見出し画像

エンジニアとして海外キャリアについて考える

都内でシステムエンジニアをしている宮尾猫市です。

掲題の通り、近い将来の展望として海外での就業を予定しています。
今回はその理由付けを明確に自己整理する意味も込め、日本ではない他の国でキャリアを歩んでいく目標について記していきます。
海外でのキャリアなど全く考えていなかった人、または漠然と海外就職に憧れる同じ状況の人に読んでいただければ幸いです。

日本的労働

勤務形態から労働に対する価値観まで、日本独特の文化が深く根差していることを実感するのが、企業寿命の長さです。

「最も100年企業が多かったのは日本で3万7085社。世界の創業100年以上の企業総数、7万4037社に占める比率は50.1%となったー創業200年以上までさかのぼっても1位は日本の1388社。世界の200年企業2129社の中での比率は65.2%となった。」

日経BPコンサルティング・周年事業デザインセンター

2位のアメリカに差をつけて日本企業の長寿企業率は世界で最も高い位置にあり、これからもこの比率は伸び続けていくと考えられます。この事実については、日本人労働者達の保守的体質が企業の頑健性に起因していると考えています。

高度経済成長からバブル期までの経済的豊かさは労働によって享受したものという実感が持ち、それをバブル崩壊、平成不況という危機が襲います。
その時、日本人は労働の無意味性へと転換することなく、むしろ忍耐的姿勢を求め、勤労の美徳を再確認することで、保守的な労働観を獲得していきます。

この忍耐力によってトンネルを抜けた先にある成功イメージへの推進力を生みだすという動機付けは、当期の利益より長期的な安定を欲する理念にもなり、ジリ貧の耐久戦に持ち込むことで疲弊した労働者を作り出します。

一方で、今でも年功序列の給与体系や退職金の存在は、社員を長年留めておき、自社で成果を挙げるためのスキルを身につけ、自社に特化して育成するための効用を生み出してきました。これが企業の長寿命化への要因となり、ブランドが発生することで創業者の権威が強化されていきます。

日々の業務

業界のことを詳細に描写できるほど多種多様な業種についた経験は持ち合わせていないため、個人の経験談にとどめて記述します。

例えば、今在籍している受託開発系のソフトハウスでは、社員のテレワーク率の高さや、開放的なオフィスとラフな雑談スペースとは裏腹に、がんじがらめになっているセキュリティ規則の確認事項や、堅固な基本給の低さが目立ちます。

最もJTCみを感じる瞬間として、技術選定時の裁量が少ない点です。エンジニアとして常に新しい技術の学習を続けることは大事ですが、それが生かされる機会に立ち会えるかは数年で1度としてあるかわかりません。

業界競争の渦中に立とうとしないことは、生存戦略のひとつではありますが、勝ち残ろうとする姿勢を持たないまま移り変わりの激しいITの世界にい続けることに強い違和感を感じます。

一点、気に入っているポイントを挙げるとすると、やはり元請け受託開発ならではの多様な要求事項に対して解決策を提示できるやりがいに関しては、その他の不満を沈めて熱中できる要因でもあります。

受託開発の内外

近年よく話題にされる「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」の雇用形態の違いが、企業のIT技術への向き合い方に違いをもたらします。

IT化の波は世界共通で会社や仕事自体の変容を迫っていますが、メンバーシップ型、つまり日本的な就業契約を結ぶ従業員は、特定の問題に対する解決要員としてそこに在籍しているわけではなく、会社内で発生する様々な課題を割り振られるための人的資本です。
DXがトレンドになればそれを達成するべく、厳しく定めた規格に合格できるベンダ企業を探し出し、できるだけ安価にシステムを仕入れることが仕事になります。

それに対し、求人に特定の技能要件を記載し、空いているポストを埋めることで企業を運営する職能型雇用では、届けるべき製品・サービスを定義して必要となる人材を集めていきます。

最近ではIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の発表でもIT製品の内製化が推し進められている現状について詳細に調査されています。
コロナウイルスによる疫病流行によって浮き彫りになったIT化の遅れや、国際競争力の低下、そして迫る少子高齢社会の到来によって、世間で騒がれるIT人材の不足に拍車をかけている現状が示されています。


日本で解雇規制が緩和される兆しが見え始めたとき、ユーザ企業のIT内製化が進むことで、良い意味でも悪い意味でも技術力を正当に評価する風潮を作り出していけるきっかけにできるでしょう。
何より技術力で国のGDPを押し上げた歴史のある国民性を刺激するもっともよい方法であると考えます。

ベンダSEとして、「素人ですので、、」と丸投げに近い要求を投げ、想像と違えば発注者としての権利を主張する場面によく直面しますが、受託開発が悪いわけではないことも承知しています。
それによって最適化された仕事の棲み分けが業種間の絶妙なエコシステムを維持し、安定的な長寿中小企業の社会保障的価値を提供することや、エンジニア自身の成長の場になっていることもまた事実です。

ヨーロッパで顕著ですが、エンジニアの就職先としてはユーザー系のIT部門が多数派になります。
オフショア開発を安価な労働力で受注する事業を主とする東南アジアなどのIT勃興諸国とは違い、これは既にブランドが確立している企業のさらなる成長戦略として、IT化を推し進める日本企業に必要となる指針です。


個人的問題として

ここまで、国内外、業種業務の自己流の整理を行ってきましたが、その上でエンジニアとして海外でのキャリアを目指す理由をまとめます。

まず、いずれは日本の産業の一端を支える人材として成長したいという願望を持っています。それまで多様な技術の吸収と問題解決能力に磨きをかけるという経験を本能で欲しています。
働く環境を大きく変え、使えるツールが限られたり、時間的な拘束を受けて生産性の改善を余儀なくされる強制力が、情報処理能力の向上につながっていくものだと考えています。

もう一点は、アジア人としての競争力の獲得です。
IT後進国として外資の流入を得にくい状況が続けば、いつか日本に戻りたいと思っても、ソフトを開発する仕事が廃れていては意味がありません。
世界でのプレゼンスなど意識する必要はなく、人材、文化、学術の俎上に日本が乗る環境づくりのためにも、常に日本人は日本人であるべきなのです。

これに関しては、全く個人に解決できるものではなく、社会的要因に帰結するのが正しく聞こえますが、あくまで私個人の内発的モチベーションを維持しているひとつの理由です。


展望

給料の高い海外生活を夢見てワーキングホリデーに出発するも、年中ホリデーのホームレス日本人が大量発生しているニュースを見ると、現状認識と目標設定の適切さが海外就職成功のカギであるように見受けられます。

読んでみて想像していた結論と違うと感じた人もいると思いますが、やはり現状をどう分析するかによって人それぞれのキャリア観があると思います。

ということで今回は将来的な展望を語るうえで、自分の海外キャリアを目指す根幹となった背景について書きました。
人の経験談が溢れるNote記事で有用な情報を見出すのは難しいですが、他人がどのような観点で共通の問題について発想しているのかを参考にしていただければ幸甚です。


san franciscoのトラム

いいなと思ったら応援しよう!