ふぞろいなままでもいいんじゃない
山田太一氏、死去。
このニュースに、世代間の温度差はあるんだと思う。若い人からみたら、「誰?」というところだろう。2023年は芸能文化の面で、大きな分水嶺になる。昭和の世代に多大な影響や人生観や仕事や趣味や未来を左右した、偉大な先達が相次いで亡くなった。
山田太一もそのひとり。
代表作に取り沙汰されるのは、もうこの一作しかないだろう。
若い頃の皆様をみてもピンと来ない人も多い。
まあ、一人だけ、プッツンの人がいるので分かりにくいのですが。
「ふぞろいの林檎たち」は4シリーズまでドラマ化された。
でも、作品が輝いていたのは、1~2までという私見もある。社会人になったり、中間管理職になったりという彼らのドラマと、バブル後期とその崩壊後の世相に、なんだか設定がマッチングしていなかった所為もある。作品そのものが悪いという訳ではない。
このドラマで随所に多用されていた音楽、歌。
まだアルバム2~4枚くらいの時期のサザンオールスターズ。イントロの林檎を放り上げているシーンに重なる「いとしのエリー」に、視聴者は釘付けになった。
ふぞろい~ だけがヒットの要因ではないが、歌番組や有線放送や深夜ラジオ主流の時代に、コミックバントという色眼鏡から大きく背中を押して、サザンオールスターズを流行歌手へと変えてくれたのも、このドラマの力であることは疑いない。
3以降は、もうヒットメーカーになってしまったサザンの歌を場面に重ねても響かなくなってしまった視聴者との温度差もあるだろう。
社会や、学歴や、多くのコンプレックスを、ドラマは大いに切り取った。
かつて、「ドラマのTBS」という肩書があった。それほど良心的かつ意欲的な作品と、才能と、時代が火花を散らした時代の出来事だ。いまのTBSには垣間見ることのない時代も、むかしはあったのです。
大河ドラマファンなら、この作品も山田太一と知っているだろう。
ここでも音楽を、ダウンタウンブギウギバンド時代の宇崎竜童が手掛けたという斬新さ。何よりも大河海外ロケ第一号、そして昭和という生乾きの時代に、「秩父事件」まで題材にし、異例の全51話という放送回数だった。
ここで、時代劇ファンも理解して頂ける。
「ああ、社会派の内容を青春ドラマに置き換える、凄まじい手法の書き手なのだ」
と。
山田太一氏の経歴を知らない方は、ぜひググって欲しい。
いい時代だ。
安らかなご冥福をお祈り申し上げます。
蛇足追伸