イナージ
イナージ
君はシビックの流線形は素敵だ
そんなことを思いながら
口にくわえた針を次々に布に刺していく
君の仕事はお針子
テイラー屋の下働きだ
1〇時前、仕事の始まる1〇分間の
仕立長の話を聞くのを好む君
1〇代の君は不良少年なのか、学校を辞めて
家を飛び出し、この少都会へ住むようになった
イナージ、君の不幸とありきたりの不幸は
一線を画している
心の中に毒麦を君の敵が植えていっ
た
収穫の時に全部刈り上げ、
(途中、刈り上げると良いものまで刈ってしまう
そうして、分けて、悪い毒麦は燃やしてしまうんだ
その爽快感たらないだろうね
炎を見て快哉をあげる君
イナージ、マリアージュは必要なことだった
煙草以上に必要だった
彼女は水でうるおしてくれる
つきぬ水源だ
そのうち乾ききった種子が息を吹き返す
すべて緑になる日まで
イナージ、新天地は開けてくる
北海道で見る朝焼け
薔薇色の空
薔薇色に染まる君の花嫁
二人の誓い
神聖にして犯さるべからず
新生が始まる
二人のリズムで朝が始まり
一日が過ぎていく
リズムを取ってタン。タン。タン
単調でいて小気味いい
イナージ
君の生活がある