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嬢をめぐる冒険(N#23-2)
その後は腕枕をしていたが、僕は急に起き上がって布団から出てしまった。そしてベットに腰掛けた状態で横になっている彼女と会話を始めた。
恋人気分を味わうのとはちょっと違う気がしたのだ。
すると彼女はあまりこういう場所にはそぐわない話題を出してきた。
「お兄さん、宗教は...?」
「仏教の家だけど宗教は特にこだわってないよ」
そこから続いたのは宗教団体の話題だった。
「私、実家が〇〇であの辺は信者の方多いんですよ」
彼女はその宗教の信者だったわけではない。地元で自分が経験したある宗教団体の話だった。
これはデリケートである。相手がその宗教の信者だったらアウトである。「しかし、危ない話するね。俺がもし信者だったらどうするのよ」笑いながら聞いた。「お兄さんは大丈夫って思った」どうやらそういうことのようだった。
会ってまだ2回目である。人間観察力と洞察力に長けていると思った。
しかも、僕に実家の最寄りの駅まで教えてしまっている。
その街は僕が若い頃に住んでいたところの隣街だった。
彼女の地元の繁華街のことはよく知っていた。だから話は盛り上がった。
楽しかったのだが不用心な子だなと心配になってしまった。過去の壮絶なトラブルの話も聞いていたので驚きもした。
しかも彼女は自分がAO入試である大学に通って何を専攻していたかも話してくれた。どうりで賢く見えるわけである。
それでも彼女がなぜ風俗嬢となったのかは話には出なかった。そして僕も聞くこともなかった。
調べれば本人を特定できるだけの情報はお互いに開示してしまったようだった。でもお互いに大丈夫と思っていたのだろう。
その後も2人の間で何度もこの話題は出るのだが、決まって彼女は
「大丈夫な人って思った」
「話したくなっちゃった」
と言うのだった。