に手を加えた、どちらかと云えば二通りの真ん中を漂うようなものにて、いっそ振り切った思い切りが必要だったかもしれない。

ただ認めて、つぎの糧にする。

  幕末。横浜に開港と同時に花開いた港崎遊廓。岩亀楼は国内外の男をとりこにした絢爛な苦界。港ある場所に女を求める世界の男が巨額を動かしていく。
 日本人だけに花開く花魁、異国人に春をひさぐラシャメン。横浜の活気と引き換えに流す女の涙。振り回される男たち。
「俺はしがない品川の飯盛宿・岩槻屋の主だった。それでもこうして、横浜で廓名主になった。運だけじゃないぞ。俺には強い信念があった。それはな、異人を見返してやることだよ」
 佐藤佐吉。サムライではない異人との戦い。それに惚れた女たちは、廓名主としての佐吉を信じて身体を張って生きていく。
 横浜の幕末。豚屋火事ですべてが灰燼に帰すその日まで、横浜の夜の華であり続けた岩亀楼の物語。