立 ち 上 が れ 滉 燿 くん ! ~明日を信じた5年間~4(2) 身体機能・知的面でも成果が出ます 楽しい時期でした
前編 立ち上がれ滉燿くん !~明日を信じた5年間~4(1) 3年生になったよ
ドンドン成果が出ます。バスにも乗れました。でも、困ったこともするんです、滉耀くんは!
3年生1学期(2005年 H17年)
21 どんどん良くなるぞ!
膝や足首は固くなってしまいましたが、この頃から、滉燿くんは普通のいすに座ることが出来るようになりました。昨年の今頃では、滉燿くんを椅子に座らせても座った姿勢を保つことが出来ず、ぐにゃりと床に倒れそうになっていたのです。バギーに乗る時も、前に倒れないように、胸当てベルトやズリ落ちないように腰ベルトをしていました。それが、ベルト無しで椅子にきちんと座れることが出来るようになっていたのです。全く素晴らしい進歩でした。おかげで、床(畳)の上に座って勉強していたのが、普通の机と椅子を使うことが出来るようになりました。普通の机を使った方が、姿勢が楽に勉強できるので助かりました。
手を使う訓練ですが、身近にあってお金のかからないものと・・・。探してみると百円ショップで、重ね収納型のコップを見つけました。ちゃんとした名前が付いているのでしょうが、本当の名前を知りません。同じ形の四つのコップを重ねて、それを一まわり大きなコップ(下側)の中に入れて、さらに一回り大きなコップ(上側)でふたをするレジャーで使うお馴染みのコップです。中に入れるコップは、赤・黄・白・水色とそれぞれ違うのですが、最後に入れる一回り大きなコップが同じ白でした。そこで、一番外側の入れ物になるコップに黄色のビニールテープを巻いて見分けがつくようにしました。
「滉燿くん。このコップを中に入れて、しまってみるよ」
机の上に置いて組み立て収納させてみました。見本をやって見せます。
「滉燿くんやってみて」
嫌がらず始めました。手の力が弱いので、立てているコップを倒したり、重ね損なったりと難しそうです。特に、最後に一回り大きなコップの中に入れる時、入れるべき下のコップか、ふたになる上のコップか、上下がよく分かりません。コップを上にしたり下にしたりして、時間がかかっていましが、、あきらめずに最後まで組み立てることが出来ました(\(^O^)/)。
これを繰り返し練習させました。気をつけたのは、私が手出しすることで、滉燿くんの『考える力』を邪魔をしないようにすることです。滉燿くんが上手に持てずにコップを倒しそうな時だけ、ちょっと支えるだけです。
『やり方』は教えません。時間はかかっても、滉燿くん自身に考えさせるようにしました。教えたい心を辛抱しました。滉燿くんもいやがらず、途中で投げ出さずにやっていました。目は輝いて、笑って舌を出しながらやっていたので楽しい作業のようです。
段々と要領も覚えて、中に入れる四つのコップを重ねる時間が早くなってきました。当然、私が手伝う機会も少なくなってきます。最後の作業の重ねた四つのコップを一回り大きなコップの中に入れる要領も良くなってきました。十分上手になったところを見計らって、入れ物になる下側のコップに貼り付けているテープを外しました。
どうするかなと見てたら、直ぐには、大きな白いコップのどちらが下か上か見分けがつかないようです。しかし、滉燿くんはうまくかぶさらなかったら、上下を入れ替えるという試行錯誤しながら組み立てをやっていました。
ある時、下にする側のコップの外側の底には、滑り止めの様な四つの点々(出っ張り)が付いているのに気づました!
重ねる前にこれを見て、どちらが上か下か確認してから入れるのです。誰にも教わらずに、滉燿くんが一人で考えて解決した瞬間です!ナント!
