廻る花びら#1
10年ほど前の秋に神戸に出向く機会がありました。仕事に関するセミナーだったと思いますが、2泊3日の予定で訪れました。
その当時、女性従業員同士の人間関係のことが原因で管理職だった僕は仲裁せざるを得ない状況になりました。精神的には参っていた時期でした。
そんなことを抱えたまま神戸を訪れることになったのですが、日曜日の予定が終わってから仕事は休んで延泊して月曜日までいることにしました。気分を変えたいと思っていました。
日曜日の午後までは仕事仲間と一緒にいました。参っている僕を見て、
「お前、福原でも行ってスッキリしてこい!」
と言い残して先に帰っていきました。
福原といえばソープランドが軒を連ねる西日本最大級の歓楽街として名を馳せている街です。福原遊郭から始まり、戦後の赤線地帯です。
僕は店を利用するかどうかは別として古くからある花街を訪れることが好きなのです。知らない土地に行った時は必ず訪れています。
「そんな気分じゃない」と思っていましたが、これはまたとない機会とも思いました。
そして日曜日の夜に福原を訪れました。
日曜日の夜だったので閑散としていました。閉まっているお店もたくさんあり、活気はありませんでしたが街の空気を感じるには十分でした。
ネオンを煌々とつけているお店もありました。その中でひときわ目立つ看板のお店がありました。
「花びら回転ソープ」「時間内発射無制限」
ただ街歩きをして帰るつもりでいましたが、その看板を見て入ってみようかと思う自分がいました。
「花びら回転って女の子が入れ替わり立ち替わりだよな」
僕は今まで花びら回転は経験がなかったので興味も湧いてきました。
とにかく沈んだ気分を変えるのには良い荒療治と思ってお店に入ることにしました。
お店は日曜日だから空いていました。待合室にほとんど人がいません。
在籍している女の子はみんな若そうなギャルばかりでした。システムの説明を受けて、二人の女の子を選びました。
「90分で二人だから一人45分か」
普段はギャルはあまり指名しませんが、その日は良いなと思っていました。基本的に明るい子が来る確率が高いからです。
経験のないことに想像は膨らみますが、悲しいことに高揚感が全くありませんでした。
静まり返った歓楽街、静かな待合室、静かに待つ男1人
この静寂を果たして打ち破ることはできたのでしょうか???
つづく