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パラダイス:愛(2012🇦🇹)

原題: PARADIES Liebe(2012、オーストリア=ドイツ=フランス、120分)
●監督:ウルリヒ・ザイドル
●出演:マルガレーテ・ティーゼル、ピーター・カズング、インゲ・マックス

ユーロ開催に乗っかってヨーロッパ映画を観ていこうシリーズ。さすがに24カ国分は無理があった。

オーストリア映画だけど、舞台のほとんどはケニア。

ウルリヒ・ザイドル監督によるパラダイス3部作の一作でサブタイトルに『愛』とついているが、愛の対極というか、愛ではないものというか、排反による証明のような解法で浮き彫りにしようとしている。

映像はフィックスショットを多用していてなかなかドぎついことが描かれているシーンでも落ち着いて鑑賞できる。

その分、制作者の主観よりも観る者に解釈を委ねるというドキュメンタリータッチというかもっと言えば「ずるい」手法で作られている。

倫理的にも際どいテーマのため、ギリギリのラインで主観を抑えて観客を共犯関係に誘い込むかなり挑戦的な映画だ。

中年女性によるアフリカの青年たちの買春というテーマは、構造としては性的搾取と捉えられても劇中ではどちらが被害者と言えるのかはわからない。

性別を逆にすれば間違いなく性的搾取という文脈に収斂されたり、ポルノとみなされるところをこのようなでっぷり太った中年女性を主人公に設定したところが目くらましというかバイアスの分散化のような効果を上げていると思った。

気になった点は、主人公テレサがケニアに来てデジカメで写真を撮る場面。

映画の中では3回出てきていて、最初はホテルのバルコニーに現れた二匹のサルを撮影しようとするシーン。

次に小学校で昼寝をする子供たちの写真を撮る場面と、関係を持った男の裸の写真を撮る場面だ。

最初のサルの場面では「バナナを餌にして写真に収めようとするも、二匹ともに逃げられる」テレサの姿が描かれていて、この後の彼女の顛末を暗示している。

ちなみにワニの餌やりショーを見物するシーンでは他の女性は写真を撮っているがテレサはカメラを持たず見ているだけ。

昼寝する子供たちを撮影する場面とか、ビーチで人を立たせてサンダルを順番に蹴り飛ばし当たったら勝ちというゲームの場面とか、見ようによってはなんてことないシーンと言えるし先入観を持って見ればヨーロッパ人による黒人への無意識の差別心がそこにある、と見做すことができる。

愛は一方向ではなく、双方向でないと得られない。

いまだ植民地時代の構図が根付いているアフリカの地で、「買う側」の立場にいつづける彼女が黒人男性から本物の愛を得られることは決してない。この地に留まり続ける以上は、決してない。

他の2作品もそのうち観ようと思う。

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