トラスト・ミー(1990🇺🇸)
原題: TRUST(1990、アメリカ、107分)
●脚本・監督:ハル・ハートリー
●出演:エイドリアン・シェリー、マーティン・ドノヴァン、メリット・ネルソン、ジョン・A・マッケイ、イーディ・ファルコ、マルコ・ハント、ゲイリー・ソウアー、マット・マロイ、スザンヌ・コストロ、カレン・サイラス 、ビル・セイジ
妊娠して高校を退学となった少女と、インテリだが対人関係に難のある青年が互いに惹かれあう、という『アンビリーバブル・トゥルース』と似たようなモチーフの物語。
父親を叩くマリアと父親に叩かれるマシューというのも対照的なキャラクター付けがされている。
ちなみにマリアは父親を失い、マシューには母親がいない。
親との関係というのもこの映画の主題の一つである。
マシューが働いていたテレビ修理工場の出入り口とか柵の色が赤、青、黄色の原色になっていてなんとなくゴダールっぽい。
マリアは、蛍光ピンクと蛍光黄緑のバッグ、蛍光紫のトップスに蛍光オレンジのミニスカートと当時の流行なのだとしても訳の分からない表現しがたい色使いをしている。
いたって普通に見えるマシューも実は常に手榴弾を持ち歩き時々取り出しては悦に浸っているという、相当に危ない奴である。
マシューと出会ってからは彼の母親のワンピースを着て髪も後ろに一本縛り、さらに眼鏡をかけてマシューから借りた『人間と宇宙』とかいう本を読みだす。
ここまで来ると文系ナード男の妄想爆発だなと思ったらその本の著者はNED RIFLE、ネッド・ライフル(ハートリーの変名)だということがわかる。
ストーリーは二人の関係という軸と、途方に暮れていたマリアに親切にしてくれた女性の赤ん坊が盗まれ、その行方を追うというプロットが加わる。
中盤でマシューがマリアの母親と語り合う場面で
「A family's like a gun. You point in the wrong direction and you're going to kill somebody.」(家族は銃と同じ。誤ると誰かが死ぬ)
と言う台詞が出てくるが、この一節はベル&セバスチャンの楽曲"見てはならぬ夢(I Could Be Dreaming)"で引用されている。
直後、マリアとマシューはベッドの上でキスをして、マリアは手榴弾を握りながら明日中絶に行くと彼に告げるという、ここは非常に象徴的なシーンである。
「人は知らない間にお互いを変える。心で望んでるの」
これは産婦人科医がマリアに語った台詞だ。
「なぜ私に優しいの?」
「ほっとけない」
「なぜ僕に優しいの?」
「ほっとけない」
別の場面で同じ会話がリフレインされる。
映画はマリアが口紅を塗るシーンから始まり、最後はマリアが眼鏡をかけるシーンで終わる。