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8回目のカウンセリング "セイ"のことについて

セイ、生、誕生すること、生きること
セイ、性、性別のこと、性差のこと、性生活のこと

最近の私にとっては セイという響きは、性生活。そればかりだ。

性生活

カウンセラーのサトウさんは恐らく50歳くらい・・の男性。
30手前の女である私から、父親くらいの歳の男性に対して、
性生活の悩みを打ち明けるには心理的ハードルがあった。
でも無い袖は振れない、他に頼る先がない。
昨日、違う人を頼ろうとして傷ついただけで得るものがなかった。

それにこの人はカウンセラーという職を20年も続けているのだから
この程度の話をされて動揺することもなかろう。
今までも、私が人に言えない「性格の悪いこと」をぶつけても
私のことを否定するような反応は一切見せず、解決の糸口やキッカケになる気づきをくれた。そう、ちゃんとした職業カウンセラーなのだ。
つまり、私はこの人を一方的に信頼し始めた。だから相談することにした。

私は、これまでのカウンセリングで毎度、パートナーの話をしていた。
彼の話から始まったわけではないのに、流れでいつの間にかそうなってしまう。
普段一緒に生活している中で、彼の発言や振る舞いを観察し、なるほどと尊敬した点、羨んでいる点などを話した。
サトウさんは、私とはまるで逆の思考をするパートナーの話を聞くと高らかに笑って、素晴らしい、素晴らしいですねとよく言っていた。
そういう考え方ができるパートナーさんは素敵、だと。私もそう思う。
この人のこういう部分を自分に取り込みたい、という憧れの感情が、数年一緒に暮らしていてもなくならないのがすごい。普通は数ヶ月もすれば消えてしまうのに。

そんでもって今回、「単刀直入にいうと性生活のことです」と切り出した。
サトウさんは真顔の仮面を張りつけたみたいにした。
今私の前で、顔を綻ばせてはいけない、険しい顔をしてもいけない。
そういう緊張感を感じた。

私は続けた。
・私には性を嫌悪する感情があって、一方相手はオープンであること。
・私は全然”そういうこと”をしたいと思わないけど、相手は少なくとも人並みには求めていること。
・今までぶつかった時は、コミュニケーションでお互いの気持ちや考えを理解してきたけど、この問題に関してはいくら話してもわかり合うことが難しいこと。
(「したくない」という感情は、相手にはないし、「したい」という感情は私にはない。そういう状態でどれだけ話し合っても、お互いに「なるほどね!」とならない)

サトウさんは、最後のところで大きく首を縦に振っていた。

・でも、今後も一緒にいたいと思っているから、私が嫌悪する感情をなくして楽しめるようになりたいこと。

そう言うと、パッと明るい顔をしてちょっと意外そうに「そうですか!」と言った。私は、悪い意味はなく、その反応が少し気になった。

サトウさんは、普段カップルのカウンセリングをしているからこういった問題は避けても通れないので、専門っちゃ専門だ、とのこと。良かった。不得手であれば別の人を紹介してもらうしかないか、と思っていた。

「今お話を伺った感じ、ナツミさんは、そういった行為に罪悪感を感じているところが強そうですね?」

「でも、今までお話ししてきた感じ、ナツミさんは、『罪悪感を感じる必要がない』と頭で理解できれば、大丈夫になる人だと思ってます。」

私は、その言葉が本当に本当に嬉しかった。涙が出そうになるくらい。
ああ、この人、私のことをちゃんとわかってくれていて、嬉しい。
私もそう思っている。
性に対する嫌悪感、それを信じ込んでいる理性の、変に絡まりまくってよじれた部分を解きほぐしさえすれば、私は大丈夫になると思っている。
だから、パートナーに、これは解決できる問題だと言い張っている節がある。と思う。

ところで昨日、婦人科にかかった。(挿入時の痛みを緩和するために、毎回股を開いて診察され、薬を処方されている・・。)
薬で治るのは身体面、物理のアプローチだとして、心理面のアプローチもしたい、そういった機会がこの病院にあれば、と思いセックスセラピストの資格を持った女医に相談をした。
「挿入時の痛みが性嫌悪につながっている部分もあるし、逆に性嫌悪が痛みにつながっている部分もあると思っています。薬の治療を続けた上で、他に打ち手はないでしょうか」と。
期待していた答えは、「それなら相談窓口があるよ」とか「カウンセリングを予約することもできるよ」など。ところがだった。

「世の中にはセックスをあんまりしたくない男性もいっぱいいるんだよね、女性と同じくらいの割合で。だから今の人と別れて、そういう人に大事にしてもらえばいいんじゃないかな?性嫌悪って治すの難しいからさ」

