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ものぐさのすすめ


  「怠惰への賛歌」というバートランド・ラッセルの書いた本を何年か前に読んだ。

 「組織だって労働時間を減らせば1日4時間で生きるのに必要な資源を確保出来る」と書いている。1932年のエッセーだ。

 ー労働を美徳とする道徳は最悪だ。
 この道徳のせいで労働者は苦役のような労働に疑問を持たず従事し、またそうして得を積むのが尊いという考えで選択をする。
 (資本家は)余分をため込まず分け合ってみんなで休みを増やそう。
 大切なことは空いた時間を、人生を豊かにするために如何に有意義に使えるかである。
 
 そんなような事が書いてあったと思う。

 読んで自分が当たり前だと思ってきた社会通念がずるっと滑るような感じがした。

 話しが飛ぶようだけど、例えば赤ずきんちゃんのお話は、年長者の言いつけを守らないとひどい目に合うよというお話しだと思っていた。
 でも考えてみると突っ込みどころが色々ある。

 そもそも、誰もがほっこりしてしまうような幼気な少女赤ずきんちゃんに、滋養たっぷりなおまけ(おばあさんへのお土産)まで付けて、オオカミがうろつく野原を一人渡らせるなんて如何なものかとか。
 もしかすると「今日のおばあちゃん様子が変だわ!」と思ったのに直感を無視したらこうなるぞってお話かとか。

 知らないうちに、誰かにとって都合のいいルールを当たり前だと思っているのかも知れない。
 そう思ったのだ。
 
 若い頃よく
「帰って家で何しているの?」
「え、 休みの日暇じゃないの。なにしているの?」と聞かれた。

 暇じゃない。何もしていないけどすごく忙しかった。
 一人ぼんやりする時間があって初めて物事を把握出来る。
 でも何となく、そんなこと許されないような眼差し。

 江戸時代なら馬の糞を拾う仕事とかあったのに、なんだか現代は自由になったようで生き残る選択肢が、狭まっている。

 限られた休みをなるべく好きに過ごせるように、知恵を絞って段取りをする。ものぐさなだけなんだけど。

でも今ならあの時にみたいに

 一体家で何してるの?
って聞かれてもものぐさ、結構結構ーと思える。

 ものぐさでいるためだって、努力が要るのだ。




 
 

 
 

 







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