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花咲くころ(2013🇬🇪)
英題: IN BLOOM(2013、ジョージア=ドイツ=フランス、103分)
●監督:ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス
●出演:リカ・バブルアニ、マリアム・ボケリア
ユーロ2024開催に乗っかってヨーロッパ映画を観ていこうシリーズ。
ジョージアといえば往年のカラーゼや現在活躍中のクヴァラツヘリアがサッカー選手としては有名だ。
このジョージア映画、英題は『In Bloom』。ときたら真っ先に思い浮かぶのはニルヴァーナの同名曲だ。
しかも映画内時間は1992年で『ネヴァーマインド』からIn Bloomがシングルカットされた年と同じ(!)……
たまたま、ということだと思うが歌詞の世界観もこの映画の雰囲気に絶妙に遠からずという感じで仮に劇中流れてきても違和感ない気がする。
ただ、ソ連から独立直後でアブハジア紛争ただ中の情勢不安定なこの国において映画の主人公となる2人の少女たちがニルヴァーナはおろかアメリカの文化を見聞きする余地など一切ない。
パンの販売に苛立ちながら行列をなす人々、喧嘩の絶えない両親、ナイフを突きつけてくる同級生、強権的な教師と反抗する生徒たちなど街全体がささくれ立っている。
団地の駐車場では少年たちがサッカーで遊んでいる。
ナティアは思いを寄せる少年ラドから護身用にと拳銃をもらう。
エカは服役中の父親の残留品で母親がタンスの中に大事にとってあるタバコをひそかに取り出してその臭いをかいでいる。
拳銃は2人の間を行き来しながら結局発砲されることもなく、誰かを救うことも出来ずに捨てられる。
エカのタバコは姉に取られて勝手に喫われてしまうが、その時初めて彼女もそのタバコを喫う。
拳銃もタバコも男性や父性を象徴するアイテムなのだとしたら、それらから彼女たちが解放された、あるいは解放されてほしいと願うラストであると読み取れる。
ただ、映画はエカがどこかからバスで家に帰ってくるシーンで始まり、最後はバスで出かけるというシーンで終わる。
このループ構造は、まるで日常は変わりそうで変わらずまた元に戻るということも暗示しているようで暗澹たる気持ちになったが、この少女2人の友情は暗闇の中の星の光のように、切なく灯っている。