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makura1219
《乱れて朝は》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~八十の歌~
《乱れて朝は》原作:待賢門院堀河
青絹の衣の褥に愛欲の粘液を滴らせ
黒髪の乱れて絡まる貴方の乳首を噛む。
逢えなかった幾夜もの想いを叫んでは
熱い涙とともに深く深く貫抜かれ……契る。
ウチは女。
<承前六十九の歌>
逢えなかった
「式子様、そろそろ邸の内に戻りましょうぞ。いささか、冷えて参りました。式子様のお身体に障ります」
「式子は定家様抱かれておれば、寒くはございませぬ」
「そのような無体な事を仰せになってはなりませぬ」
定家は式子を己が身体で包み込むと悪戯な式子の瞳を覗き見た。
「定家様、式子を攫ってくさいませ」
定家はその唇に口づけする。
「おお、今より式子様を攫いましょうぞ」
「長からむ 心も知らず 黒髪の乱れて今朝は 物をこそ思へ」
「定家の愛は永遠。別れの朝は、式子様の黒髪が定家に乱れ絡まりて、決して参りませぬぞ」
定家は式子を抱きかかえ大屋根を疾走した。
<後続八十一の歌>