プロミスト・ランド(2012🇺🇸)
原題: PROMISED LAND(2012、アメリカ、106分)
●監督:ガス・ヴァン・サント
●出演:マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、ローズマリー・デウィット、スクート・マクネイリー、タイタス・ウェリヴァー、テリー・キニー、ハル・ホルブルック
いわゆる「シェールガス革命」により巻き起こったエネルギー会社による土地買収を巡る、企業側の人間と小さな町の住民との間で起こるドラマを描くガス・ヴァン・サント作品。
タイトルがクレジットされる瞬間はガレージの扉が開いて光が差し込むカットになっている。
舞台はペンシルベニア州のマッキンリーという田舎町。
そこにあるのは広大な農場。
土地買収のために町を訪れた主人公たち(マット・デイモンとフランシス・マクドーマンド)が最初に立ち寄った店は銃と食料品とギターとガソリンを売っている。
『ファーゴ』の署長役でもそうだったが、フランシス・マクドーマンドはこういったバリバリ働く女性の役が本当に合っているし映画の迫真性を高めている。
「どこの大都市だって2時間走ればケンタッキーさ」
という台詞があるが、経済大国アメリカであっても大半を占めるのはこうした田舎町なのだ。
そして土地買収を行う側のスティーブ(マット・デイモン)もまたアイオワ出身ということで、単に都会人VS田舎者という構図にはなっていない。
この手の社会派映画でありがちな善悪の二項対立になりすぎないように慎重にバランスを取った演出が全体を通してなされている。
スティーブやスーはビジネスとしてやって来ているわけだし構造的に搾取する側だとしても、家族との生活などのバックボーンも描かれている。
環境活動家のダスティンももちろん志は崇高だが手段を選ばない卑怯なことを行っている。
住民側もガス採掘の手法により土地が汚染されることを理由に拒否する者もフォーカスされているが、ストーリー上では町の面積の6割以上の土地の買収がすでに合意されている。
もちろん映画にする以上何らかの結末をつけないといけないので、スティーブの転向がやや強引かなという気もしたが、アイオワ出身のバックグラウンドがそれを説明づけているし、感化されることもなくあくまで社に戻りビジネスに徹しようとするスーの姿が描かれているので必要以上のご都合主義には感じない。
住民投票の結果を映さないラストというのはこれもまた、全てを説明しすぎないという演出のバランス感覚がいい形で出ていたなと思った。
ただ仕事を辞めたあとの彼はどうするつもりなのか、少しの可能性すらも言及されていないのでそこは気になった。