殺しを呼ぶ卵(1968🇮🇹)
原題: La morte ha fatto l'uovo(1968、イタリア、105分)
●監督:ジュリオ・クエスティ
●出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ジーナ・ロロブリジーダ、エヴァ・オーリン、ジャン・ソビエスキー
イタリア残酷派、ジュリオ・クエスティ監督による映画史上唯一の養鶏サスペンス。
まず「イタリア残酷派」という様式がある?というのを初めて知った。「イタリア未来派」的なことだろうか。
B級映画的佇まいと見せかけて主演の二人はどちらも名の知れた一流俳優。
エヴァ・オーリンはサイケ感満載のカルト映画『キャンディ』(1968)の主演としておなじみ。
過剰なほどのスリリングな音楽と、やたら辛気臭い表情ばかりの登場人物の顔のクローズアップがシリアスさをこれでもかと際立たせる。
「生」や「未来」の象徴であるはずの卵、そこから生まれた首と羽毛のない鶏。
人間の欲望を餌に膨れ上がった資本主義という怪物が作り出した、待望の奇跡の畸形種。
正直、愛憎の三角関係やサスペンスよりもこの悪魔の子のようなブロイラーが作り出す物語の方を核にしたほうがもっと面白くなったんじゃないかなと思った。
時代は1968年ということで、『時計じかけのオレンジ』を彷彿とするような、危険なムードにも関わらず全体的な色彩設計がポップで良い。
画面全体に敷き詰められた無数にいる鶏の白い羽毛とトサカの赤をロングで観た時に、一瞬白い雪の中に飛び散る鮮血の幻覚を見た。