「ねえキスしよ」(Y#1)
その子と出逢ったのは、猛暑と呼ばれていた年の夏の盛りのことだった。
それまで利用していた店が閉店し、少しデリバリーヘルス利用から遠ざかっていた。そんな時に新しい店がオープンした。関東のあるデリバリーヘルスの支店が僕が住む街に出店したのだった。
大都市圏であればいざしらず、地方都市においては身バレについて考えなければならないのは客も同じである。僕は地元の女の子が在籍していないであろうお店を選んで利用していた。
今までお店では出稼ぎの子は一度来て、その後は来ないことが多かった。初回の出稼ぎから稼げないと二度目はないし、初回はたくさんお客がついても二度目はお茶を引く日々であったりすると三度目はない。飛んでしまった女の子もいた。
そうであるから気に入った子ができたとしても、再び会えないことが常だった。また来ないかなと思っていてもそれは叶うことはなかった。
そのお店はちょっと違っていた。女の子の大半は関東のお店にも在籍があり、そこから支店に出張するかたちで来ているようだった。しばらく様子を見ていたが、来る子は月に数日はこちらにも必ず来ていた。
地元の子ではなくて、必ず定期的に来る女の子が在籍している。これは今までとは違うことなので少し胸が踊った。