嬢をめぐる冒険(N#16)
抱き合わず、腕枕もしない、手も繋がずに仰向けで布団をかけてお互いに目をつぶったまま会話を続けた。でもあまり会話の内容は記憶に残っていない。
そしてタイマーが鳴った。シャワールームへ向かい、身体を洗ってもらった。そして僕は早々と服を着て帰りの支度を整えた。
今回は会う前から連絡先を渡してから帰ることを考えていた。
決して店外で会いたいとかそういうわけではない。お店が変わったりすることがあるのならばその時に知らせて欲しいだけだった。
お店を通してで良いので関係性を途切れさせたくなかった。そう思わせる子なのだ。だから何度も会いに行くのだろう。
でも連絡先のことは口には出さずにその日も「ありがとう」だけ言って帰った。
それを口に出して関係性が壊れることが怖かった。
表の顔のヒントは与えても答えにはふれないようにしている関係がお互いちょうど良いのかもしれない。
帰りの車の中では釈然としない気分になっていた。毎回、感じていた会えた時の嬉しさと名残惜しさとは違う感情に覆い尽くされていた。
連絡先を交換することを踏みとどまって良かったと思うようにした。
それからはあまり考えることはしないで、地元で他の女の子を呼んで遊んだりしていた。
それでも彼女と波長が合うタイミングはまた訪れるのだった。