プレッシャーに打ち克つには【野球小説】
期待されることを当然のように行う難しさ
何を隠そう僕は、試合で抑えをいつも任されている。
いつもゼロ点でピシャリとしめて、セーブすることが当然で球界屈指のストッパーなのだ。
しかし、この日は違った。天王山の首位攻防戦。
2点リードで迎えた9回表。これを勝てば、セーブをまた増やせる。年棒だって来年は上がるだろう。
チームだって優勝に近づく。
「優勝?そう言えば、俺、優勝した経験ないわ。」
【どんな気持ちなんだろう。嬉しいのかな。中崎さんは経験者だけど、今は無口で、キャッチャーのクラブしか見てない。髭にも白髪が見え始めて、今度聞いてみるか】
優勝の二文字を意識すると、いつもの野球をひたむきに向き合ってた自分と何かが違和感がある。
マウンドに上がると、やはり、いつもと違う。
何が違うのか、温度?歓声の声?砂煙?肘の調子?悪くない。しかし何か足が上ずってる。地にしっかり重力を感じない。
空気が薄い。
「深呼吸だ。平常心、平常心。」
投げた。ボールが高めに浮く。
「フォアボール!」
【まだ、大丈夫だ。今までだって、ピンチを乗り気って来たじゃないかー。】
次のバッター。
ボールが高めに浮く、つぎはワンバンでキャッチャーミットへ。【ストライクが入らない】
「フォアボール」
ランナー、1、2塁。
【大丈夫だ、変化球でゲッツーだ。】
「フォアボール!」
【やばい、満塁だよ、あー、帰ってビール飲みてー。でも、前のバッターをやっつけないとな。あ、俺はなんで今まで抑えることが、できたんだろう?大丈夫だ、フォークで三振とってやる。】
監督が、マウンドまで歩いてきた。
振り返ると監督がいた。
「しっかり、腕をふれ。ランナーは気にするな。打たれても良いから。思いきっていけ。」
「はい!」
これから嘘のようにストライクが入る。
追い込んだ。
「よし、ここでフォークで三球三振だ。」
ラジオのアナウンサーが興奮気味に、アナウンスする。
「ピッチャー足を上げて、力をためた、投げる。」
「ボールだ、外角の良いコースだが、審判は首を縦に振らない。次の球でストライクで、決めれるかーー!」
【あれ、カーブって握りこうだっけ?】
「あ、やばい、スッぽ抜けた、」
「デッドボール!」
【やらかした、あー、ダメだ、押し出した。
でもまだ1点ある。大丈夫だ。俺は守護神だ!おさえてやる。】
しかし、バッターは四番まで回ってしまった。
相手は球界屈指のスラッガーだ。
アニメのタッチでいえば、須美高校の新田アキオだ。彼は、監督が、打ってほしいときには、10割バッターのキャラクター。目付きが鋭い。絶対打つ顔をしてる。
「カーン」レフト前ヒット。あっさり。
「終わった。」
優勝できるチームは何かが違う。きっとテクニカルではなく、メンタルや経験や、野球の神様の言う、試合の流れ、勢い、モチベーション、楽しむ力。
「コアラか、、マーチが投げれば良かったわ。」心ないギャラリーがビールを、飲みながら呟く。後の祭だ。
プレッシャーは、顔を見ればわかる。
監督へ
呼吸や表情をよみっとって昨年のように、守護神を少し休ませて、「コアラかマーチに任せて。」