論語 子張10 気持ちと約束は別もの

 子夏がいった。
 「君子は、指導者の立場にあるとき、人々に信用されてからはじめて人に働いてもらう。信頼を得ていないうちに働かせようとすると、人々は自分たちを苦しめようとしていると思うものだ。同様に、君子は、主君から信頼を得てはじめて、主君には耳の痛い厳しい意見をいうものだ。信頼されていないのに、そのように諫めると、主君は自分が単に非難されていると思うものだ。」

齋藤孝(訳)(2010)『現代語訳 論語』 筑摩書房

 肝になるのは信頼である。これがない状態では褒めたところで詐欺を疑われたり、都合の良い時にお世辞を言うだけと捉えられてしまう。

 では、その信頼をどう作るのかであるがその一つは有言実行である。有言実行のポイントは二つある。まずは言葉の通り言った事をしっかり行う事。その為には多少のアクシデントが起こったとしても、完結できるくらいに
準備や余裕をもって行う必要が出て来る。また、曖昧にしないように期日や内容を具体的に決定し、お互いに認識する必要があるだろう。
 その上で予期せぬアクシデントが発生した場合に報告連絡相談が必要になってくる。それもきちんと準備をしているからこそ言い逃れとしてではなく、相手に伝わるのである。

 もう一つのポイントは出来ない事を簡単に約束しない事だ。どんなに些細なことでも嘘は嘘である。
 この前、私は家族でテレビを見ていた時におかしのCMを見て、ついつい「御馳走する?」と言いそうになってしまった。自分としては驕るつもりは無かったのでほとんど無意識的に出そうになった言葉である。
 仮に出てしまったらその場で迂闊な言葉だったと謝罪したほうがいい。
 
 そして出来ない事を断る為には勇気を持つ必要がある。それは自分の弱さを認める事、非難されても自分の限界を相手に示す事が求められる。相手に伝えるには自分が覚悟を決めなくてはいけない。

 勿論それが努力をしない口実になってはいけない。好きなことではなく求められることに対して勤勉であるという前提があるからこそ、得手不得手、妥協の話が可能となるのである。

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