一歳くらいかなと思われている知的レベルも、少しずつ上げていくことが出来るかも知れません。また、一つ希望が湧くのを感じました。
でも、折角新しく作ってもらった歩行器には興味がもてませんでした。
「午前中三十分・午後三十分位乗せてください」
ですが、乗せてもボンヤリ立っているだけでした。
「滉燿くん、こっちへおいで」
少し離れた所から、手招きをしながら声をかけても、やっぱりボーッと立っているだけです。歩行器に乗って、自由に好きな所へ行くことが分かれば面白くなって動き回るのではと考えましたが、甘かったのです。
自分で自由に動く経験をしていない滉燿くんに、歩行器に乗って動き回れと言っても無理な話でした。それで、一学期の間は歩行器には五分間か十分間ぐらいしか乗せませんでした。
22 見学時の発見
3年生は、学校の勉強で市内の施設の見学に出かけていきます。6月に、市立図書館の見学に行きました。市立図書館は自動車で15分です。一学級ずつ貸し切りバスで行きました。この様な時に、滉燿くんは特別なチャイルドシートを家から持ってきて、バスの座席にとりつけていました。
でも、今回は、普通の椅子に座れるようになったからと、バスの座席に着いているベルトだけで済ましました。ちゃんと座っていられるかとちょっと心配しましたが、これが大成功でした。
これで、非常に手軽にバスを利用できます。見学は無事に終わりましたが、おかしな二つの事件が起こりました。
一つは、見学には担任の西本先生の他にもう一人先生が引率について来ましたが、その先生が来る前にバスが発車してしまいました。途中で西本先生が気づいて、バスは学校の近所を大きく一周して学校へと引き返しました。残された先生には気の毒でしたが、何で気づかなかったのと大笑いでした。
二つ目は、図書館から帰ろうとしてバスの所に行ったところ、バスはエンジンが動いているのに、肝心の運転手さんが見あたりません。周りをしばらくウロウロして探して見ても運転手さんは見つかりません。フロントガラスから背伸びをして中を見ていた子が、中で横になっている運転手さんを見つけました。
「運転手さーん。」
みんなでドアを叩いたり、大声で呼んだりして、やっと運転手さんは起きてくれました。運転手さんは中で横になっていて、いつの間にか眠り込んでいたのだそうです。この時も大笑いでしたが、滉燿くんにとってはバスの座席に座ることが出来る「発見」があった社会科見学でした。
23 困った滉燿くん
楽しい学校生活を過ごしている滉燿くんでしたが、なかなか直らない困ったことがありました。それは『ぐずり』とお母さんが呼んでいるものです。これまでにもチラチラと紹介していました。
「ウオー、ウオー」
何か気に入らないことが有ると大声で床の上を転げ回って抵抗します。無理にやらせようとすると、それに泣きが加わります。朝、起きて学校へ行く準備をしようとすると、いきなり「ウオー、ウオー」が始まって服を着替えさせない、ご飯を食べないが時には二時間も続くことが有りました。学校へ来るのが遅いので、心配で滉燿くんの家へ電話をすることも有りました。
「今、ぐずっています」
電話で言うお母さんのため息と共に、ウオーウオー言っている滉燿くんの声が聞こえることが有りました。
小さい子どもが、朝起き抜けは機嫌が悪いことが良くあります。滉燿くんの知的なレベルは小さい子と同じくらいのレベルですから、無理もないことでしょう。
さらに、何が気に入らないのかを言えない事も、つらかったと思います。でも、世話をする親御さんも大変ですし、普通の子どもと違って滉燿くんの成長と共に困った行動が減っていくとは言えませんでした。
学校でも同じ様に「ウオーウオー」と言い出すことがありました。家と同じく、何か気に入らないことが有ると始まります。時には、何の理由もなく突然始まることも有りました。機嫌良く休み時間を過ごして授業時間が始まります。勉強は大好きな数字の勉強です。席に座らせます。
「さあ、勉強始めるよ」
言いながら数字カードを机に並べたとたんに、
「ウオーウオー」
両手を使って数字カードを手で払いのけたこともありました。
「ダメじゃないか」
(叱るのではありませんよ!)
「フイェー!」
両手で顔を覆って泣き始め、手足をバタバタさせてパニック状態になることがありました。はじめの頃は、為す術が無くて畳の上に転がして、右に左にゴロゴロ転がる滉燿くんを見ていました。『これが、お母さんの話していたぐずりか』と少々あきれましたが、何もしないのもバカらしいので、あれこれと思いついた解決方法を試してみました。
最初に見つけた方法が、『コチョグリ攻撃』でした。ゴロゴロ転がる滉燿くんを捕まえて、脇腹をコチョコチョコチョとこちょぐるのです。一度で効き目がないときは何度か繰り返します。そすると滉燿くんが、くすぐったくなって笑い出してきました。
「参ったか?」
滉燿くんは指でOKを作って降参の合図です。一回では収まらない時は、何度か繰り返します。大体これでおとなしくなることが多かったです。でも、家ではなかなかそうでは無くお母さんを手こずらせていました。
次に見つけた対策方法は、
『写真とるよ』
です。これも偶然発見しました。ウオーウオーと泣きわめきながらグズリが始まります。
「そうねー。それじゃ、たまには泣いている顔の写真も撮っておこうね」
滉燿の泣き顔を見ながらカメラを持ってきて構えました。
「エヘヘヘヘッ。」
泣きわめていた滉燿くんは、笑いだしながら、指でピースサインを作るではありませんか!唖然!
あんなに激しく『イヤだ』を表現していると思っていたグズリが、写真を撮ってもらえると思った瞬間に無くなる程度のものだったとは・・・。本当にあきれました。
ただし、このグズリは、私やお母さんなど『身内』と呼べる親しい人の前だけ、他の人の前では、滉燿くんは極めて愛想の良い子でした(^▽^)。
滉燿くんのぐずりをやっと収め、不機嫌なのをなだめながら、バギーに乗せて職員室などに連れて行きます。
「滉燿くーん」
先生たちから、声をかけてもらうとニコニコと手を振ります。手話で得意の「こんにちは」をやります。
「滉燿くんは、今日もご機嫌ね」
(断じて違う!)こう言うのを外面が良い人というのでしょうか?
天気が悪い日などに、昼休みの間、ビデオを見ることがあります。学級に備え付けてあるビデオテープの「ニコニコぷん」などを何度も見て、滉燿くんが飽きてしまった時期がありました。ビデオをつけてやっても、
「こんなビデオ見たくない!」
例のウオーウオーが始まります。ですが、
「先生、ビデオ見せて」
そんなタイミングで、友達が、ガヤガヤやってくると、とたんに黙って、一緒にニコニコとおとなしくビデオを見えます。迎えに来たお母さんと私の苦笑混じりの『滉燿くんの外面の良さ』についての意見交換があります。
タカクン2022 (@astrokuntaka) / X
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