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クリエイション・ストーリーズ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~(2021🇬🇧)
原題: CREATION STORIES(2021、イギリス、109分)
●製作総指揮:ダニー・ボイル
●脚本:アーヴィン・ウェルシュ、ディーン・キャヴァナー
●監督:ニック・モラン
●出演:ユエン・ブレムナー、スーキー・ウォーターハウス、ジェイソン・フレミング、トーマス・ターグーズ、マイケル・ソーチャ、メル・レイド
レオ・フラナガン、ジェイソン・アイザックス
プライマル・スクリームの"Rocks"から幕を開けるこの映画は音楽レーベル「クリエイション」を立ち上げたアラン・マッギーの半生をドラマ化した作品。
邦題のサブタイトルに"~世界の音楽シーンを塗り替えた男~"とあるが、ファンからしてもそこまでかな?という気がする。
「80年代後半~90年代末期のUKインディーギターロック」界にとっては凄い人物であることには間違いない。
なので映画単体として見れば一部の好事家向けという立ち位置であることは否めず、クリエイションとかアラン・マッギーを知らない人(そもそも知らない人は見ないのかもしれないが)にとってはなんだかふーんってな感じになるかもしれない。
まず、マッギーと学生の頃からの友人というボビー・ギレスピーが風体がまんまそっくりで笑った。
その後に出てくるケヴィン・シールズとかギャラガー兄弟なんかも再現VTRとして十二分に仕事しすぎ。
アンドリュー・イネスも最初の方から出ていて、マッギーとバンドを組んでいたというのは知らなかった。
まずはテレビジョン・パーソナリティーズを当て、次に登場したのがジーザス&メリーチェイン。
その後にマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが出てくるが、チラっとパステルズの"Speeding Motorcycle"がバックで流れていたのは聞き逃さなかった!
『ラヴレス』のレコーディングのエピソードを描いた後はエクスタシーとアシッドハウスブーム。
よくロック界では1991年という年が語られるが、『スクリーマデリカ』、『ラヴレス』、ティーンエイジ・ファンクラブの『バンドワゴネスク』がすべてクリエイションからというのは冷静に考えて凄いことだ。
そしてオアシス登場。
そのあとは病気や政治参加など、マッギーとクリエイション周辺のエピソードを順々につなげていく構成。
映画としてはテーマを一つに絞っても良かったのかなとも思った。
~以下、映画内容とは関係ない話~
見ながらの感想としては、ロックが下火になっている今、「あの頃はよかったなあ」というすこし淋しい気持ち。
再結成するしないで定期的に揉めるギャラガー兄弟はまだ現役感があるが、プライマルはもう新作は出ない、…だろうし、マイブラは精神と時の部屋状態(※通常の人間とは時間感覚を超越するほどのマイペース)。
ジザメリやライドも頑張っていると思うが、昔ながらの常連客のために老舗の味守ってます感というか…。まあでも解散せずにリリースし続けること自体が素晴らしいことなんだよね。
ただ、パンク~ニューウェイブの影響下で始まったクリエイションのバンドたちも現在は自己模倣というか、過去の焼き直ししながらローリング・ストーンズ化して生存するしかないというのは、ビジネスとして割り切らなければならないにしても、もうちょっと夢も見たい。
・・・なんてことを考えていたが、ジザメリのインタビュー場面が印象に残った。
「セックス・ピストルズ以来の問題バンド」と称されていることについて、
「別に似ていない。くだらない比較だ。好きでもないし」
「おれたちは商業的バンドだ。ライバルはカルチャークラブやデュラン・デュランだ」
と言い放つ。
「NME誌はジョイ・ディヴィジョンと比較」と水を向けられると
「奴らはクソバンドだ。並列で語られたくない。退屈なバンドだ」と発言。
ピストルズが提示したパンクというものを受けて、ではその後どう出るというのを一番シリアスに考えて、真剣に研ぎ澄ませていったバンドがジョイ・ディヴィジョンだと思う。もちろん音楽性はジザメリとは全く異なる。
あえての逆張り…でないとすれば理想化されたパンクの否定と受け取れるし、本質的にはニヒリズムのど真ん中を撃ちぬいているわけでパンクの精神性をストレートに継承しているとも言える。
他者や過去との比較をしない絶対的な自己、それこそがロックの本質ということなのかもしれない。
確かにオアシスは"Supersonic"の出だしでこう歌い放っていた。
「I need to be myself(おれはおれでなくてはならない)」と。