齢29歳、診察室で涙が出そうだった。マスクの下で一生懸命堪えた。
そもそも私は、「今のパートナーと今後も一緒にいるため」という目的のもと、痛みを緩和したくて治療に来て自費診療の薬も購入して毎日毎日自分の股に手を突っ込んで薬を塗っている。今のパートナーがいなければ、こんなことはしていない。これは彼と一緒にいるための切符獲得戦なのだ。

なのに、パートナーを変えなさい、じゃ本末転倒じゃないか。私がここにきた動機については以前話して、カルテに記載されているはずなのに、あなたの提供できる選択肢ってそんなもんなのか。
その後、トイレや病院の外、地下鉄でも、何度も涙が溢れて来ては拭った。
悔しかった。悲しかった。

この話をサトウさんにしたら、呆れたような目つきで
「・・ひどいこと言いますね」と共感してくれた。
アザッス。そう、それだけが欲しかったんです。
ひどいねって言ってもらいたかったんです。ありがとうございます。

婦人科から家に帰ってこの女医からされた話をパートナーにしたら
「前に俺が言ってたことと同じだね」
とのことだった。
そりゃ、傷ついたから覚えている。この件で喧嘩するたびに「セックスしたくない人と付き合った方が幸せなんじゃないの」と言われている。
「その女医、男性的だね」とも言った。
その言葉に、それ以上の意味はないのかもしれない。
でも、そうか、君は女医の意見を支持する側か。と感じた。
女医&パートナー VS 私 になってしまった気がした。

『いやあ、何にも知らない赤の他人にそんなこと言われる筋合いないよね。俺たちは頑張ってるのにね。』
そんな風に言ってもらいたかった私は、より悲しくなってしまっただけだった。

この通り、パートナーにも同じことを言われてしまった、という話もサトウさんに打ち明けた。「そうですか・・」と声を落としていた。

ここからがサトウさんの本領発揮、、になるのだろうか。
今後は、性嫌悪の感情の根本にある部分をときほぐしていこうという話になった。
私から、恐らく母の影響が強い、という話はした。

・キスをするようなドラマは家ではタブーになっていたこと
・初めての女性用下着を買いに行くのにすごくギクシャクしたこと
・母とお風呂や温泉に入った経験がないこと
・「彼氏」というワードは他人の話であってもしてはならない空気だったこと
・私が女の子らしくないことを母は喜んでいたこと
・だから私は女の子っぽい色はとりあえず「嫌い」と言い張っていたこと

驚きながらも、「最後の、ナツミさんぽいですね」と笑うサトウさん。
「ナツミさんのお母さん、たまにすごく尖ってますよね。」
私からしたら母は一人しか知らないもんで、これが普通だと思っていたから・・

「お母さんがどうしてそれほどの嫌悪を抱えていたのかはわからないまま、亡くなってしまったんですね。ナツミさんの性嫌悪はお母さんの原因を理解することでもあるので、うーん・・」

言葉に詰まるサトウさんに、インプットになればと思い私が続ける。
私ができちゃった婚の子供で、本当は子供なんか欲しくなかったのに、結婚になって、父は親から「堕ろせ」と言われたそうで家と縁を切り、家のゴタゴタで結婚式もお金を払っていたのにキャンセルしたらしい・・という話。だから、そういう行為で、嫌な思いはしてきたかもしれない。と。

サトウさんはメモしながら「根深いですね!」と腕を組んだ。

ここらで、時間がきた。

「次回もっとこの辺の話を伺うとして・・。
まず、ナツミさん自身が『性嫌悪をなくして相手に歩み寄りたい』と思っているのがすごく良かったです。」

なるほど、最初にサトウさんが意外そうに反応していたのはそういうことか。
性嫌悪する人が誰も彼も、それを克服したいと思っているわけじゃない。
そういう人は先の女医の「他の人を探した方がいい」というアドバイスを胸に、そうか!その方が幸せだ!と新たなパートナー探しに勇めたりするかもしれないのだ。

まず、前向きな気持ちになっていることが良いこと。
だから次回もやっていきましょう。
そういう声かけが、ありがたかった。

昨日は「性嫌悪はそう治らない」と言われてすごく落ち込んだけれど
今日は「頭で理解すれば克服できる人だから、大丈夫」
そう言われたことで心が回復した。自信が持てた。

カウンセラーの付加価値って、、そういうところだよね。
女医さん、あなたに価値はあったのかな。。少なくとも私の来院目的には合致していないような・・(ゴニョゴニョ)

まあ、いずれにしろ、今日話せて良かった。
きっと次回、いい時間にできると思う。感謝。シェイシェイ。

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