ワカサギ釣りの話
毎年、年末年始は実家の長野に帰省する。
結婚した今年は、夫も一緒に長野へ。
私の父は、毎年冬になって湖が凍ると、
毎週のようにワカサギの穴釣りに出かける。
父は、夫に釣りの楽しみを教えたいらしく、
夫自身もやってみたいということだったので、
一緒に行くことになった。
小さな頃は、私も父に連れられて良く釣りに行っていたのだが、中学生くらいにもなると部活や友だちとの遊びで忙しくなり、そのうちに行かなくなってしまったので、
実に20年ぶりくらいのワカサギ釣りである。
その時のことを書きたいと思った。
釣りに行くのは、長野県南佐久郡小海町にある、「松原湖」。
ワカサギ釣りは、早朝がいちばん良く釣れる時間帯なので、まだ外が暗い時間に起床して準備をする。冬の早朝、湖の気温はマイナス10°ほどになるので、スキーウェアのような格好で、お腹と背中にホッカイロを貼って、ばっちり防寒。
湖に着くのは、ちょうど少しずつ周囲が明るくなりはじめる頃だ。
父は、いつも1人で来る時は「カタツムリ」というワカサギ釣り専用の1人用のテントで釣りをしているが、
この日のために5人ほど入れるテントを買っていたので、3人でそれを慣れない手つきで組み立てる。
父がドリルで氷に穴を3つ空けてくれた。
湖は解禁したてだったので、氷が薄いと怖いなぁと思っていたが、すでに15センチほどの厚みがあった。
これなら大丈夫そう。
外は極寒だか、テントの中に入るだけで、大分違う。
前日の夜に父からレクチャーされた通り、穴釣りの仕掛けをセット。
湖の深さに糸の長さを合わせて、エサをつけるのだが、手がかじかんで震える…
(早い時間帯がいちばん釣れるので、ここでいかに早く釣りをスタートできるかがけっこう重要。初心者の私と夫がモタモタしている間に、父は10匹ほど釣り上げていた)
ようやく私も仕掛けをセットして、穴の中にエサのついた針と糸を落としていく。
ワカサギがエサに食いつくと、竿先が少しピクッと動く(これを『アタリ』という)ので、その瞬間に竿を素早く持ち上げる(『合わせ』という)と、ワカサギが針にかかって釣れるという仕組みなのだが、この『アタリ』にいかに見逃さずに、上手く合わせられるのかが、初心者とベテランで差がつく部分である。
アタリよ来い!と思いながら、仕掛けを下ろしていくと、何かが引っかかった、重い感覚が。
最近、湖の中には藻がけっこう多いと聞いていたので、藻にひっかけたのだろうとすぐに分かった。
少し引っ張って、糸を巻き上げると、
案の定、針に藻がひっかかっていた。
そして、偶然にもワカサギも1匹かかっていた。
嬉しいけど、少し不本意な釣れ方をした第一号。
釣れたてのワカサギ。
小さくて、白い、美しい魚。
碧い湖の氷の上で、朝日を浴びてキラキラ光って見える。
20年ぶりに、釣れたてのワカサギを見たけど、
こんなに綺麗な魚だったっけ。
そう思った。
湖の上で感じる魚のにおいは、懐かしく感じた。
その後は、ちゃんと「アタリ」に合わせてワカサギを釣り上げることができた。
夫はしばらく苦戦していたが、そのうちに釣れるようになった。
この日の結果は、
父 30匹くらい
夫 6匹
私 8匹
だったかな。
夫も楽しんでくれたようで一安心。
釣れたワカサギは、から揚げにしてその日の夕飯に。淡白で、食べやすい魚である。
子供の頃は当たり前に慣れ親しんでいた湖の雄大な景色、澄んだ空気。
都会で暮らしたからなのか、大人になったからなのか、自然の恵みのありがたみを感じられるようになったかも。
年に1回くらいなら、また行っても良いかな。