運ばれる男#3
車窓から見覚えのある建物がたくさん見えたので通ったことのある道路を走っていて確実に湯島方面に向かっているのがわかりました。
そしてあるホテルの前に車は止まりました。
「こちらでお願いします」
車を降りて僕とお姉さんはようやくお互いの顔をはっきりと見ることができました。そこで改めて挨拶をしました。
「このあと怖い人が現れて、身ぐるみ剥がされて、ここに放置されたらどうしようか...」
これから致すと言うのにまだ警戒心の塊です。
ドライバーさんには帰りに僕が泊まっているホテルにちゃんと送ってくれるか確認しました。
入り口を入るとお姉さんは僕に腕を絡ませてきました。昔ながらのホテルなのでパネルで部屋を選ぶ方式でした。
楽しそうにお姉さんが部屋を選んで、腕を組んだまま部屋に向かいました。お姉さんはすごく嬉しそうです。
その当時、僕は30代の前半でしたが、一回りくらい歳上の女性の感じがしました。
会話は何も憶えていませんが、この業界で働いて長い雰囲気はありました。明るく楽しいお姉さんでした。顔は好みでありませんでしたが、嫌な感じが全くありません。
終始イチャイチャしてくる感じで、僕は勢いに圧倒されていました。
「急に態度が豹変したりするのかな...」
まだ疑心暗鬼のままの自分がそこにはいました。