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ナック(1965🇬🇧)
原題: THE KNACK ...and how to get it(1965、イギリス、85分)
●監督:リチャード・レスター
●出演:マイケル・クロフォード、リタ・トゥシンハム、ドネル・ドネリー、レイ・ブルックス
ブラインドとボーダー柄のシーツやまくら、螺旋階段に居並ぶ白ニット、銀のペンダント、タイトスカートの女たちというコントラストのオープニングで幕を開ける。
主人公コリンの妄想である。
同じアパートのモテ男トーレンからモテる秘訣を教わりながら、同居人で壁を白に塗りたがるトムも合わせた男3人が、ロンドンに出てきたばかりの娘ナンシーに出会って振り回されて・・・というドタバタ映画。
ドタバタを繰り広げながら時折傍観者的な年配者の「最近の若いもんは・・・」的な会話風のダイアローグが乗っかる。
コインロッカーの扉を一つ閉めたら別の扉が開き、それを閉めたら別のが開き、近くのコーヒーの自販機のボタンを押すと扉が上手く閉まったりというちょっとしたギャグも挟まれる。
パニックになったコリンが階段降りたり玄関閉めたりといったシーンがリピートされたり、逆回転シーンがあったり、ナンシーが「レイプされたの」と突如言い出すシーンでは唖然と戸惑う男たちが遠くに瞬間移動したり漫画とかアニメであるような演出。
観客に語り掛けるようなシーンもあったり、演出法がかなり独特。
コリンがトーレンに「僕の椅子は?」(my chair)とガールフレンド(ジェーン・バーキン)が「髪の毛が…!」(my hair)のライミングとか、「記録を更新しろ」(break records)と言って急ぐ男たちと、レコードを投げ捨てる(she's breaking all your records)場面、トーレンがコリンに経験人数を聴いてる場面での「2人?」「奥手なんだ」も原語だと「two?」「late」でかかってたり、「bomb drop」の台詞の直後に生卵を落とすショットが来たり、もっとあったのかもしれないがこういった言葉遊びが随所に散りばめられている。
基本的には洋画は吹き替えのほうが好きだし、選べるときは吹き替えにする主義だが、『不思議の国のアリス』とかもそうだけどこういう掛詞やダジャレが多い作品は原語がわかるほうが楽しめると痛感させられる。
モテるためにはでかいベッドを手に入れようというくらいのトンチンカンなコリンだが、廃品回収置き場からベッドを転がして街を駆け抜けるシーンは痛快。(ベル&セバスチャンも"Jonathan David"のPVで引用)
なので、ストーリーや筋道、起承転結を追う楽しさというのは皆無。
音楽も含めてその瞬間瞬間、そのシーンそのシーンでの視覚的快楽を味わえるかどうかが今作を鑑賞する上でのキーになる。
まあ、パルムドールを取るほどなのかと言われると謎。
チョイ役で出ているジェーン・バーキンが可愛い!
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商品としては20世紀フォックス版もあるが、シネフィルイマジカ版のほうがジャケットや小西康陽寄稿のライナーノーツのデザインがカッコいいしステッカーも入っていて良い。
今は動画配信サービスの充実により映画鑑賞における選択肢が革命的に増えて喜ばしいことなんだけど、その一方で音楽のレコードなどと同様に、映画でもデジタルではなくこういったパッケージ作品・フィジカル盤としての良さも勝手ながら語り継いでいきたい。
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