フェリーニのアマルコルド(1973🇮🇹)
原題: FEDERICO FELLINI AMARCORD(1973、イタリア=フランス、123分)
●脚本・監督:フェデリコ・フェリーニ
●出演:ブルーノ・ザニン、マガリ・ノエル、プペッラ・マッジオ、アルマンド・ブランチア
起承転結にもとづいたストーリーというのはなく、1930年代のリミニの町の一年の移り変わりをチッタという少年と彼の家族を軸にしたいくつかのエピソードを繋げていく点描タッチというか、絵日記を映像化するとこうなるという見本のような映画。
出てくる子供たちの年齢層は若干違うが『トリュフォーの思春期』(こちらも素晴らしい作品)と似たスタイル。
ドラマチックな展開はないし、少年映画特有の通過儀礼からの成長譚のような感じもないが、終わり方に関しては切ない郷愁感の余韻がいつまでも残るような丁寧な幕の降ろし方になっている。
まあでも、このくらいの歳の少年なんて基本的には悪いこととエロいことくらいしか興味はない。
同級生の女の子は全く登場せず、憧れの対象がことごとく年上の女性ばっかりってのは「イタリア映画だから」なのか?「フェリーニ映画だから」なのか?
学校やら教会やらでのそんな色々がありながら、スケッチブックのページをめくるように季節はすぎてゆく。
春を告げる、空に舞うポプラの実と魔女の火祭り。
夏には叔父さんたちとのピクニックや、夜の海で豪華客船を見物。
霧の深い秋の早朝、通学路に突如出現する白い雄牛。
記録的な大雪の翌朝、どこかから飛んできた美しい孔雀。
ゆるやかな散文調のようでいて、それぞれの季節を表現する実に映画的なショット〈文学であればそれを季語と呼ぶ〉が鮮やかな印象を残していくため、緩慢な感じはなくテンポよく進む。
みんながワイワイガヤガヤ海の中へ入っていくあたりのシーンを見てふと『紅の豚』が頭によぎった。
1930年代、アドリア海。
ちょうどこの時、別の世界線では赤い飛行機が雲の上を飛んでたり、じゃじゃ馬な設計士が徹夜してたり、空賊の頭たちが悪だくみをしていたことだろう。
初めてこの作品を観たのはテレビ東京・午後のロードショーの「20世紀名作シネマ」というシリーズだった。あまりにも素晴らしい作品だったので、録画したVHSテープを何度か繰り返し観た。
今回鑑賞したブルーレイでは、そのテレビ放映時の日本語吹替版も収録されていて嬉しい。
テレビではカットされていた部分はオリジナル音声&日本語字幕に切り替わるという仕様。
こんなシーンもあったんだと今さらの発見もあった。
映像も非常に美しく、いつまでも手元に置いておきたい一本。