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yabougekijou
《百人一首》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~百の歌~
《百人一首》原作:順徳院
愛を語ったのは昔のことや。
忍ぶ恋も遠くに霞んで、
もう、わし等のことは誰も覚えとらん。
そないなら百の大和歌を反故にして
ひっそり閉じようか、この愚か者の一生を。
<承前九十九の歌>
式子の嬌声が激しく嗚咽まじりに夜の静寂を破る。激情のまま漏らされる互いの荒い息づかいに切なるものが迫って来た。
二人は同時に天上にかけ登る。
「あぁ!」
「うっ、うう」
定家の迸りと式子の絶頂が二人の身体を一つにする。今、愛は契られたのだった。
……ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある むかしなりけり……
式子は身体を痙攣させながら、潤んだ眼で定家を見詰めて口づけをした。定家はそれを優しく受ける。
全ての想いは残すところなく遂げられたのだ。定家はゆっくりと眼を閉じた。
<後続 後日談>