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立ち上がれ滉燿くん ! ~明日を信じた5年間~ 7(3)  手話を使い始めました   夏休みの勤務後の訓練はダメ!?    


勉強の中で、「単語」「文章」表現の方法として手話を使い始めました。「先生は夏休みがあっていいねー」と言われることがありました。でも、お休みではありませんよ!
                    
4年生1学期(2006年 H18年)


前編 立ち上がれ滉燿くん ! ~明日を信じた5年間~ 7(2)  圧巻!神レベルの中野くんの訓練!


43    一歩ずつ前進しよう

 中野君が来てくれた後、彼が教えてくれた訓練項目を加えて日々を送っていました。1学期も、後1ヶ月くらいで終了です。頑張らねばなりません。
 幸い、滉燿くんは、少しずつ少しずつと進歩を見せていました。
 歩行器に乗って歩く練習をする時には、靴を履かせてから乗ります。靴を履かせた時、ついでに、気をつけの姿勢を取らせています。以前は、かなりお尻が出ている悪い姿勢でしたが、今は少しお尻が出て膝が曲がっているなという程度で、しゃっきりと立つようになってきました。腰を支えるのも軽い力ですむんでいます。
 それに、滉燿くんの身体を抱きかかえると何だか筋骨たくましく(?)なった感触です。これは同じ事をお母さんも感じていました。
「裸足歩行訓練の効果かな?」
 お母さんが迎えに来た時に滉燿くんを手すりの所へ連れて行きました。
「ちょっと良いもの見せます」
 滉燿くんに気をつけの姿勢をとらせ、倒れないように手すりをもたせました。滉燿くんから離れます。そのまま、滉燿くんは手すりを両手で持ちながら、自分で真っ直ぐに立っていました。
 これを見たお母さんはビックリ!目を丸くしていました。考えてみると、2年前は立たせようにも、滉燿くんの身体を抱えてもグニャグニャで、壊れた操り人形だったようなことを考えると夢のような進歩です。
 ゴールは遙か彼方だけど『一歩一歩近づけばいい、一歩歩けば、一歩近づくさ』そう考えていくことにしました。迷ったり悩んだりしても何の役にも立たないのです。ようやく気持ちを切り替えることができていました。


44  学習面の前進

 学習面でも滉燿くんの進歩がありました。動物のはめ絵パズルのピースを思いきって、一度に全部のピース(6~8ピース)を外してやらせてみました。滉燿くんは、ほとんど迷わずに正しい場所にピースをはめ込んでいったのです。『ブロック落とし』に続いて、きちんと形を理解していることが分かりました。
 数の面も進歩がありました。おはじき10個を机の上に置きます。滉燿くんに1~10までの数字カードから一つを選んで見せます。滉燿くんは、指先でおはじきを一個ずつ動かして、カードの数と同じ数のおはじきを数字カードの下に集めることが出来るようになりました。例えば、4のカードを示されると10個あるおはじきの中から、一個ずつ動かして合計4個を取り出してくるわけです。

 写真カード(絵カード)を使っての勉強も進歩しました。
「でんわはどれですか?」
3枚の写真カードを並べて尋ねていましたが、もう少し進めて『でんわ』と書いた単語カードを示して尋ねました。
「滉燿くん、これはどれかな?」

 うまく取れると、
「そう、でんわだね」
   指文字で『で・ん・わ』とやって単語として指文字を使う場面も入れるようにしました。
 滉燿くんは手話が大好きで、指文字も五十音をほぼ覚えていましたが、そこから一歩進めて、言葉・単語としての使い方を練習していきました。
 うまくゆき始めると、「お・く・む・ら・こ・う・よ・う」を指文字で教えました。
 これに「ボクの名前は」という手話と組み合わせて、「ボクの名前は、お・く・む・ら・こ・う・よ・う です」の自己紹介の文を教えました。
 さらに、手話で「あなたの名前は何ですか?」と私が尋ね、滉燿くんが「ボクの名前は、お・く・む・ら・こ・う・よ・う です」と答える簡単な手話の会話を練習しました。
 出来るようになったところで、さっそくお披露目です。
 職員室に行って、先生達の前で私が手話で尋ねます。
「あなたの名前は何ですか?」
「ボクの名前は、お・く・む・ら・こ・う・よ・う です」
 滉燿くんが手話で答えるます。
「すっごーい」
 先生達はビックリ!!
「あなたの名前は何ですか?」
 見ていた先生が手話を使わず言葉で尋ねても、滉燿くんは言っていることを理解して、手話で答えてくれました。さあ、これからどれくらい手話が上手になっていくのでしょうか。2学期が楽しみな夏休み入りとなりました。


45  勤務終了後の訓練はダメ!?

 夏休みの間、これまでしていたように勤務時間終了後、滉燿くんの家を訪ねて10分から15分の訓練をするつもりでした。
 ところが、この計画を聞いた校長先生から「待った」がかかりました。
「そんな話は聞いたこと無いね」
 校長先生が言います。
「いや、以前報告したハズです」
 私も主張します。二人の意見は平行線です。水掛け論です。
「あなたが、滉燿くんの家に行くのではなく、勤務時間中に学校に来てもらって、訓練をしなさい」
 校長先生は指示しました。お母さんが滉燿くんを連れてくるのは簡単ではありませんが、仕方ありません。お母さんに頼んでみました。
「これこれしかじかで、学校に連れてきてくれませんか?」
「こちらの都合の良い時間帯にしてもらえたら、学校に連れてくることができます」
 お母さんは快く返事をしてくれました。前と違って滉燿くんの身体の改善ぶりは明らかになっていたので、お母さんも手数をかけてまで、学校に連れてこようという気になったのかも知れません。 
 それで、妹の保育所への送り迎えや買い物の時間を除いて、午前10時半か、午後3時頃を訓練の時間としました。日にちはカレンダーを見ながら相談して、11日間程取ることができました。
 やってみると、夏休みに学校でする訓練はノンビリして良いものでした。次の予定時間に追われていないので、じっくり出来ました。昨年度までのように、10分ほどの短い訓練時間で終わらせるつもりでしたが、気づくと40分間くらいやっていることが良くありました。
 身体の部位の力を抜く訓練は、うまくいっていました。しかし、立位姿勢をとらせて見ると、膝が曲がって、お尻が出てしまい、真っ直ぐの姿勢を保てません。ちょっと気にはなりましたが『体が固くなるのを防ぐのが目的の夏休み訓練だからまあ良いか』軽く考えることにしましたが、この謎は2学期の始業式の日に解くことが出来ました。


続編 立ち上がれ滉燿くん ! ~明日を信じた5年間~ 8(1) 4年生2学期スタート!でも、身体が固い!? 今年も爆走バギー3


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