キシュ島の物語(1999🇮🇷)
英題: Tales of Kish(1999、イラン、72分)
ペルシャ湾に浮かぶ小さなサンゴ礁の島、キシュ島の観光局が製作したオムニバス映画であるが、3人の名匠による短編集は観光映画という枠組みを超え、いわゆる一般的なイラン映画(…芸術的に高水準で鑑賞に堪えうる)として楽しめる。
第一話“ギリシャ船”
●脚本・監督:ナセール・タグヴァイ
●出演:ホセイン・パナヒ、アテフェ・ラザヴィ
どこからともなく流れ着くSONYやらNIVEAやらの無数の海外製品の段ボール。
主人公の男がその段ボールを回収するのが打ち捨てられた“ギリシャ船”。
この設定の段階で寓話的な映像詩の表現に成功している。
その後病を患った男の妻を治療するため、原始的なまじないに頼っている。
未だ非近代的な因習が残る孤島の世界も、グローバルな資本主義によって包囲されているということを描いている。
第二話“指輪”
●脚本・監督:アボルファズル・ジャリリ
●出演:ハフェズ・パクデル
何も起こらない。
男が黙々と働き生活するだけ。
ネオレアリズモという論評もあったが、まさに本当にそんな感じで、感動するくらいに何も起こらない。
第三話“ドア”
●脚本・監督:モフセン・マフマルバフ
●出演:モハマド・A・バブハン、ノリエ・マヒギラン
無間に広がる水平線。
青と白のコントラスト。
この画が撮れる時点でお手上げだ。
ドアを背負う男。
ドアは他者との境界線であり、連絡地点だ。
彼の後に従う娘と、連れられる黒い子ヤギ。
ドアを背負っていた一応の訳はラストで示されるが、ストーリーよりも絵画的なショットのインパクトを力学として映画は進む。
イラン映画は何本か見てきたがこういった海洋的な?作品は観たことがなかったので新鮮だった。
商品DVDには丁寧にもキシュ島の観光名所に関しての情報も収録されている。