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食品開発におけるAI活用について

近年、食品業界では最新技術の導入が進み、特にAI(人工知能)やデジタル技術の活用が注目されています。これらの技術革新は、食品開発のプロセスを大きく変革し、効率化と新たな価値創出をもたらしています。
今回は最新の知見を交えながら、食品開発におけるAIとデジタル技術の活用事例とその効果についてのお話です。


1. AIによる食品開発の効率化

食品開発の現場では、従来、試行錯誤を重ねることで新商品のレシピが作られてきました。しかし、AIの導入により、このプロセスが大幅に効率化されています。
例えば、Mondelez International(モンデリーズ・インターナショナル)は、AIを活用して新商品の開発期間を従来の4~5倍速くすることに成功しています。  

AIは、風味、香り、見た目などの特性を指定すると、コストや環境への影響、栄養価なども考慮したレシピを提案します。これにより、試作品の数を減らし、開発コストの削減と市場投入までの時間短縮が実現しています。

また味作り(処方設計)の部分だけでなく、原材料名表示や栄養成分表示の作成、他社特許抵触リスクの確認なども、AIにサポートしてもらう企業が増えています。


2. 味覚のデジタル化とAIの活用

味覚という主観的な要素をデジタル化し、客観的なデータとして扱う試みも進んでいます。

NTTデータは、味覚を数値化する技術を開発し、AIと組み合わせることで新商品の開発や既存商品の改良に役立てています。  
この技術により、経験や勘に頼らず、科学的なアプローチで味の設計が可能となり、商品の品質向上と開発期間の短縮が期待されています。

ただし、そもそも人間の味覚受容体がすべて解明されてはいないので、味覚需要の研究とともにまだまだ発展途上の技術かと思います。


3. AIによる需給管理と供給の最適化

生産から供給までのプロセスにおいても、AIは重要な役割を果たしています。

日清製粉ウェルナは、AIを活用した「冷凍食品の需給管理自動化システム」を開発し、2024年10月から運用を開始しました。  
このシステムは、過去の出荷実績や受注データを基に需要を予測し、生産計画や在庫転送計画を自動で策定します。これにより、計画策定にかかる時間が大幅に短縮され、安定した製品供給と業務効率の向上が実現しています。

なおこのような技術は、生産工場におけるDXを進めることにより、まずは工場・需給のデータを繋ぐところから始める必要があるため、大規模な予算が必要になる場合が多いです。
そのため、まずは大手企業から導入される傾向にあります。


4. デジタル技術とパーソナライズド・ニュートリション

消費者一人ひとりの健康状態や嗜好に合わせた食品提案、いわゆるパーソナライズド・ニュートリションも、デジタル技術の進歩により現実味を帯びています。

サムスン電子は、冷蔵庫内の食材情報とユーザーの健康データを連携させ、最適なレシピを提案するシステムを開発しています。  
これにより、個々の健康状態に合わせた食事提案が可能となり、健康維持や生活習慣病の予防に寄与しています。

個人的には、毎日夕飯のメニューを考えるのがストレスなので、レシピ提案までしてくれるのは嬉しいですね。


5. フードテックの最新動向と市場展望

フードテック市場は急速に拡大しており、2025年までに世界で700兆円規模に達するとの予測もあります。  この成長の背景には、AIやIoTなどの先端技術の導入があり、食品の生産、加工、流通、消費の各段階で革新が進んでいます。
特に、AIを活用した需要予測や在庫管理、パーソナライズド・ニュートリションの分野での技術進歩が、市場の拡大を後押ししています。

「フードテック」と言うとかなり幅広い技術を指しますが、その中身はさまざま。

自社の開発・生産・需給プロセスの内容や規模、どのくらい予算をかけられるかで、選択する内容が大きく異なってきます。

またAIやデータサイエンスの技術・知見は日進月歩なので、常に最新の情報に触れておく必要があります。


6. まとめ

AIやデジタル技術の導入は、食品開発の効率化、品質向上、供給の最適化、そして個々の消費者に合わせた食品提案など、多岐にわたるメリットをもたらしています。
これらの技術革新は、食品業界に新たな価値を提供し、今後の市場拡大とともにさらなる発展が期待されます。

食品開発者は、これらの最新技術を積極的に取り入れ、革新的な商品開発とサービス提供を目指すことが求められています。
また、開発だけでなく原料から製品となってお客様の手に届くまでのプロセス全体を把握し、その中で「開発部門は何ができるか」を考える必要があります。


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